捨てられなかった手紙

「そうか」

 病床の旦那様はどこか私を見透かす風に悲しく微笑む。

「良かったよ」

 絹布団の上の痩せ衰えた手が古びて黄ばんだ手紙を握り締めた。

「償えなくても、せめてこの心を届けたかった」

 窓越しの空は青く高い。

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灰になるまで 吾妻栄子 @gaoqiao412

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