被害妄想激しい系の彼女はいかがですか?

紅月茜

冤罪に巻き込まれた編

第1話 こんなことあってたまるか

俺、御影ユウキはいい事をしている。

財布を落とした女の人に、届けようとしている。

出来ることなら、早く声をかければ良かった。


「何故か、逃げられてんだよな」


明らかに彼女は、チラチラ後ろを見て距離を広げようとしている。

これではいたちごっこだ。


「よし、気合を入れて·····」


顔をパンパン叩き、手足をぶらぶらさせ、準備は万端。

元陸上部の足を見せてやる。


「おーい、ちょっと待ってくれー!」

「ひぃっ」


俺は全力で走った。

幸いにこの道は長い一本道だったので、巻かれることは無い。


「財布落としてるって」


彼女はスピードを落とし、止まった。

いきなり携帯を取り出して·····。


「もしもし? 警察ですか? 男の人に追われてて」

「だ、誰だ? そんな奴」

「特徴ですか? 黒髪で細長い人です」


黒髪で細長い?

特徴は俺とそっくりだ。


「財布を盗まれました、あとストーキングもされました」


財布を盗まれた? ストーキング?

大変な子だ。

俺がいなかったら大変なことになってたんだな。

安心感でほっと体を撫で下ろす。


「あの、少し待ってもらってもいいですか?」

「あぁ、いいですけど·····」


なんでここでステイなんだ?

もしかしてじっくりお礼って訳か。


「今回の件ですが」

「いやいや、こんなこと全然容易いですよ」

「·····ふーん」

「え?」


そこからずっと会話は無かった。

帰ろうとしても引き止められる。

数分後、警察がやってきた。


「大丈夫ですか?」

「はい、犯人はもう確保済みなので」


そう言うと、俺の方を指さしてきた。


「ん? 俺の後ろ? 誰も居ないけど·····」

「あなたよ」

「俺がどうかした?」

「犯人はあなたよ」

「え!?」


俺はその日、初めて警察に連行された。











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