第32話 これってノンフィクション?

よーいドンの合図で4つ目の種目、障害物リレーがスタートした。


「小森、頑張ってこいよ」

「任せてよ」


スタート前にこんな事を話した。

やけに自信満々だったな。


「青組のあいつ転んだぞ」

「派手にいったなー」

「え?」


青組のあいつって一人しか居なくね。

目を凝らすとやっぱりあいつだ。


「何転んでんだよ、小森の奴」


あーあ、ごぼう抜きされとるわ。

立ち上がって、服をパンパンと。


「おい! 服を払う前に走れよ!」


ようやく走り出したかって、おっそいな。

ノロノロしてんか。


「もうダメか·····」


なんでもそつなくこなすような、奴だと思っていた俺が馬鹿だった。

出来ないもんは出来ないよな。

結果は覆ることなく、最下位。

前回の俺のカッコつけ返してくれよ。


「さあーて、反省会のお時間だぞ」

「はぁはぁ」

「どこでそんな消耗した?」


歩きとほぼ変わらない走りを見せていた。

最後の方は体育祭とは思えぬほどに、学校中から歓声が上がっていた。


「で、でも私が一番歓声を貰ったわ」

「遅かったからだ! 少しでも期待したのにな·····」

「調子が悪かっただけよ、ほら次行くわよ」


次は学年種目、背中渡りリレーだ。

うちのクラスは凌太が背中を渡る。

理由は運動神経が良いから、普通に体格が良いので下がきつい。


「「一年一組、ファイファイファーイ!」」


独特が過ぎる掛け声で、クラスは団結。

ちなみに俺は入りが分からずに、困惑していた。


「女子ども1位で渡せよ」


女子から男子へと、タスキが繋がれる。

女子で決まると言っても過言ではない。


「いっきまーす、はい!」


独特な合図でスタート。

なんですか、掛け声はボケなきゃいけないんですか?


「女子の方が速くね·····?」

「鬼気迫ってるな」


女子は小森が上で、運動神経の悪さを下の奴らがカバーしている。

すごい殺伐としている。

着いてこれなくなった者を切り捨てている。

怖ーい。


「男子! はい」


全組ほぼ同時にタスキが繋がれた。

男子に全てがかけられた。


「よし行くぞ」


他の組よりも男女の入れ替えが早く、もうスタート出来た。

今のうちに差を広げておこう。


(なんか速くねぇか)


練習とは違う違和感。

それは凌太の背中を渡っていくスピードだ。

下の俺らが、凌太を追うのが精一杯だ。


「凌太! 焦んな」


俺の声は届かない。

そりゃそうだ、何百人もの歓声にかき消されやがる。

頼む、自分で気づいてくれ。

そう思った頃には遅かった。


「·····? どうした!」


いきなり鈍い音と共にリレーが止まった。

先生たちの叫ぶ声が聞こえる。


「これって、冗談だよな·····?」


そこには凌太が意識を失って倒れていた。
















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