機械姫 -おーとまたぷりんせす-
クリシェール
第1話 お茶会
これは人類が地球から絶滅した後のお話です。
人が居なくなった日から大体100年後の世界
そこには4機の自動人形のお姫様がおりました。
一つは北の永久凍土を管理する北の
その姿はそびえる城壁ともいわれる黒い装甲を持つ黒のお姫様
一つは西の海を眺める土地を管理する西の
その姿はさながら白い虎ともいわれる白のお姫様。
一つは南の砂漠を統べる南の
その姿は赤い装甲に太陽神と崇められるような赤のお姫様。
一つは東の島国に住んでいる。東の
その姿は白銀の鎧に清らかな青のマントを羽織る青のお姫様。
4機はそれぞれの土地で日々与えられた仕事を全うしながら暮らしていました。
そして時々この大陸の中央に位置するマザーの下に集い、雑談をするのでした。
「で、なんで毎度毎度集まらなきゃいけないわけ?」
赤のお姫様は口を尖らし不満を漏らす
「それは、通信じゃ味気ない。顔をあわせて話すことも時には重要だ。…って青のお姫様が言ったからでしょ?」
白のお姫様はそれをなだめる
「そう!それよ!なのになんでその言い出しっぺが毎回遅刻してくるのよ!」
「まぁまぁ、赤いのは少し落ち着いたらどう?青いのが遅れて来ることなんていつもの事だしさ」
「私はそれが許せないのよ!」
その時部屋の扉が勢いよく開かれ人影が飛び込んでくる
「おまたせー!待った?」
それは青いお姫様で遅刻したことは全く悪くは思っていないようです。
「お土産もたくさんあるよ!見て見て!道中で拾ったこの果物の山」
「あ、それなら私も結構な数のブドウがあったからいくつか取ってきたんだった」
そう言って青のお姫様と白のお姫様はテーブルの上に山盛りの果物を置いたのです。
「…あのさぁ、私たちは食事取る必要性無いじゃない。なんで毎回持ってくるのよ?」
「それはもちろん!私たちに食事をする機能があるからだよ!!」
「…本当にどうしてこの必要のない機能を取り除けないのかしら」
そう言いながらも赤のお姫様はブドウを一房手に取り一粒づつ口に入れて行く。
「昔いた人間さん達はこうやってお茶会っていうものを開いてたらしいよ」
「でた、青のお姫様の人間話」
「えー、だってさ気にならないの?私たちのプログラムの根幹には人に尽くすって部分があるんだよ?」
「私にはそんなプログラム無いの。いなくなった人類に興味なんてわかないわ」
「私にも無いなぁ…黒のお姫様は?」
「………私にあるのは場所を守る事だけ」
問いかけられて初めて発言をした黒のお姫様は常に戦闘用バイザーを展開しており表情がわからない。
「なんだ、やっぱり青のお姫様だけなんじゃない」
「そもそもなんで人間は居なくなったんだっけ?」
「それは、マザーが言うには自らの行いを清算した結果滅びたって言ってた」
「………その記録の閲覧に必要な権限は現在マザーしか持ってない」
「なんでぇ?」
「知らないわよ!私に聞くんじゃない!」
「でも、それだけ高いセキュリティを設けてるって事は何かあるのかな?」
4機は声を合わせて唸る。
「まぁ、今必要な情報じゃないし別に良いんじゃないかな?」
「あー、でもー人間さんってどんな感じなのかなぁ?私たちだって人間さんを模して造られたんでしょ?」
「それこそ最大の謎よ。どうして居なくなった人間を模す必要があったのよ?」
再び声を合わせて唸る。
「…情報不足、結論を出せないので思考中断」
「いつもその結論じゃないの。だからこの話はナンセンスなのよ」
「ぶー、でもぉ…」
「ハイハイそこまでそこまで、そろそろ帰る時間だよ。続きはまた今度ね」
「えー!!私まだ来たばっかりだよぉ!?」
「遅刻する奴が悪いのよ」
「青のお姫様。今度は遅刻しないようにね」
「無理無理、何度目だと思ってるのよ」
赤のお姫様はそう言いながら窓から外に向かって飛んでいきました。
「飛べるっていいなぁ…私は陸路だから結構大変なんだよなぁ…それじゃあね、青のお姫様」
「…バイバイ」
そう言って黒のお姫様と白のお姫様は扉から出て行きました。
一人残った青のお姫様は再びテーブルに座り直すとリンゴを手に取りそれをかじりました。
「………人間さん、何処に居るんだろう」
青のお姫様は人間さんに思いを馳せるのでした。
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