復活の理由
「おっ? 流石に戦者のことは知っていたか」
「はい……。でも、あれは……」
ラウマに答えながらもレオの視線は森の中心にある戦者に向けられていた。そしてその戦者は彼がよく知るものであった。
(あれは……俺の戦者だ……!)
レオの視線の先にある戦者は、どれだけ長い期間この地に放置されていたのか分からないが、全身が風化してひび割れていて、その上いたる所に苔などの植物が生えているのが見える。しかしそれでも彼はあれが、自分が長年使って共にデスと戦ってきた「戦友」と呼べる戦者で間違いないと一目で確信した。
(でも何で俺の戦者があんなにボロボロになっているんだ? あんなの十年や二十年放置されたってレベルじゃないぞ? それにあの下にあるのって……)
「この森は守護者の森と言って、地元の人間だけが知る場所なんだ」
レオが自分の戦者の変わり様に驚き、その下にあるものを見ようとした時、ラウマがこの場所について説明を始める。
「守護者の森、ですか?」
「ああ、伝説によればあの戦者は数百年前に空からこの地に降ってきたらしい。それ以来、この地に生きる俺達はあの戦者をこの地の守護者として祀ってきたんだ」
「数百年前!? 空から降ってきた!?」
「ふふっ。まあ、普通は信じられないわね」
ラウマの説明にレオは思わず叫び、そんな彼の様子が可笑しかったのかシィラが笑うが、当の本人はそれどころではなかった。
(数百年前に空から降ってきたって何だよソレ? 俺は確かに先輩達と一緒に宇宙でデスと戦っていたけど、そこからラナ・バラタに帰ってきたってことか? でも数百年前って一体………っ!?)
そこまで考えた時、レオの脳裏にある記憶が浮かび上がった。
それはほんの数秒間の記憶。デスとの最後の戦いで、デスの本体に
(あれ? 俺、デスとの戦いで死んだ? でもこうして生きて……そうか! 戦師が死んだ時の戦者の緊急システム! ソキウス先輩が輪廻転生システムとか呼んでいたあのシステム。
……つまりこういうことか? 俺はデスとの戦いで一度死んで、その後俺の戦者はここに落ちて、それから輪廻転生システムを発動させて俺を蘇生させた。でも何かのトラブルがあって蘇生に数百年の期間がかかった上に、十歳くらいの体になったってこと?
…………嘘だろ?)
自分で立てた考えの出鱈目さに眩暈を感じそうなレオだったが、それ以上に気になる点があった。レオは自分の戦者の下にあるものに目を向ける。
(あれは俺のとは違う戦者の残骸……)
レオの戦者の下や周りには別の戦者の残骸が散らばっていて、彼にはそれらがまるでレオの戦者を守っているように見えた。
(そして多分、あの残骸はソキウス先輩とユンファ先輩の戦者のもの……)
戦者とは大量のナノマシン、ルリイロカネによって機体を構成されている「生きた兵器」と呼んでも過言ではない存在である。更に戦者は戦師と共に戦うことにより、その戦闘の経験と戦師の生体情報に応じた成長を行ない、同じ外見をした戦者は存在しない。
そしてレオの戦者の周囲にある戦者の残骸……それらはソキウスとユンファが乗っていた戦者のものであった。戦者の残骸もレオの戦者と同じく風化している上に土に埋もれ植物に被われていたが、それでも長い間二人の戦者を見て、共に戦ってきたレオは間違いないと直感した。
(まさか……。ソキウス先輩とユンファ先輩は……)
一度死んで蘇った自分。
宇宙からラナ・バラタへの帰還。
そして自分の戦者の周りにある二人の戦者の残骸。
この三つの点が結び付いた時、レオの中で一つの結論が浮かび上がった。
つまりソキウスとユンファの二人は、自分達の命を懸けてレオを宇宙からこのラナ・バラタへ帰還させたということ。
(二人は、俺を命懸けでラナ・バラタで還してくれた……。しかも自分達の身を盾にして大気圏落下の衝撃から守ってくれてまで……。何でそんな事を? 決まっている。死んだ俺を蘇生させるためだ)
レオは自分のうちに沸き上がってきた疑問を自分で即答する。戦者の戦師を蘇生させるシステムが安全な環境下でないと発動しないことを知っている彼は、そこまで考えたところでソキウスとユンファのことを思い出し、気づかぬ内に涙を流していた。
「レオ君?」
「貴方、泣いているの?」
それまで一人で考え事をしていたレオを見守っていたラウマとシィラは、突然泣き出した彼に声をかける。だがレオは二人の声に答えず、自分を命懸けでこのラナ・バラタの地へ還して救ってくれたソキウスとユンファに、心の中で礼を言うのであった。
(ソキウス先輩。ユンファ先輩。本当に、ありがとうございます……!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます