小悪魔とユウキ初犯編

第13話 誰か俺に救いの手を

「一体どうしてこうなった·····」


俺は今、全く知らない女子と登校していた。

事件が起こったのは朝の事だ。


「ユウキー! 女の子が来てるよー」

「んーん、誰だ·····?」


母のその声で、俺は目が覚めた。

女の子が来てる? 俺にはそんな子は居ないけどな。

ボーッと支度をしていると、ドアがコンコンとノックされた。


「母さん?」

「あなた、御影君ですよねぇ?」

「だ、誰だ! お前」


眼前に居たのは、小柄でショートカットが良く似合う可愛らしい女の子だった。


「俺には彼女が居た·····?」


そう錯覚してしまうほどに、彼女はこの空間に馴染んでいる。

既にベッドにまで寝転んで、漫画を読んでいる。


「本当に誰?」

「私はー、あなたと同じクラスのー」

「勿体ぶらなくていいから」


こいつわざと焦らしてんのか?

勝手に家にまで上がり込みやがって。


「小森明日香です、以後お見知り置きを」

「誰? お前みたいな奴、クラスに居たっけな?」

「ちゃんとクラスの集まりには顔出したんですけどね」


だとしても知らねぇよ。

俺出てねぇもん。


「ユウキー、明日香ちゃん学校遅れるよー!」

「はーい、今行きます」

「ちょ、ちょっと待て」


俺は彼女を肩を掴んで、引き寄せる。


「俺より馴染んでんじゃん、この家に」

「色々、嘘ついたら歓迎してくれました」

「ねぇ頼むから、辞めてよ」


舌をだしたその表情は、小悪魔のようだった。

いや、ただの悪魔か。


「それじゃあお母さん、いってきまーす」

「行ってきます」


やっと2人きりになれた。

こいつには色々と聞かなきゃいけないことがある。


「説明しろ」

「何が?」

「全部だよ!」


こいつ話通じねぇ。

いちいち仕草がウザイ。


「私ー、見ちゃったんですよー」

「見ちゃった?」

「御影君と小倉さんの密会を」

「はぁ?」


そう言うと、1枚の写真を突き出してきた。

そこには俺が小倉の手足を抑えた時の、瞬間が映っていた。


「なんてことだ·····」


写真を見る限りでは、小倉は怯えた、俺は悪い笑みを浮かべていた。

これって強姦の決定的瞬間じゃないすか。


「そ、その写真をどうする気だ?」

「新聞部に売ってもいいですし、警察でも·····」

「待ってくれ、なんでもするんで」

「なんでも·····?」


しまった、失言だったかもしれない。

現実でこういうことを言うと、すんごいことが起きるかもしれない。


「じゃあー」

「·····」


俺は唾を飲んだ。

どんなえぐい事を言われてしまうのか。

ワンチャン、エッチなことかもしれない。

そう考えると胸が踊る。


「小倉さんの写真を100枚撮ってきて下さい!」

「·····なんて?」

「だから、小倉さんの写真を100枚撮ってきて下さい」


何度聞いても理解したくない。


「俺には役不足だ、すまん」

「いいんですか? 別にこの写真を·····」

「分かった! だから写真をしまえ」


半ば強引に納得してしまった。

よくよく考えるとすごく大変な事だ。


「期限は?」

「今日中で」

「短っ!」

「文句?」

「すいません」


それ以上は何も聞かなかった。

彼女か写真を手に持っていたからだ。


「で? なんで俺の家にいた?」

「だって学校だったら小倉さんと·····」

「小倉となんだって?」

「なんでもないですっ!」


後半はこいつが口ごもったので、よく聞こえなかった。


「1つの言っておくと、俺は小倉に近づけないから」

「·····そういうプレイ?」

「違うわ!」


こいつは俺と小倉に何があったのかよく理解していないらしいが、それについては黙っておく。


「それじゃあ、頑張ってください」

「ほほーい」


御影ユウキの大変な一日が始まる。



















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