第3話 小学二年生 オメガ(多分)とアルファ(多分)の友達ができた 萌える 上

 





 諸君おはよう、私だ、利根田とねだ 理子りこだ。小学二年生になったぞ。七歳だ。七五三の写真は我ながらプリティーに撮れたので玄関先に飾ってある。ぜひ確認に来てみて欲しい。歓迎しよう、盛大にな


 そういえば最近四歳になった弟の翔馬しょうまが、ねーね、ねーねと何をするにもよく呼んでくれるのだ。


 かわいいだろう?我が弟シスコン化洗脳計画は順調に推移していると言える。

 どっちかというと父の細い目と母の薄い唇という微妙な所を微妙な感じで受け継いだ感じの薄っぺらいモブ顔気味だが、そこが可愛いのだ。


 ショタパうわーと合わさると最強だと思わないか? 思うだろう? だろう?? 来年の五歳の七五三の時には出来うるなら一緒に写真に写りたいものである。我が弟は世界一ぃぃぃ!!


 冗談……ではないがすまない取り乱した。ブラコン? ミイラ取りがミイラ? ふっ、何とでも言え。我が弟は渡さんっっ!!


「りこちゃんおはよ~」

「お花ちゃんおはよう」


 風鈴の様な愛らしくふんわりした声に挨拶を返すと、まるでその名前の通り花がほころぶ様にふんにゃりした笑顔が返される。

 

 やっばい超かわいい。私なら攫う。誘拐犯になれる。そして弟とお花ちゃんの両手に花状態で我がりこ帝國を建国する。ハーレム万歳!!


 すまない取り乱した。一旦落ち着こう。


 おはなちゃんは今の所私の一番の友達である。

 どちらかというとおもちとか多摩川に居るたまちゃんの様に少しぽっちゃり気味だが、そこが可愛い。


 アクセントは、『は』の所にで私は呼んでいる。ちょうど二年生で初めて同じクラスになった時の朝ドラの女性主人公が同じ名前で、そのように呼ばれていたので、私も真似して花ちゃんでなくお花ちゃんと呼ぶようになったという経緯がある。


 お花ちゃんは、何というか全てがゆっくりである。


 先生に名前を呼んで当てられると、驚いたように背筋を一度伸ばしたあと、弟よりも細目で、でも何処か福の神様みたいな笑顔状に垂れた目をぱちぱちと瞬きさせて、二呼吸ぐらい置いてから「はい~」と返事する程度でゆっくりである。


 うむ、かわいいな。


 私が鳥の巣頭になりやすい髪だとしたら、お花ちゃんは長くてゆるいウェーブが何だか人魚姫様みたいな感じの髪である。色味は黒よりかは少し薄い茶色で一般的な髪色だが、私も何だか女の子らしい感じが羨ましく思う程度にはキューティクルがある髪である。


 うむ、かわいいな。

  

 そんな可愛らしいお花ちゃんだが、やはりゆっくり過ぎるのが周囲からずれてしまうのか、お花ちゃんの幼馴染くん以外友達がおらず寂しそうにしていたのでこれ幸いと友達枠に乗り込んだという裏事情がある。


 ふっ、みなの者もまだまだよのう。まぁお花ちゃんの魅力を理解するには年齢と経験値がまだ足りぬのであろう。一見すると分からないのでかなりの高レベルさを求められるのだ。


 主にあと二十五年分くらい。だから仕方ない。


 チート? ずる? ふはは、羨ましかろう! 幾らでも言うがいいわ…! ちょ、ごめん調子乗りましたすんませんやめて石は投げないでっっ

 

 まぁお花ちゃんはゆっくりだし、先程まで相槌を打ってくれていたのに、教室から移動しようとふと私が振り向くといつの間にか廊下の後ろの方に居すぎて瞬間移動かと愕然とする時もあるが、何というか、物語のお姫様みたいな優しい魅力のある子なのである。


 いやだって小学二年生で「わたしみんなよりも遅いから、いちばんに教室に来るようにしてるの」とかふんにゃり寂しそうに、そしてどこか恥ずかしそうに言われてみ? お隣の幼馴染くんとかでれでれだったぞ? 


 たまたま目覚まし時計が夜中の八時にぶっ壊れていて、朝の八時と寝惚け頭で勘違いしたまま超ダッシュで朝学校に来た時に言われてみ? ランドセルの中見たら全教科忘れていたぞ? 中身ないんだぞ。そして隣の幼馴染くんは爆発したまま来てしまった芸術的な我が頭部に釘付けだったぞ? 


