第15話 仲間確保

「さぁ、畳み掛けるぜ」


スマホのズームをフルまで近づけて、写真を撮る。

ぼけているが仕方がない。

てか、ブレブレだ。


「ちっ、動きすぎだろ」


それはそのはず、女子はソフトボールをしているのだ。


「打席では無防備·····? 撮り放題じゃね」

「·····誰を撮るんだ?」

「ん? 小倉だよって·····、えっ!?」


俺は怖くて後ろを向けなかった。

堂々と、盗撮宣言をしてしまったのだ。

爆音で心音がなる。

保健室には異様な空気が流れる。


「·····」

「·····」


(ど、どうすりゃいいんだ? 何にも無かったことにするか)


ユウキは全てを闇に葬り去る方法を取った。


「いやー、空を取るの好きなんだよねぇ」

「小倉の間違いだろ?」

「べ、別に·····」

「ユウキ·····、なんかお前変だぞ」


この声は凌太だ。

なんか久しぶりに感じるな。


「お前、俺と喋ってもいいのか?」

「まぁまぁ、今はあいつが居ないし·····」

「そ、そうだな」


これはこれは、我が親友の井口凌太君。

なんとか仲間に引き込めないだろうか。


「俺は今、小倉の写真を100枚撮らなければならないのだ」

「売るの?」

「ちげぇよ! 確かに売れるだろうがな」


見てくれだけはいいので、マニアには高く売れそう。

JKブランド最高。


「中学の時から変わらないな、お前は」

「中学からこんなことしてたっけ」


中学から盗撮魔だったらしい。


「まぁ、迷惑をかけたしな·····、お前のコレクションに付き合うぜ」

「コレクションじゃねぇよ、サンキューな」


とりあえず仲間確保。

1人だとなかなか厳しいものがある。

期限など、一通りの説明を凌太に済ませた。



「今は何枚だ?」

「じゅ、14枚」

「諦めも大事だ」


枚数を言うと、すぐに諦めようとする。

ここで諦めたら俺が終わるんだよ。


「じゃあ作戦会議な」

「おう」


こうしていると中学の頃を思い出す。

美月も入れて3人でよく遊んでいた。

俺が先生のズボンを下ろしたり、俺が顔面に落書きされたり·····。

あれ? 俺ばっかじゃん。


「俺が注意を引き付ける、その内に撮りまくれ」

「作戦でもなんでもないけど、分かった」


体育は終了、俺と凌太は放課後に呼び出しを食らった。

次は、国語。


「めんどいなぁ」


この時間は責めるに責めきれずに、ボーッと過ごした。

先生が怖いのだ。

そして待ちに待った昼休み。


「ここで50は撮る」


俺は気合いを入れる。

机の下で拳を握りしめ、決意を固めた。


「ねぇ小倉さん」

「な、何·····?」



凌太が早速動き出した。

若干引かれているのは気のせいだろうか。


「お昼どうかなって思ったんですけど·····」


ビビっちゃったよ。

答えは多分ノーだろうな。


「別に良いですけど·····」

「え? いいの!?」


思いもよらない返答に、凌太のテンションが上がる。

凌太が目配せで、俺に合図する。


(いけ、ユウキ)

(おっけー)


親友が作ってくれたチャンス、無駄にはしない。

俺は想いを込めて、スマホを構えた。





















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