トレジャーハンター編

第6話 もしかして嫌われてる?

街灯だけが、道を照らす。

俺がうじうじとしている間に、夜は更けて真っ暗になっていた。


「ここ二日に俺の人生が詰まってやがる」


俺の心は今、最底辺の所にいた。

誰でもいいから足をひっかけて、転ばしてやりたい。

でも、もしやってしまったら冤罪では済まなくなる。


「·····帰りたくないな」


俺は一晩を漫画喫茶で過ごそうとした。

でも、制服だったのでダメだった。


「こういう時は漫喫だろうが、かっこつかねぇな」


途方に暮れて、さっきの公園まで戻ってしまった。

真っ暗で何も見えない。


「はぁ、まるで俺の人生じゃねぇか」


お先真っ暗と言ったところだろうか。

ユウキの人生設計は崩れ去った。

人生設計では、既に彼女がいた。


「初日だぞ、学年が変わって」


もう新クラスには居場所はないだろう。

親友の2人にさえも、あんな態度を取ってしまった。


「·····本当、どうしよ」


路頭に迷っていると、一本の電話がかかってきた。

相手は美月だった。

ここは一旦スルーだ。

一度、心配させておく。


「ん゛ん゛」


声色は少し低め。

落ち込んでいる様子を出しておく。

二本目の電話は切れる直前に出る。


「·····もしもし?」

「もしもし? ユウキ、大丈夫?」

「あ、あぁ」

「全然そうは感じないけど·····」


作戦は完璧だ。

落ち込んでいる様子を醸し出し、心配してもらう。


「今どこ?」

「·····公園」

「寒くないの? 家くる?」

「え? 良いの!?」

「·····え?」


おっと、まずいまずい。

俺は嬉しくなると、直ぐに出てしまうからな。

気をつけよう。


「ん゛ 本当?」

「うん、私も少し酷いこと言っちゃったし」

「今から行くね」


俺はすぐ電話を切り、キレのあるガッツポーズをとった。

寝床は確保。


「しゃー、ここから成り上がっていくぜ」


もう殆ど失うものはない。

なら手に入れていくだけだ。

俺はダッシュで美月の家へと向かった。


「·····すいません、夜分遅くに」

「ユウキ? 上がっていいよ」


幼馴染ということもあり、親とも顔見知り。

すんなりと家へと入れた。


「お邪魔します」

「2階おいでー」


2階に招かれ、部屋に入ると女の子の匂いが充満していた。

しっかりと女の子の部屋だ。


「ユウキ、ごめんね」


いやにしおらしく、謝ってくる。

いつも元気な美月の面影はなかった。


「いや、俺も悪かったんだ」

「じゃあ、お互い様だね」

「え?」

「水に流そうね」


早いな、ウサイン・ボルトもびっくりだ。

よっ! 世界新記録、37km。

一応、ここまでにしておこう。


「じゃあ水に流したところで、凌太は平気だったか?」


もう一人の親友の凌太について聞いた。

あいつは、表向きはチャラいが、内心では色んなことを気にしている。


「あぁ、凌太? 平気だよ」

「そっか」

「クラスの集まりでも元気だったし」

「へー、そ、そうなんだ·····」


クラスの集まり? ナニソレ。

誘われてない、てかあったの知らなかった。

グループLINEも入ってないし。


「ど、どれくらい来たんだ?」

「ユウキ以外全員」

「だ、誰も俺を誘わなかったんだ·····」

「ん? どした」


もしかして、俺はクラスの誰にも見えてないのか?

妖精さんか?


「小倉さんは、平気だったか?」

「うん、男子は全く寄せ付けてなかったけど」

「ははは、そうか」


羨ましいな、クラスの会。

てか歓迎会か。


「明日からどうするの? 毎日うちって訳には行かないでしょ?」

「そうだよな、まぁ今日は気分だったから」


可能ならば、俺はこの部屋で過ごしていたい。

現実問題としては、そうは行かない訳でして。


「そう言えば解決したの?」

「うん、俺は一生小倉さんに近づけなくなった」

「い、一生!? なっが」

「てか、一生会う奴なんてそう居ないだろ」

「へへ、そうだね」


こいつや凌太でさえ、高校卒業したらどうか分からない。

ましてや、あのクソ女だったら二度と会わないだろ。

あと約2年間の学校生活があるがな。


「私たちはどうなるかな」

「どうだろうな、まぁ完全な離れるのは無いだろ」

「ほ、本当? ユウキの口から聞けて嬉しいな」


今のところはな、そんなことは今は言えない。

わざわざ水を差す様なことはしない。


「風呂入ってくるわ」

「行ってらっしゃい」


俺は一旦、風呂へいった。

この平和な時間を一生大切にしたいなって思った。

















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