第4話 走馬灯

「お前なんでここにいるんだよ!」

「ど、どうしてダメなんですか?」


おっとー、そう来るか。

俺をまるで悪者かのように仕立てあげようとしてるって訳か。

ならこっちも出るとこ出ちゃうよ?


「こんの嘘つ·····」

「ストーカー、この人ストーカーです」


彼女は俺を指さし、ストーカーであるとクラスで話した。

当然、クラス中から冷たい目で見られる。


「お、おーいっっ! ちょ、ちょっと待て」


慌てて飛び出した俺は、彼女の手を引いて廊下に出た。


「何言ってんだ? お前さんよぉ」


自分の中で最高の凄みを見せる。

これは怖くて怯えてるんじゃないか?


「·····」

「お? どした?」

「キャーっ! 助けてー」

「どうした! 大丈夫か?」


一本とられた。

これは素直に賞賛だ。

こいつの冤罪への持っていき方は、美しさを感じる。


「御影·····、後で職員室に来い、話しがある」

「は、はーい」


明るく返事をするのが精一杯だった。

一旦、教室へ戻ると冷たい視線が刺さる。

女子からは既に、人間としては見られていない。


「改めまして私の名前は、小倉風花って言います。よろしくお願いします」


よく普通に自己紹介出来んな。

この空気地獄だよ。


「·····」


まぁ、こいつは確かに可愛い。

でもそれを台無しにするくらい、性格というか被害妄想が凄い。

それを抜きしたら、もう男どもを釘付けにするくらいは可愛い。


「好きな食べ物はなんですか」

「え、えーと·····、いちごです」

「じゃあ、好きなタイプは?」

「それはセクハラじゃないんですか?」


お調子者の凌太が勢いに乗って質問をするも、撃沈。

かなりショックを受けている。


「ゆ、ユウキとはどんな関係なの·····?」


今度は美月がだいぶ個人的な質問をする。

んな事聞かなくていいだろ。


「加害者と被害者の関係」

「や、やっぱりそうなの?」


美月の視線が痛い。

もう体中傷だらけだよ。


「そ、それくらいにしようぜ·····」


心が折れそうになり、自己紹介を強引に終わらせる。

これからは地獄の生徒指導だ。
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る