ドキドキ花火大会編

第38話 煩悩が止まらないんだが

「夏休み! 始まったけど·····」


7月に入り、夏休みがスタートした。

が、ユウキのカレンダーに予定はまだ入っていない。


「暇過ぎてもう宿題終わっちゃったぜ」


やる事ないのでその分の時間を、宿題に当てた。

終わった後には虚しさだけが残った。


「もしもし? 凌太、今暇?」

「あー、ごめん今沖縄」

「おっけー」


凌太に電話をするも、沖縄。

羨ましいな全く。


「もしもし? 美月、今暇?」

「あー、ごめん今ハワイ」

「·····」


ハワイとか、沖縄を余裕で越してきてんじゃねぇか。

羨ましいな本当に。


「はぁ、他にLINEの友達は·····」


LINEの友達を見ると、小森、小倉の2人が居た。


「流石にだろ·····」


引っかかったらいいな位の、気持ちで電話をかけた。


「もしもし、小倉?」

「何? どうかしたの」

「プール行かない?」

「·····」


プツッ、電話を速攻で切られた。

電波が悪かったのだろう。

もう一度かけ直した。


「小倉?」

「どうかしてるわ! ぷ、プールって·····」

「何がだよ、暇だろ? 行くぞ」

「暇だけど·····」

「じゃあ決まりな、一時に駅前で」

「ちょ·····」


このまま続けたら厄介な事になりそうだったので、きった。

その後も電話はなり続けたが、無視。


「小森か? プール行こうぜ」

「うーん、2人?」

「違う、あと小倉」

「行く!」

「1時、駅で」


2人目も捕まえられた。

我ながらいい行動力だと思う。

だって女子2人だぜ? なかなか羨ましいだろ。


「あっちーな、今日は一段と」


蝉が至る所で鳴いている。

太陽がサンサンと肌を焦がす。


「水着ー、楽しみだな」


2人の水着楽しみだ。

もはやそれが目的まである。


「なんでも似合いそうだな」


ビキニ? スク水?

スク水はちょっと犯罪臭がするな·····。

そんなことを考えてるうちに、2人が到着した。


「おはよー、ユウキ」

「どうして電話に出なかったの!」

「き、気づかなかった·····」


2人の反応は両極端だった。

小森はご機嫌に、小倉は憤怒していた。


「気づかない訳無いでしょ! 貴方は全く·····」

「まぁまぁ、早くプール行こ」

「そ、そうだな」


俺たちの行くプールは、去年出来たばっかの、市民プールだ。

色々と設備が整っていて、人気がある。


「じゃあ後でな」

「覗かないでよ」

「覗けねぇよ、こんだけ人が居るとな!」

「人が居なきゃ除くんだ·····」


俺の溢れ出す煩悩が、留まることを知らない。

ダダ漏れている。


「ふぅ、人多いな」


一足先に着替えた俺は、2人を待っていた。

暑っつい。


「お、おぉー」

「な、何? ジロジロ見て」


先に着替えたのは小倉だ。

なかなかナイスバディーをしている。

大人の女性と並んでも、遜色はないくらいにはボンキュッボンだ。


「いや? その水着よく似合ってるぞ」

「なっ! せ、セクハラよ·····」


セクハラを訴える彼女に、普段のような元気はない。

彼女は、紫色のフリフリのビキニを身にまとっていた。

きっとこの紫は彼女の毒を表したのだろう。


「ちょっとー、2人ともイチャイチャしてないでよ」

「ほー、こっちもなかなかですね」


小森は小柄な体を活かした、赤色のワンピース柄の水着だ。

控えめな胸が強調され、こちらとしては悶絶寸前だ。


「なんか視線、エロくない?」

「そ、そうかー?」

「鼻の下伸びきってるし」


夏の気温のせいか俺の顔は真っ赤だ。

日焼けだ、そういうことにしておこう。


「へ、変な気は起こさないでよね」

「検討はする」


今日なら死んでもいい。

ユウキはそう思った。

















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