第81話 俺は将来ろくな大人になれない

「抜け出しちゃった·····」


ユウキは早朝から、一人で砂浜に座っていた。


「漁師になったら毎日、こんな生活か」


そう考えると大変な職業である。

働いてくれてる人には、頭が上がらない。


「逃走癖着いてるな·····、将来困るぞこれ」


自分が困って、頭がパンクするとすぐに逃げてしまう。

これで2回目。

こんな癖はさっさと直した方が良い。


「·····はぁ、今日という日が来なければ良かったのにな」


そんな事を言っても、明日は必ず来る。

ユウキの憂鬱の正体はこれだ。


「また俺は選択をしなければならないのか·····」


先約の凛を取るか、色々と助けてくれた小倉を取るか。


「誰が答えをくれよ」


この答えは神様ですら分からない。


「一体、どこに行ったのかしら、彼は」


朝目覚めると、隣に居たはずのユウキが居ない。


「もう、本当に嵐みたいね」


行動範囲もすごいし、何よりよく動く。

元気いっぱいかと思えば、すぐに溜め込んで1人で落ち込んでる。

本当に嵐のような男だ。


「でも私は──」


信じて、待ち合わせの場所にいるだけだ。


「はーはっは、御影君よ、君は悩んでいるね?」

「誰だ? お前は」


変態チックなコスチュームを身にまとった·····。


「恋愛マスターだ」


恋愛マスターが現れた。


「多分だけど、お前俺の知り合いだろ」

「わ、私は恋愛で悩んでいる人の為に現れるのだ」

「へーい」


恐らく凌太だが、なりきっているので、水を差すのは申し訳ない。


「で、何に悩んでいるんだ?」


急に恋愛マスターじゃなくなるやん。

ただの凌太やん。


「2人に今日誘われててさ、どっちも傷つけないためにはどうすればいいと思う?」

「俺から言えることはな、自由に選んでいいんだぞ」

「·····」


多分だが、答えになってないぞ。


「·····どゆこと?」

「お前が好きな子を選べばいいんだよ」

「好きな子をか·····」


俺は誰が好きなんだ?

もう一度目をつぶって考えてみる。


『俺が困っていた時に、いつも側にいてくれたのは誰だ?』


大変な時、辛かった時に寄り添ってくれたのは誰だ。

心に大きく映っているのは誰だ。


「凌太·····、答えが出た」

「そうか、お前には色々と聞きたいことがあるから、俺のとこ来いよ」

「え? ちょちょちょ」


俺は半ば強引に連れていかれた。

帰るべき場所があるのに。


「その子の事はいつから好きなんだ?」

「言えん」

「誰?」

「絶対に言わん」


そんなもん言えるわけなかろう。

誰が相手でも嫌だわ。


「·····勝機は?」

「まぁ、100ですかね」


こうでも言っておかないと、自分自身で不安になってしまう。

自分だけは、常に自信満々でいなければならないのだ。


「結局か·····」


想いを決めて、その時を待つ。



























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