第2話 青のお姫様の一日

機械姫オートマタプリンセスの朝は早い


--------青のお姫様の場合--------



青のお姫様の一日は日が昇る前から始まります。

柔らかい布団から身を起こし背筋をうーんっと伸ばします。

これは青のお姫様独特の全身のアクチュエーターの駆動確認なのです。

ちなみに睡眠をとる理由は自己診断プログラムやデフラグ等々システム面の機能保全の為に時々1時間から3時間ほどの時間の睡眠をとるのです。

青のお姫様はそれが終わるとベットから飛び降り今度は鏡の前へ行きます。

長く綺麗な金髪を櫛で溶かしそのあとひとまとめにしていつものポニーテールの形にしました。

それが終わると今度はベットの隣にある『ハンガー』へ行き両手を広げると様々なところからアームが飛び出し青のお姫様の全身に甲冑のような装甲をつけて行き最後に両肩に肩アーマーのような形状をしたサブアームユニットと大きな剣を装備した背面アーマーを装着しそれに清らかな青色のマントを挟み込み装着して、壁に掛けてあった剣を腰に携えその傍に同じように掛けてあったバックラーも腕に装備してもう一度鏡の前に立ちます。


「よし!」


青のお姫様はそう言うと部屋を飛び出し、今度は倉庫に向かいました。

倉庫の扉を勢いよく開けて今日使う予定の道具を手にすると再び倉庫の扉を勢いよく閉めて駆け出していきます。

その向かった先は庭で、そこには沢山のデクたちが居ました。

デクとは、お姫様たちが仕事をこなす為にジャンクから作った人形で簡素なフレームにカメラとちょっとだけ考える事の出来るAIを搭載したお姫様の為の兵士さんたちです。


「今日は、これから特定危険外来種の駆除に向かうよー!準備はできてる?」


青のお姫様がそう言って水生生物捕獲用の網を掲げるとそれに合わせてデクたちも網を掲げます。


「それじゃあ、しゅっぱーつ!」


お姫様のその一声でデクたちは足並みそろえて目的地まで行進を始めます。

青のお姫様はその先頭を鼻歌を歌いながら歩きます。


これが、機械姫オートマタプリンセスの基本的なお仕事なのです。

本来そこに存在しえなかった生き物を本来の場所に返したり、駆除したり。

絶滅の危機に瀕した生き物たちの保護や繁殖を手伝ったり。

朽ちた大地に木々を植え緑を取り戻したりする事が彼女たちの今の仕事なのです。


「ふー、今日も大量だったねー」


青のお姫様は泥まみれになった顔を持ってきたタオルで拭うと


「ソウギョ、オオクチバス、コクチバス、ブルーギルにミシシッピアカミミガメ…」


それらを詰めたコンテナを眺めて電子帳簿に種類に数を記入して行きます。

それが終わるとデクたちに指示を出して運びださせました。


「それじゃあ、あとはよろしくねー!」


青のお姫様は残りの仕事をデクたちに任せるとその場を立ち去ってゆきました。

次に青のお姫様が足を運んだのは、かつて人類が繁栄を築いていた場所へ行きました。

そこはすでに無人で背の高い高層ビルもいくつかは倒壊し残ったビルも蔦等の植物に覆われていました。

その建物のうちの一つに青のお姫様は足を踏み入れて、瓦礫を退かして回ります。


「今日は、見つかるかなぁ…あ!」


そう言って手に取ったのは一冊の本、それはもうボロボロで表紙だけでは何の本か判断できない程ボロボロでした。


「中身は…うん、大丈夫そう!」


どうやら中身は無事なようです。

この本はかつて人類の娯楽であった『マンガ』と言う本で、青のお姫様はそれが大好きでした。

なので仕事以外の時間はこうやってかつての人の生活圏を散策して無事なものを集めていたのです。




ひとしきり散策を終えると今度はまた別の場所へ足を運ぶそうです。

そこは石の柱が並びそこにそこにあった文明の文字が刻まれえてる場所。

それは、お墓です。

人が生きていた証でもあるそれが立ち並ぶ場所に青のお姫様は足を運びました。

すると今度はそこの物置に置いてあった箒を取り出しあたりを掃除して回ります。

それが一通り終わると青のお姫様はあたりを見渡します。


「…最初見つけた時は荒れ放題だったけど、大分きれいになったよね」


青のお姫様が言う通り見つけた時は荒れ放題で墓石も倒れたり割れたりしていました。

しかし青のお姫様はそれを何時間もかけてできるだけ元通りにしたのでした。


「今日はこんな物も作ってきたんだよ!」


そう言って取り出した物は線香でした。


「偶々見つけた本に乗ってていろんなデータベースにアクセスして見つけて再現してみたんだけどうまくいく言ったかなぁ?」


青のお姫様は一緒に持ってきた蝋燭とライターで線香に火を付けました。


「えーっと、燃え上がらない様にして………これで良いのかな?」


一つ一つのお墓をまわり線香を供えて行きました。

そして青のお姫様は墓石に向かって手を合わせて目をつむります。

それを終えると空を見上げました。

空はすでに日が傾き茜色に染まっていました。


「昔は人間さんも同じ光景を見ていたのかなぁ……」


青のお姫様は少し寂しそうにつぶやきました。


「…あ、一番星みーつけた!」


こうして青のお姫様の一日は終わるのでした。












「さーて、夜は長いよ!サーバー接続良し!電脳同期完了!それじゃあ、ゲームの時間だ!」


…どうやら、まだ終わらないみたいです。












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