第40話 男、奇跡の復活

『あれ? ここはどこだ·····?』


俺は今·····、三途の川を渡ろうかという所まで来ていた。


『まずい、止まれねぇ』


自分の意思とは反して進んでしまう。

このままだと引き込まれてしまう。


『俺のことを起こしてくれー!』


現世にいる2人に強く願った。


「もう死んじゃったかな·····」

「そうね、悲しいけどもうダメね」


もう諦められていた。


「病院はやめときましょ」

「なんで?」

「私が犯人だから」


このまま死んだしまえば、小倉が殺したことになる。

それだけは避けたかった。


「んー、どうする?」

「待つしかないわ」

「そうだね」

『おいおい!』


ユウキの声は2人まで届かない。

こうなったら何とか自力で起きるしかない。


『俺はまだやり残したことがあるんだよ·····」


それは男の野望。

果たすまでは絶対に死ねない。


『チェリーだから、いつかの初体験まで生きるんだ!』


今までのチェリーで死んだ男たちの、希望と願いを背負って俺は生きる。

何時になるかは分からない、だから一生懸命死ぬまで生きるんだ。


『やらなきゃ行けない時がある』


だから男は何度でも立ち上がる。


『死ぬときゃ、ベットだ』


その時が訪れるまで、男はダルマのように転んでも立ち上がる。

その男の名は──。


「御影ユウキ! この俺だー!」

「うわっ!」

「びっくりした·····」


男、奇跡の復活。


「三途の川も悪かねぇかもな」

「なんか悟り開いてるよ·····」

「気持ち悪い」


死を超える事によって、世界の真理を見た。

美しい自然の摂理も。


「てか、お前俺を殺してんじゃねぇよ!」

「だってあなたが、む、胸を·····」

「セクハラ大臣」

「事故だって!」


俺は包み隠さず全てを話した。

一応は許してもらえた。


「私、気絶してたの·····?」

「そうだぞ、俺が居なきゃお前が死んでたな」

「それに関してはそうだね」


よって俺は命の恩人だ。

いやぁー、誰も損してなくて幸せな世界だ。

俺も幸福だったし。


「それにしてもなかなかだったぞ」

「え、何が?」

「感触、それと大きさな」

「もっかい死んでちょうだい」

「ごめんごめんごめん」


彼女の大きく振りかぶった一撃の、重さは凄まじかった。

右の頬の骨が軋み、数メートルも飛ばされた。


「いっだぁぁぁ」

「天罰よ」

「そーだ、そーだ」

「行きましょ、小森さん」


今度は小森でさえも、冷たかった。

俺は今日で2度も死線をくぐった。

仮にもサイヤ人だったら、もう最強じゃね。


「おい! 待てー」


夏休みはまだ始まったばかりだ。



















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