第30話 俺は嫌われてる

「どうだ? リレーは順調か?」


体育祭前の最後の練習を終え、凌太を見つけたユウキは真っ直ぐに話しかけた。

最近はお互いに忙しかったから、あまり話していない。


「まぁな」

「頑張れや、俺の分まで」

「ありがとな」


若干の皮肉を込めたつもりだったが、素直に受け取られてしまった。

気づいてないならそれで良いや。


「ユウキの方は? 小倉さんと上手くやってるの?」

「そこそこはな、結構いい位置までいけんじゃねぇかって言われてるよ」

「凄いじゃん」


気がかりなのは、厄介な奴らに絡まれているという事だ。


「じゃあ俺はこれから用があるから、帰るわ」

「うん、じゃあな」


前日まで用があるなんて、忙しい奴だ。

俺は帰って体を休めるとしよう。


「疲れたー」


クラスに戻ると既に誰も居なかった。

その時は疑問に思うこと無く、家に帰って眠りについた。


「·····は?」


知らん知らん、お揃いのキーホルダー?

あら可愛い、手芸部が頑張ったのかな?

俺以外の奴は全員付けてんじゃねえか。


「ユウキ! なんで昨日来なかったの?」


何も知らない美月が大きな声で聞いてくる。

うっせぇな、誘われてねぇんだよ。


「よ、予定があってな·····」

「そうなんだ、ユウキ以外はみんな来たよ」

「そりゃ楽しそうだったな」

「うん! 楽しかった」


羨ましい、羨ましい。

俺はただ素直になれないだけ、誘ってくれたらすぐ行くよ。


「おお、ユウキ、昨日の決起集会はなんで来なかったんだ?」


てめぇの予定はソレだったのかよ、凌太。

裏切り者めが。

俺も誘え。


「よ、予定が·····」

「お前も忙しい奴だな」

「と、当然だよ·····」


なんでこんなにも素直な奴ばっかなんだよ。

少し聞き返してくれたら、本当はさ·····とかなるのにな。


「どうしたの御影君」

「ああ、クラスの会に呼ばれない問題が·····」

「そう、それは悲しいわね」

「ギャッ!」


勢い余って言っちまったよ。

よりにもよってこいつかよ。

現状は変わらんだろうな。


「なんて声出してんのよ、体育祭頑張ったら誘ってあげる」

「·····まじ?」

「だから頑張って」

「しゃー!」


餌に釣られるみたいだが、それで良い。

俺は全力で頑張ることを誓った。


「クラスのみんな待ってろよ·····、打ち上げはぜってぇ行くからな」
























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