捨てられなかった手紙

「そうか」

 病床の旦那様はどこか私を見透かす風に悲しく微笑む。

「良かったよ」

 絹布団の上の痩せ衰えた手が古びて黄ばんだ手紙を握り締めた。

「償えなくても、せめてこの心を届けたかった」

 窓越しの空は青く高い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

灰になるまで 吾妻栄子 @gaoqiao412

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