第14話 盗撮タイム開始

「うーん、どうした事か」


一限目が終わり、頭を悩ませる俺。

もちろん一人だ。


「やっぱ盗撮か? ダメだよなぁ·····」


心の中で、天使と悪魔が戦う。


『盗撮しろよ、バレなきゃ良いんだよ』

「そ、そうだよな」

『だめだよ! 犯罪だよ』

「それもそうだよなぁ」


犯罪に手を染めるか?

いや待て、一つだけ手があった。

俺は二限目が終わるのを待って、すぐに職員室へと向かった。


「先生! 写真部に仮入部したいです!」

「そうか! 頑張れよ!」

「はい!」


担任が、脳筋の熱血で良かった。

勢いで乗り切れた。

一応、写真部仮入部という肩書きがあれば、いくらかは写真が撮りやすくなる。


「ここから俺の盗撮タイムが始まるぜ·····」


スマホを構えながら、俺はニヤリと笑った。


「はい、小倉」

『パシャッ』


三限目は、数学。

ここらで20枚は撮っておきたい。


(こいつが発言をしている間に·····)


秘技連写。


『パシャパシャパシャパシャ』


一気に10枚を荒稼ぎした。

これはなかなかのハイペースじゃないか?

不自然な俺の動きに、小倉が何かを察したようで。


「何? あなたまた何か変なことを考えているでしょう?」

「ひ、ひゅー」


ここはベタに口笛で誤魔化しておこう。

バレてしまえば元も子も無い。


「·····」


そのまま小倉は前を向き、授業に戻った。

その隙にパシャリとかましてやった。


(隙だらけだぜ全く、撮り放題だぜ)


結局、数学の時間では13枚、撮る事が出来た。

次は体育。


「着替え·····行くか?」


これは天使と悪魔どうこうではない。

人としての倫理観だ。


「·····やめとこ」


ここで行ってしまったら、本当に人として終わる。

もう終わってるかもしんないけどね。


「体育は動きようが無いなあ」


体育は男子と女子は別れているが、スマホを持つことが出来ない。

万事休すか? いやだめだ。

ひとつ俺は仮病というカードを引いた。


「イタタァ、お、お腹がっ!」

「おい、ユウキ平気か?」

「ダメっぽい、ちくしょー俺はまだこんな所では·····」


少し大袈裟に演技してみる。

すぐに凌太が駆け寄ってくれた。


「し、死ぬっ!」

「先生、こいつを保健室まで連れて行きます」

「頼んだぞっ! 俺たちはバスケだ!」


熱いな、この先生。

生徒が置いてけぼりだよ。

あ、ゴール決めた。


「イヤッホー!」


保健室には、おばちゃんの先生が居た。

幸いなことに、保健室の先生は今居ないらしい。

安静に寝ててくれということだ。

ということは俺の時間だ。


「女子はグランドでソフトかー」


キャピキャピした声が聞こえてくる。

女子同士の絡みは美しい。

心が洗われるようだ。


「よし、パシャパシャタイムの開始!」


後半に全てを賭ける。

ユウキのパシャパシャタイムの始まりだ。










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