雷光破
『あの彗星が本当のデス……。私達が今まで戦ってきたあの影達は、あれが作り出した操り人形だったわけね』
『チッ! ムカつく星だぜ!』
レオと同じく遠方にある紫色の炎を纏った彗星を見て、ユンファが呟きソキウスが苛立ちを隠すことなく吐き捨てるように言う。ソキウスの言葉はこの場にいる全ての戦師達が感じている事で、戦者の操縦室でデスの姿を見ている戦師達は、デスに殺された自分の家族や友人といった親しい者達の事を思い出してある者は悲しみ、ある者は怒りに燃えていた。
そしてレオは悲しむか怒りに燃えるかと言えば怒りに燃える側の人間であった。
「………!」
自分の両親がデスに殺された時の事を思い出したレオは、知らないうちに拳を強く握りしめていた。そんな彼の様子に気づいたソキウスは、自分を落ち着かせてからレオに話しかける。
『レオ、俺が言える事じゃないけど少し落ち着け。動くのはもう少し待て』
『そうね。攻撃をしかけるタイミングはもう少し先よ』
憎い敵を前に今にも前に飛び出しかねなかったレオは、ソキウスとユンファに言われてデスを映す小画面の横に、自分を含めた戦師の集団をまとめる隊長からの指示書が浮かび上がっていたことに気づく。その指示書にはデスはこちらに向かってきており、ある程度近づいてきた所で総攻撃をしかけるので、それまで総員その場で待機せよと記されていた。
隊長からの指示を受けたレオを初めとする戦師達は全員、怒りと緊張が混じった目で拡大画面に映るデスを見つめた。そして指示が出てから数分後、景色を拡大せずともデスの紫色の輝きが僅かに見え始めた時、隊長から総攻撃を開始せよという指示が送られてきた。
『いくぜ! ユンファ! レオ!』
『大声で叫ばなくても分かっているわよ』
「はい」
ソキウスの言葉にユンファとレオが返事を返し、それと同時に彼らが乗っている戦者を初めとする、この宇宙に集まった全ての戦者の両手に球状の光が生まれた。これらの球状の光はその輝きを増していくと、やがて粘土のように形を変えて、それぞれ異なる形状の光の武器となった。
この光の武器こそがラナ・バラタの人類が戦者を作り出した理由。
戦師の体内にあるナノマシン「ルリイロカネ」によって戦師の生命エネルギーを電気に似たエネルギーに変換して、それを戦者の機体を構築しているルリイロカネで増幅、制御して放つ技。これまでデスと呼んできた人の影の姿をした精神体、デスが作り出す端末を滅ぼせる唯一の攻撃方法である。
そして宇宙に集まった集まった全ての戦者は、遥か彼方からこちらへ向かってくるデスに照準を合わせると、自分達が作った光の武器を一斉に放った。
「
『
『
戦者の軍団が放ったほんの数秒で遥か彼方にいるデスに命中して、その直後に宇宙空間を震動させるような光の大爆発を生まれた。
『やったか!?』
『そんなわけないでしょう』
光の大爆発の大きさを見て何かを期待するような笑みを浮かべるソキウスの言葉をユンファが冷静に否定する。そして彼女の言葉はすぐに証明された。
光の大爆発が治まると遠方からデスが纏う紫色の炎が見えて、それを確認したソキウスを笑みを消してうんざりとした口調で呟く。
『あ~、そうだよなぁ……。そう簡単にはいかないよなぁ……』
『分かっていたら無駄口を叩いてないで次を射つわよ。レオもいいわね?』
「はい」
ソキウスを短く叱りつけてから声をかけてくるユンファに返事をしたレオは、二撃目の
しかしこれはまだ、ラナ・バラタの人類とデスとの最後の戦い、その始まりを告げる合図にすぎなかった。
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