第2話 俺に味方は居ないらしい

「酷い目にあった·····」


警察と数時間話し合い、何とか家に帰れるようになった。

もう夜遅くになってしまった。


「ただいまー」

「·····あんたストーカーしたの?」


既に話は妹まで知っていた。

まだ玄関先で一つめの壁、妹とぶつかった。

俺の妹、紗奈はまるで蛇のような冷たい目で睨む。


「だから冤罪だって」

「へー、そう」


紗奈はドアを勢いよく閉めて、2階へと上がってしまった。

妹という壁を超えたら、次は親だ。

リビングへ入ると、両親が身構えていた。


「まずは座れ」


父親は既に顔を真っ赤にしている。

憤怒している。

対する母さんは、怒っているのかも分からない。

あれ? 居場所無くない?


「あのですね? ストーキングの件ですが·····」

「うっさいわ!」


この家には俺の発言権など無い。

もしかしたら人権すら危ういのでは?


「お前をそんな息子に育てたつもりは無い!」

「俺もそんなふうに育ったつもりは無い!」


俺も精一杯に言い返す。

何故かって? 冤罪だったからだ。

必死に両親に説明する。


「だーかーらー、冤罪だったの!」

「なんだって! 俺が警察に殴り込んでやる」

「お、おい! 待て」


俺の父は衝動的に行動をする。

運動会の練習で転んで怪我した時も、親父は学校へと乗り込んでいった。

いわゆるモンスターペアレントって奴だ。


「母さん、聞いたか? 許せねぇなこれは」

「まぁまぁ、お父さん」


気持ちが昂る親父を、母さんが優しくなだめる。

俺はそれを横目に2階へと上がった。

これ以上、付き合っていられない。


「引くほど疲れたぜ·····」


自分の部屋のベットに寝転がりながら、ボヤいた。

振り返ると、やっぱりムカつく。

なんだよ、あの女。


「普通、勘違いとはいえ警察に電話するか? おかしいだろ」


一人で呟いていると、ドアがガチャと開いて、妹が入ってきた。

表情を見るにもう怒っていないらしい。


「どした? 紗奈」

「ほんとに冤罪だったの? 全然話聞いてあげれなかったから」

「お前·····、二重人格かよ」


今度は話を聞いてくれるらしい。


「めっちゃ酷くない? その女の人」

「そうだよな、まじでありえないよな」


すっかり話し込んでしまい、意気投合。

話のわかる妹で良かった。

やっぱり妹は歳が近いぶん、味方になってくれる。


「どう? スッキリした?」

「まぁな、サンキューな」

「あのー、私欲しい服があるんだけど·····」

「ぜ、全然買いますよ」

「やったー、じゃ」


そう言うと音速で部屋から出ていった。

味方など存在しない。

俺はただ貢がされただけじゃねぇか。


「ち、ちくしょう·····、チックショーッッッッ!」

「うっさい!」


俺は泣いた。

泣き声がうるさい? そんなの知らん。

隣の部屋からはありえない程の罵詈雑言が聞こえてきたが、どうでもいい。

体がしわっしわになるんじゃないか、と言うくらい泣いた。


「うぅ、うわぁぁん」

「黙れ!」

「むぐっ、むー」


なんと口をガムテープで止められた。

ここは地獄か? 地獄の鬼すら同情してくれるだろう。

今日ダメだった分は、明日ゆり戻すだろう。

そのうち俺は泣き疲れて眠った。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る