第9話 食の祭典


「かつて人は『食』というものを愛した…」


青のお姫様は語ります。


「『食』は『人』を『良くする』と感じで書きます」

「つまりは、何が言いたいのよ?」

「…こほん、つまり今ここに食の祭典を開催するッ!!!!!」

「「「はぁ?」」」


青のお姫様の発言に一同は思わず声を漏らします。


「私たちって食べる機能があるのに有効活用してないでしょ?」

「確かに、今までは果物とかしか食べたことないね」

「そんな事に何の意味があるのよ?」

「それは、かつての人の生活を実体験することができる!」


………


「…でも、もともと食事をする必要のない私たちは料理をしたことなんてないよ?」

「そんなのレシピをインストールして再現すれば簡単な話じゃない」

「よし!話がまとまったところで早速やってみよう!」


さて、青のお姫様の提案で始まった食の祭典

それは食材集めから始まったのですが…なんやかんやありまして…


「出来た!」


お姫様たちの目の前の机にはみんなで作った様々な料理が並べられていました。


「…ちょっとこれは、作り過ぎじゃない?」


白のお姫様は目の前の光景にそんな感想を口にしました。


「さて、みんな味覚再現プログラムの準備は良いですか?いよいよ実食です!」

「まったく…大体ねこんなのナンセンスよ。レシピ通りに作ればいくらでも同じ味を再現できるんだからだれが作っても同じでしょ?」

「それに、美味しい不味いは主観的で個人差があったらしいじゃない?だったら私たちの味覚の基準ってどうなってるの?」

「さぁ?平均値じゃない?」

「バカバカしい」


そういいながら赤のお姫さまはテーブルの上に並べられた料理の一つに手を伸ばし、それを口に運びました。


「…」


赤のお姫様はそのまま固まってしまいました。


「赤のお姫様?どうしたの?フリーズしてるよ」

「…味覚センサーが壊れたかしら?ちょっとこれ情報が処理しきれないのだけれど?」

「どれどれ?」


そういって白のお姫様もその料理を口に運びました。それに続いて黒のお姫様も同じように口に運びました。


「これは、なんというか独特というか…」

「はっきりわかるわ。こういうのを『不味い』って言うのよ!」

「…これを作ったのは……」


三機のお姫様たちは一斉に青のお姫様を見ます。

青のお姫様はニコニコしながら一同を見つめます。


「一体何のレシピを使ったらこうなるのよ」

「レシピは参考にしただけ!後は私のアレンジだよ!」

「…ア、アレンジ?」

「人間はひそかに隠し味とか、秘伝の調味料とか、レシピに乗ってないモノを入れる事によって料理のおいしさを引き立てていたんだよ!」

「で、一体何を入れたのよ」

「それは、ヒ、ミ、ツ、だよ!なんたって隠し味なんだからね!」

「………青のお姫様は隠し味の解釈を間違えているのでは?これは隠れるどころか自己主張が強すぎて全体をぐちゃぐちゃのかき乱している」

「もはや分解解析もできないくらい滅茶苦茶なんだよねこれ…」

「青のお姫さまは料理下手の典型ね」


三機のお姫様はため息を漏らしました。


「うーん、でもみんなの作った料理は予想通りで面白みが足りないよ?」

「料理に面白みは求めなくていいでしょ」

「そうかなぁ?」


なんだかんだと言いながらもお姫様たちは食事会を楽しんでいったのでした。










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