第3話 これが運命ってやつか?

「いってきまーす」


翌日、大泣きしていた俺を気遣ってか、家族の誰も俺に話しかけてこなかった。

逆に気を使われるのがきつい。


「よっしゃー、今日から新学期!」


俺は玄関先で一人、気合を入れる。

今日から俺は高校二年生になった。


「ゆ、ユウキ·····、平気?」

「·····へ?」


勢いよく開けた玄関の先にいたのは、俺の幼馴染である、小川美月だ。

こいつは、身長高い、顔が整ってる、可愛いと三拍子揃っている。

学校でも評判がいい。


「ど、どうしたんだ?」

「え? 一緒に学校行こうと思って·····」


おっと? ここで幼馴染という壁が立ちはだかった。

また例の冤罪事件についてだろう。


「そのー、俺は悪くないんだよ」

「何が? なんか悪いことしたのー?」


まさかの知らぬが仏状態だった。

美月は笑いながらからかってくる。

こいつは小学校の頃からずっと変わらない。


(安心するんだよな)


例の女、妹と凶悪な女の子に当たりすぎて、恐怖症になりかけているが、こいつだけは違う。

俺のことをわかってくれるし、味方になってくれる。


「いや、なんでもないよ」

「·····なんか隠してるでしょ、まぁいいけど」


優しい、今の俺にその言葉は染みる。


「あの子そう言えば、昨日警察に·····」

「あーっ! あーっ!」


近所のババァ共は噂話しかすることねぇのかよ。

黙っとけ。

俺は必死に大声でかき消した。


「え、え·····?」


もちろんドン引かれた。

そんなことは今はどうでもいい。

秘密を守りきれた事実に狂喜する。


「普段の6倍は疲れたぜ·····」


そんなこんなで我が高校についた。

公立だが、まぁまぁの設備は整っている。


「よぉ、ユウキ!」

「お、おはよう」


こいつは俺の親友の、井口凌太だ。

サッカー部のチャラ男で、クラスでも人気者だ。


「聞いたか? 今日転校生が来るらしいぜ」

「そうなんだ」

「てか、また同じクラスだな」

「よろしく」


俺たちはがっちりと手を合わせる。

知ってる人が同じクラスだと心強い。


「私も同じだったよ!」

「ほんとか、よろしく」


俺たち三人は同じクラスだった。

心地よいクラスになりそうだ。


「転校生か·····」


席についてぼんやりと考える。

何度目だって、転校生という言葉には期待してしまう。

俺は何度も、期待を裏切られてきた。

美少女転校生と実は知り合いで恋仲に·····、みたいな展開は現実ではありえない。


(転校生ガチャ、当たってくれよ)


そんなことを考えていると、先生が入ってきた。


「新学年でもよろしく、てことで転校生だ」


(ドキドキ、ワクワク)


まずは女の子であれ。

幸いなことに俺の席の隣は空いている。

ワンチャンスあるんじゃないか?


「じゃあ入ってきていいぞ」

「──ッッ」


俺は思わず立ち上がって息を飲んだ。

クラス中の視線を浴びる。

だが、そんなことを気にしている場合ではない。


「お、お前っ!」

「あ、あなたっ!」


なんと転校生は、俺は因縁の相手だった。

俺は目が会った瞬間に、人生の終焉を確信した。


「お、終わった·····」




























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