第31話 脳筋が頭を使ったらこうなる

「私たちは正々堂々戦うことを、ここに誓います」


各団長の長ったるい選手宣誓が終わり、ようやく体育祭が始まる。

この学校は赤、青、緑、紫の4色で別れている。

最低でも2位は取りたい所だ。


「よーし、絶対一位取るぞ!」


100m走を走るのは、美月。

彼女は運動部なので脚の速さには自信がある。


「頑張れよ」

「うん、頑張る!」


声をかける凌太を見て、複雑な気持ちになる。

こいつは今も恋してるんだよな。

今は何も出来ないがな。


「位置についてよーいドン!」


ピストルの音ではじまる徒競走。

美月は勢いよく地面を蹴って、走り出した。

スタートダッシュは成功だ、


「美月、上手く曲がれるかな·····」

「心配だな」


猪突猛進、猪のように直線は得意だが、曲がるのは苦手。

過去もコーナーでスピードを落とし、一位を逃している。


「美月! 曲がれー」


コーナーに差し掛かった時、美月は腕を思い切り回し始めた。

腕の遠心力を使って、曲がりきる考えだ。


「すっげぇけど·····」

「抜かされてるな」


若干のスピードダウンのせいで、外から抜かされていく。

だがまだ挽回のチャンスはある。


「「頑張れー!」」


俺たちの組、青組の全員から声援が飛ぶ。

白熱したレース。


「美月! 行けるぞ」


俺も全力で声を出す。

聞こえてるかは知らないが、一気にスピードが上がったように感じた。


(ユウキも、みんなが応援してくれてる)


美月にとっては、その事実だけで思い切り走れる。

私は1位をとる。

パンッ! ゴールテープを切り、ピストルの音が響く。


「誰だ·····?」


美月も最後の追い上げを見せ、僅差でのゴール。

最初にゴールテープを切ったのは誰だ?


「一位、青組の小川美月」


1位のアナウンスがされ、一位は美月。


「よっしゃー! ナイス」


学年の垣根を越え、全員が歓喜し合う。

まだ一種目だぞ、そう思ったが楽しいからいいか。

優勝でもしたらどうなっちまうんだろう。


「やったー、一位とれた!」

「おめでとう、よく考えたな腕を回すなんて」

「えへへ、頭使っちゃった」


基本脳筋の美月が頭を使ってくれて、俺は嬉しいよ。

成長したんだな·····。


「俺は嬉しいよ·····」


早速、青組は1位に躍り出た。

このまま行けたらいいのだが、次の大玉は緑組の奴らがぶっちぎりで一位とった。

本当に速かった。


「まぁ、まだ差は開いてないから行けるよ」


3つ目の種目、綱引き。

これは総当たりではなく、くじで引いたトーナメント戦だ。


「勝ってこいよ、みんな」


この種目は体格の良い奴が多い組が勝つ。

青組は、比較的に体が小さめなので遊ばれっぱなしだった。


「勝者、赤組!」


パツパツの体操着を来た筋肉たちが率いる、赤組が余裕の勝利を治めた。


「小森、頑張れよ」


次は障害物リレー。

体が小さい小森が出ることになっている。


「優勝目指そーぜ」





















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