第二話 普帝国
普の王は、王に代わる新たな称号として皇帝という号を編み出し、自らこれを称した。そして、かつて中原に存在した王国を全て解体し、全国を
しかし、その統治は、厳しい法と刑罰による苛烈極まるものであり、それが庶民の間に徐々に
皇帝曄が崩御し、二世皇帝が即位すると、この二世皇帝は民に重税をかけては
二世皇帝の治世となって一年が過ぎた頃、とある漁村で事件が起こった。税の取り立てに来た役人を、漁民が殺害してしまったのである。後に引けなくなった漁民たちは、そのまま仲間を集めて役所を襲った。これが、今起こっている大反乱のきっかけであった。
反乱は、
これを皮切りに、普の圧政の下に虐げられていた人々が、その怒りの矛先を体制に向けた始めた。怒れる民によって、各地で県令が殺され、郡守が
今しがた田管が戦ったのは、魯王に命じられて西方へ進軍し、普の国都である
田管は、西へ向かい、
「まだか……
田管は、一人歯噛みしていた。この頃の普軍の主力は、王敖という将軍が率いる三十五万の軍であった。この軍は北方の騎馬民を討伐して長城を築き、その北地の守備に当たっている軍である。地方軍が当てにならない今、王敖軍を呼び戻して反乱軍の鎮討に当たらせることを朝廷側に判断してもらうしか望みはない。
田管は、反乱軍と戦いながら、じりじりと西方に後退していった。なるべく開けた土地を避け、守るのに易い険阻や山間の細い道や泥濘のある土地などを選んで迎え撃ち、全面対決を徹底的に避けつつ時間稼ぎを行った。道中には
そうして遅滞戦術を続けていた田管であったが、一向に援軍が来る気配はない。王敖の三十五万の軍も、北から一歩も動かない。というのも、この時、反乱の情報は、宮廷に全く届いていなかったのだ。いや、正確には宮廷の内部にも反乱を知り対処の準備を行う者もいたのだが、肝心の二世皇帝の耳に入る前に、情報が握り潰されてしまっていたのである。
この時の普の
李建は内部の権力固めに腐心する余り現状維持を望み、反乱の情報を握りつぶし続けた。現状を憂慮し、皇帝に注進する者もいたが、それらは例外なく、この悪臣の毒牙にかかり刑死した。また、有力な将軍たちも、北方にいる王敖は別としても、その多くが粛清に巻き込まれてしまっており、仮に討伐軍を起こそうとしても、すぐにとはいかない状況でもある。王敖のいる北地は反乱こそ起こっていないが、他地域の反乱の情報もまた、すぐには北地に入ってこなかった。尤も、情報が入ったとて、中央が指示を出さなければ動けないのであるが。
そうして、とうとう田管軍は、
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