 そんでもって普段は窓際に飾られている筈の手に持ったちっちゃな一輪挿しの白い花瓶に、名前は分からないけど道端によくある白いコスモスみたいな感じのお花を挿してたのがお花ちゃんだったと知った時の衝撃を考えてみ? 日によって変わる花を気にも留めず流していたけれど、私、先生がやってるもんだと思ってたぞ?


 毎日毎朝、今日はこれにしようかなぁって学校への道すがら摘んでいるんだぞ? しかも誰に言われたとかでもなく、誰に言うでもなくだぞ? 私なんて超ダッシュの時に鞄引っ掛けて無残に散らせた記憶があるぞ?


 ……、これが、物語のヒロインかよ……。名は体を表すってこのことかよ……


 朝靄漂う私とお花ちゃんと幼馴染くんの三人しか居ない教室の中、その場で「友達になろ! 私りこ!」と食い付く勢いで自己紹介した私は悪くない。


 目を白黒させるお花ちゃんだったけど、泣きそうな感じでふんにゃり「……うん。わたし、はな」と小さな声とやさしい笑顔で一緒に喜んでくれたので我ながらいい仕事をしたと思う。小学生にとって一度お話ししだしたら大概友達である。


 うむ、やはり思い返してみてもグッジョブだな自分。隣の幼馴染くんが不審げというか、警戒感丸出しで見てきてたけど、すまん後で気付いたわ

 

 まぁ最初の数日はお花ちゃんの幼馴染と書いて騎士と呼ぶ彼に警戒感丸出しで対応されていたのだが、私が本当にお花ちゃん目当てだと気付くといつの間にか幼馴染くんとも友達になっていた。


 まぁ私も最初は幼馴染のお花ちゃんを奪られると警戒しているのかなとか、お花ちゃんはゆっくりだしかわいいから虐められたりしないかとお兄さん風を吹かして余計に過保護になっているのかなと考えていた。

 なので何でも感でも噛み付くこの番犬具合にいらっとしても所詮小学二年生の戯れ言よ……と健太に八つ当たっていたのだが、それもあるようだが警戒していたのにはもう一つ重大な別の理由もあったらしい。長くなるので彼のことは後ほど紹介しよう


 健太?今年も同じクラスだよ、お前の方がぶさいくだよ!

 

 ふっ、まぁ今となっては番犬の噛み付きなどよき思い出よ。事務仕事で客を千切っては投げ、千切っては投げして捌いていた山田 莉子のコミュ力に掛かれば小学二年生達を手の平で転がすなどまな板の上の鯛も同然で捌け……すんません人に言えない趣味を一人でにやにやと満喫していたぼっち女如きが調子乗りました。


 まぁそんなこんなでお花ちゃんと友達になったのだが…、あれだな、物欲センサーならぬオメガバースセンサーなるものがやはりこの世に存在しているらしい。


 え?意味が分からない?


 まあ、つまり簡単に言えばお花ちゃんと友達になって副次産物というか、嬉しい誤算が付いてきたのである。


 ふふふ、このオメガバース歴三十路プラスアルファ七歳を舐めてはいけない

 こう、びびびっと来たのである。運は私に味方したのだ。ふわははー!


 ……別に七歳にして薬をやっているわけでも歩いていて落雷に打たれたわけでも、中二病を学年を間違えて発症したわけでもない……筈だ、多分。


 いや落ち着け、このオメガバース布教の天使であり使徒である私といえど人の身ゆえ間違えることなどやはり存在するのでここは保険ぐらい掛けさせて頂きたく思――――アッー!!


 げふん。まぁ確定ではないのだが、嬉しい誤算について説明しよう。

 あ、すまん言い直す。説明しよぉう!


