第37話 持つべきものは何とやらだ

「うぅ·····」


あれ? 俺は気を失っていたようだ。

体が重くて、起き上がるのも億劫だ。

それでも頑張って起き上がる。


「保健室か·····、ってなんでお前が!」

「やっと起きたのね、御影君」


そばに居たのは小倉だった。

反応を見るにずっといてくれたのだろう。


「どうして小倉が·····?」

「別に? たまたまよ」

「そんな事ないだろ」


たまたまなわけない。

何か訳がある筈だ。


「私は一応感謝してんのよ、だいぶ無理してくれたでしょ?」

「ま、まあな」

「あなたが倒れたのは、止められなかった私が原因でもあるし·····」


小倉は責任を感じていた。

薄々とユウキが無理をして動いていること、倒れることがわかっていた。

ユウキの空元気に押され、止められなかった。


「何? 気にしてくれてんの?」

「ほんの少しだけよ!」

「へー、そう」


少ししおらしい姿を見せられたら、からかいたくなるだろ。


「俺もごめんな、一位を取らせてやれなくて」

「まさかあんな姑息な手を使って、反則になるなんて思わなかったわ」


本来であれば2位だったが、失格で最下位になった。

学校側からすれば当然の処置だ。


「それで? 井口君は平気そうだった?」

「バッチシだったな」


凌太の容態は、軽い脳震盪と手首の軽い打撲だった。

明日には退院してるだろう。


「まぁなんだ、おかげで最高の目覚めだったぜ」


倒れて起きたら、可愛い子が枕元に居るんだぜ?

最高だろ。


「そ、そう、なら良かったわ」


照れたように言った。

時刻はもう4時半を過ぎた。


「それじゃあ行きましょ」

「どこに?」

「決まってるでしょ? 打ち上げよ」

「まじで? ようやく?」


念願である、クラスの集まりにようやく行ける。

今日の動きは合格だったらしい。

俺は大袈裟にガッツポーズを決めてやった。


「ついでにクラスLINEに誘うから、LINE交換」

「おぉ、感無量だぜ·····」


ずっと願い続けたら、叶うものである。

今日で2つも願いが叶った。


「ここまで長い道のりだった·····」

「え? 泣いてるの?」

「な、泣いてねぇよ」


強がってみせたが、ユウキの目にはきらりと光る涙が滲んでいた。

嬉し泣きである。


「ほら! 行くぞ」

「そうね、時間に遅れちゃうから」


その夜の集まりは、最高に楽しかった。

ユウキは今までの鬱憤を晴らすように騒いだ。


「お前ら! 夜はまだまだこれからだぜ!」


二次会まで楽しく騒いだ。

その後、補導されることはまだ誰も知らなかった·····。



















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