朽ちた建物
惑星ラナ・バラタには横長の大陸が縦に三つ並んでいて、上空から見れば巨大な「E」の形をしている。
そしてレオ達が暮らしているサーラ王国は中央の大陸で東の端に位置している。更にサーラ王国の貴族であるラウマが治めている領地は、隣国の領土と接触しているサーラ王国の西の端にある土地なのだが、巨大な山脈が隣国とラウマの領地を隔てているのだった。
そんな山脈でレオは自身が探し求めていたものを見つけようとしていた。
「やっと見つけた……」
新しい家族や周囲の人達を守るため、力を手に入れることを決めてから既に二年。前世と同じ十五歳となったレオは、山の中にある光景を見ながら思わず一人呟いた。
レオの視線の先にあったのは、大規模な朽ちた建物であった。その建物は外壁のいたる所がひび割れ植物に被われていて分り辛いが、「現在」のラナ・バラタの技術力では建設することが不可能な鉄とコンクリートで造られていた。
今まで誰にも知られることなく山の中にあった建物、それは前の文明の人類がデスと戦うために世界各地に建造した前線基地だった。
レオがこの前線基地が山の中にあることに気付き、探してみようと思った切っ掛けは、今から数年前にラウマにサーラ王国の地図を見せてもらったことだ。見せてもらった地図は、前世で世界地図を見たことがある彼からすればとても正確とは言えなかったが、それでも地図が示す地形にはいくつか身に覚えがあるところがあり、そこからレオはここに前世で何度か世話になった前線基地があることを思い出したのだ。
「うろ覚えの記憶だけが頼りで、しかもこの数百年で地形も少し変わっていて、結局見つける二年もかかったな……」
見た目は完全に朽ちているが、それでも前世で見た基地の原型がとどまっているのを目にしてレオは感慨深い表情となって呟く。
二年前から続けていた基地の探索だが、一回の探索で数日間も山の中に籠ることになり、深い事情を聞かずにレオの行動を認めてくれたラウマとシィラも、彼が探索に行く度に心配そうな顔をしていた。その事から後数回探索をして、それでも見つからなかったら諦めようと思っていた時に、こうして基地を発見できたのだから自分は幸運だとレオは思った。
「さあ、それじゃあ行きますか」
気持ちを切り替えたレオは朽ちた前線基地へと向かって歩き出す。彼の目的は基地の中にあると思われる、前の文明がその技術力の粋を集めて開発をした、レオに彼が望む「力」を与えてくれるもの。
人を超人へと進化させ、死を討ち払う巨人を創り出す極小の機会の集合体。
即ちルリイロカネである。
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