 こう、やはり何処かでネタをぶっこんで行かないと説明ばかりで飽きるからな。主に私が。メンタル大事なのである。


 お花ちゃん、オメガじゃね?(多分


 まぁこう思った理由を説明するにはお花ちゃんの幼馴染くんを紹介した方が早い。


 賢明な諸君、勘の鋭い諸君であれば既に頭上に電球でも浮かんでいるであろう。最近電球見ないのでこの表現もいつしか使えなくなるんじゃないかと思うと寂しい気もするが、とりあえずまぁ先程から濁していたお花ちゃんの幼馴染くんは――――

 

「利根田さんおはよう」

「おはよう聖也せいやくん」


 ――――アルファである(多分


 ちょ、多分ってつけるの理由あるからやめて石を投げないでっいたいっ


 ふう、酷い目にあった。


 まぁ多分と付けるのは中学一年生の時にある『適性検査』を受けるまで正式には確定出来ないからである。ちなみに義務であり国民全員受ける必要があるので無償化されている。やったね!まぁ名前の通り自分の『身体の性』が分かるということだな。


 一応両親の性からもある程度推測出来るし、顔やら身体能力から限りなく白に近いグレーと自身の性を認識は出来るのだが、『一次確定』まではやはり多分を付けるのがまぁ一般的である。


 設定の中だともっと早く一次確定させるべきではないかとの意見もあるようだが、オメガと産まれた時に言われて周囲から虐められて過ごしたらその子の将来はどうするのだうんぬんかんぬんとか、小学生の内はまだ未確定にさせることで社会の道徳的な公平性と協調性の感性を養うことが出来ぬんかんぬんやら、オメガである子の将来を絶望してしまったり育児放棄する親が出て来たらどうするつもりだぬんぬんぬんぬんやら……、まあ挙げ出したらきりがないので現状では中学一年生の時に一回目の『適性検査』があるとだけ認識して頂ければ大丈夫だ。


 何故『一次確定』と呼ぶのかの説明はまた適性検査が始まった時でも説明しよう。覚えていたらな!


 個人的にはオメガの不遇具合に涙を禁じ得ないところではある。設定とはいえ此処つらたん。

 ああ、とはいえこの自分の性に悩む彼等が初めての適性検査を迎える上での不安と安堵の愛憎恋模様……に満ちた作品を読みたい人生だった。

 

 一応アルファの名家とか金持ちは病院にて早めにこう裏口のお金とやらで知ることも出来るという闇のウワサというかまことしやかに囁かれる都市伝説はあるし、表には出てこないけど実際そうなんだろうな~とは私もぼんやり思うが、例えその場合でも百パ―セント確定の診断結果ではない。 


 何故なら自身の性がベータから花開く様にオメガへ、アルファから落ち零れる様にベータへなど途中で変わるというパターンもあるからだ…!はい此処重要!!テスト出るよー!!みんなメモしてー!!


 はぁはぁ、ほら、もう書いてみたくなってきただろう?読んでみたくなってきただろう?


 自らの性が変わるうえ、周囲からの目や立場が一気に良くも悪くも一転するのである。世界が一変するその感覚を主軸とした繊細なる青少年少女達の六角関係を描いたオメガバース作品を読んだ時の前世、山田 莉子の衝撃と言えばこれを印刷して家宝にしたいと目を血走らせるほどであり……おっとよだれが。


 まぁつまり四角関係でも五角関係でもよいのでお待ちしているということである。え?違う?


 ほら、TSものとかあるだろう? む? TSでは伝わらないだと…?


 まぁ男性から女性へ、女性から男性へと転生やら病気やらバイオウイルスやら神様の悪戯やらある朝起きたら突然に……という何ともまぁ多種多様な理由で性別が変化してしまう物語をTSものという。ざっくりだがそんな感じだ。


 ふふふ、健全なる悩める子羊達を汚すこの大人の背徳感よ…、癖にな……すんません調子乗りました。


 自身の性別や変わる周囲からの対応への戸惑いやら、うげッ、こんな生理現象あるのかよ!という笑いや共感を生ませるあたりや、同性と同じように接したらやはり元同性だからかすんごい気安くて結果異性からモテモテになるとか、元親友との関係の変化のあれやこれやとか、本人同性の気分でいるから鈍感というか天然キラーというか……。


 うむ、前世山田 莉子の闇は深かった……。地殻を越えマントルに到達出来そうな程度には深かった……。TSもよいぞ。沼が呼んでいる。嗜み過ぎたロイヤルストレートフラッシュの貴腐人とはこの私のことだ!!


 げふん。まあ今回の私はオメガバースの使者だからな、兼業布教はここまでとしておこう


 長いので一旦区切ろうか

 

 説明はまだもう少し続くぞ

 基礎ばかりでつまらないだろうが、これもより良い布教の為である。よろしく頼むぞ

 











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