特攻
デスとの戦いが始まってから数時間後。惑星ラナ・バラタ周辺の宇宙では嵐の様に激しい戦闘が繰り広げられていた。
合計で五回の
デスとの戦いは時間が経つにつれて激しさを増す一方で、最初は陣形を保ちながら戦っていた戦者の軍団も今ではそれぞれ単独でデスが作り出す精神体の群れと戦っており、それはレオも例外ではなかった。
「全く、キリがないな!」
戦者の操縦室の中でレオは自らが放った
五十を超える精神体を滅ぼしているが精神体の数は減るどころか増えていくばかりで、ソキウスとユンファの二人ともこの乱戦ではぐれてしまった。デスの本体を目の前にしても、この精神体の群れに阻まれている現状にレオは焦りを感じていた。
「早くデスを破壊しないと……っ!?」
そこまで言ったところでレオは自分が十数体の精神体に囲まれている事に気づき、十数体の精神体は一斉に彼が乗る戦者に襲いかかる。
「ヤバッ……! どこか逃げ場は……あった!」
精神体に囲まれたレオは周囲を見回して頭上には精神体の姿がないことを確認すると、すぐさま意識を集中して行動を実行した。
「
レオがそう叫んだ瞬間、彼が乗る戦者は全身に雷光を纏わせて高速で上空にと移動して十数体の精神体の攻撃を回避した。
本来ならば外に、敵に向けて放つルリイロカネによって作り出された電気に似たエネルギーを、戦者の機体に纏わせることによって瞬間的な高速移動を可能とする技。
上空に退避したレオの戦者はその両手に光の弓矢を作り出して、こちらに迫ってくる十数体の精神体に狙いを定める。
「
レオの戦者が作り出した光の弓は一度弦を引いて離す度に十本に分裂する光の矢を放ち、雨の如く降り注ぐ光の矢はこちらに向かってくる十数体の精神体を貫き消滅させる。そして精神体が完全に消滅した次の瞬間、レオの目にデスが纏う紫色の炎の光が映った。
「デス……! ………」
デスの姿を確認したレオは一度目を閉じて呼吸を整えながら自分の内側へ意識を集中させる。戦師になった時に教えられた特別な呼吸法によって生命エネルギーを増やし、それをルリイロカネの機能で電気に似たエネルギーに変換、更に戦者の機体を構成するルリイロカネで増幅。自らの戦者に充分なエネルギーが行き渡ってのを感じたレオは前方に見えるデスを睨みつけて叫ぶ。
「
レオの叫びに応えて彼の乗る戦者が再び雷光を纏って跳躍をする。今度の跳躍は途中で八回、軌道を変更して行く手を阻もうとする精神体の群れを回避して、レオの乗る戦者はデスに向かっていく。
(もう影の相手なんかしていられない! 俺だけでもデスの本体を叩いてみせる!)
しかしレオの接近に気づいたのか、デスは彼の前方に百体近い人の影の姿をした精神体を作り出して壁にして、それを見たレオが舌打ちをする。
「っ! 邪魔だ!
レオの戦者は右手に長大な突撃槍を作り出すと先程の
「邪魔だって言ってるだろ!
新たに現れた精神体の壁を見てレオが叫ぶと、彼が乗る戦者は手に持つ光の突撃槍を両刃の戦斧に変えて横薙ぎに振るう。光の戦斧に斬られた精神体は切り口から発生した爆発に飲まれて消滅するが、残った精神体はレオが乗る戦者を飲み込まんと周囲を取り囲む。
「っ!? しまった!」
前に取り囲まれた時は上空に逃げ道があったのだが、今回は前後左右だけでなく上と下からも人の影の姿をした精神体が迫ってきており、完全に逃げ道を塞がれたレオは死を覚悟した。しかし次の瞬間……。
『
『
光り輝く十字槍と
「ソキウス先輩! ユンファ先輩!」
『レオ! やっと見つけたわよ! 一人で無茶をして!』
『まあ、そう怒るなよ。無事だったからいいじゃねぇか。それにしてもやるな、レオ。やっぱりお前の才能はピカイチだな』
レオを咎めようとするユンファを宥めるソキウスが先程までのレオの奮闘を褒める。レオの戦師としての才能はソキウスが見てきた戦師達と比べても頭一つ抜きん出ており、実際彼はソキウスとユンファだけでなくそれ以外の戦師達の
その戦師としての才能のお陰でレオが今まで生きていられた事にソキウスは心から喜び安堵するのだった。
『全くソキウスは……。それで? レオはデスの本体を叩きに行くつもりだったの?』
「え? あっ、はい」
ユンファに自分の考えを当てられたレオが戸惑いながら答えると、ソキウスがため息を吐いて呟く。
『まっ、それはそうだわな……。見ろよ、他の奴らもレオと同じ考えのようだぜ』
ソキウスの視線の先では、多くの戦者が人の影の姿をした精神体を無視してデスの本体へと向かっていた。
『それは仕方がないわ。もう最初に集まった戦者の半分が落とされたのだから、もうここで勝負をしかけるしかないのよ』
「は、半分!? あれだけいた戦者がもう半分も落とされたんですか?」
これまで精神体との戦いに集中しすぎていて、味方が半分も落とされていた事に気づいていなかったレオが驚きの声を上げると、ソキウスが彼に話しかける。
『レオ。驚くのも悲しむのも後だ。俺達もデスの本体を叩くぞ!』
「は、はい!」
『分かってるわよ!』
ソキウスの言葉にレオとユンファが頷くと、三人の乗る戦者は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます