第10話
第十回
次の日はすっかりと朝から抜けるような青空が空いっぱいに広がりまるで空の底が見えるようだった。梅雨の季節も過ぎてもう夏は近づいている。S高校の生徒たちももうすぐやって来る夏休みのことで頭がいっぱいだった。世間一般では衣替えとなりS高校の生徒たちも皆が皆がすっかりと夏向きの服装をしているのですがすがしさが校舎の中に満ち溢れていた。S高校の服装は自由で生徒たちは私服を着ていたがその服の色も白系統のものが多くなり、その白い服が太陽の光を反射してまぶしかった。松村邦洋と滝沢秀明が教室の中に入っていくともう吉澤ひとみは教室の中にいた。彼ら二人がやって来るのを待っていた。教室の中では何人かの生徒たちが熱心に宿題を写していった。松村邦洋と滝沢秀明の二人はその様子を見て不安になった。松村邦洋は吉澤ひとみの席に後ろから近づいて声をかけた。吉澤ひとみは片ひじをついて自分の筆箱の中を整理していった。
「吉澤さん、宿題を写している奴がいるんだけどどういうこと。宿題なんか出とったか。」
松村邦洋はおそるおそる吉澤ひとみに聞いてみた。
「あら、おととい、宿題が出ていたじゃないの。あなた、忘れていたの。吉野先生の英語の宿題を忘れていたなんて大変じゃないの。あなたどうする気。」
吉澤ひとみは筆箱を整理する手を止め、なかば面白そうに目を丸くして松村邦洋の方を見た。
「どうするってどうなるんや。」
松村邦洋はうろたえた。英語担当の吉野という教師は宿題に対して大変厳しく宿題を忘れたりすると確実に評定に加えられ中学生でもあるまいに廊下に立たされのだった。松村邦洋はうろたえて二人が何をしているのだろうと寄って来た滝沢秀明に振り返りながら声をかけた。
「おい、滝沢、お前、吉野の宿題をやってきたか。」
滝沢秀明も同じようにうろたえていた。
「えええ、宿題なんか出ていたの。知らなかった。と言うより忘れていたよ。昨日プロレスを見にいってから家に帰ってきて疲れてそのまま眠っちゃったもの。」
滝沢秀明は間延びした声で答えた。
「おい、お前はええよ。まだ吉野のことをよう知らんから。あいつ宿題を忘れた奴にはそのことを確実に評定に加えてそれから中学生でもあるまいに廊下に立たせるんや。お前、どうする。」
「そんなこと言われたって僕にもどうすればいいのかよくわからないさ。」
滝沢秀明もおろおろしていた。二人がおろおろしていると吉澤ひとみがノートを持ってやってきた。
「松村君も滝沢君も何おろおろしているのよ。このノートを写しなさいよ。」
地獄に仏とはまさにこのことで松村邦洋と滝沢秀明は吉澤ひとみに感謝した。
「本気にありがとう。吉澤さん。」
「えっ、僕も写していいの。」
「ええ、いいわよ。本当はこんなことをしても君たちのためにならないんだけど仕方ないわ。非常事態だから今からなら間に合うはずよ。」
そう言って吉澤ひとみはノートを広げて滝沢秀明の机の上に置いた。白いノートの上には読みやすい筆記体で英作文の答えが書かれていた。次のチャイムが鳴り始める前に二人はそのノートを必死で写し始めた。そしてどうやら全部の答えを写し終えると次の授業の始まりのチャイムが鳴った。そして教室の中には吉野というサッカー部の顧問をしている英語の教師が入って来た。クラスの連中は起立礼をした。吉野は机をとんとんとたたいて言った。
「おい、みんな、この前出した宿題をやって来ただろうな。」
松村邦洋と滝沢秀明は机をどんとたたかれたとき、跳び上がりそうな気持ちがした。吉野は教室の中をぐるりと見渡した。生徒の顔色の変化から宿題を忘れている生徒を見つけ出そうという魂胆だった。吉野はおどおどしている生徒を探していた。吉野の目は教室中をぐるりと見回して松村邦洋ところへ行ってピタリと止まった。吉野はチョークを差し出しながら松村邦洋を呼び寄せた。
「おい、松村、宿題をやってきただろうな。お前にやってもらうぞ。ちょっと前に出て来い。」
松村邦洋は吉澤ひとみのノートを写した結果を持って黒板の前へいった。そしてチョークをとると少しおどおどした調子でノートに書いてある解答を写し始めた。それを書き終えると松村邦洋は自分の席に戻った。その黒板に書かれた英文を見ながら吉野は大きくうなずいて解説を加えた。黒板に書かれた答えは正解だった。松村邦洋は吉澤ひとみに目配せをした。吉澤ひとみも軽く微笑んだ。それを見ていた生徒の中で日ごろから吉澤ひとみ、松村邦洋、滝沢秀明たちがいつも仲良くしているのが面白くないと思っている生徒が発言した。
「先生、それ松村君の答えやあらへん。吉澤さんの答えだ。この前の休み時間の間に松村君か吉澤さんもノートを写していたのを見ていました。滝沢くんも吉澤さんの答えを写していました。」
英語の教師の吉野が松村邦洋と滝沢秀明の方へ次の一瞥をくれた。
「それは本当か。」
松村と滝沢秀明はこくりとうなずいた。
「おい、松村、滝沢、前に出てこい。」
吉澤ひとみは二人の様子を心配そうに見ていた。
「吉澤、お前達わかってるなぁ。宿題を忘れたものは廊下に立ってろ。それからばっちりと減点しておくあらな。」
吉野は大声で廊下にいろとどなった。二人が廊下の方へ出て行こうとしたとき吉澤ひとみが急に立ち上がった。
「先生、すみません。宿題を見せようと言ったのは私の方からなんです。」
クラスのみんなはびっくりして吉澤ひとみの方を見た。松村邦洋も滝沢秀明もびっくりして振り返った。そんなことにおかまいなしに吉澤ひとみはひょこひょこと二人のあとを追って廊下へ出てしまった。廊下には三人並んで立っていた。
「吉澤さん、何やらはるのや。君ってばかやないか。」
「あら、そうかしら。私、優等生のイメージンが壊れちゃうかしら」
「イメージが壊れるも壊れないも二人の方から頼んだだから吉澤さんが廊下に出て来ることあらへん。」
「ええ、いいのよ。それよりお付き合いするかわりに私の頼みも聞いて頂戴よ。」
三人がひそひそ声で話しているのを聞きとがめて吉野は廊下に顔を出した。
「おい、廊下で何をごちゃごちゃ言うとるのや。静かにしてろ。廊下に出てまでしゃべっているなら校長室の前に立たせるぞ。」
吉野のが廊下に出てきてどなると三人は首をすくめた。教室の中ではまた笑い声がまき起こった。三人が叱られている様子を教室の後ろのドアから首を突き出してのぞき込んでいる生徒もいた。吉野がまた教室に戻ると三人はさらに低い声でささやき始めた。
「ねえ、お願いがあるの。」
「どんな事。」
「今日、買い物に行くんだけど一緒について来てよ。」
「ああ、そんな事。そんなことならいいよ。なあ、いいだろう。」
「ああ、もちろんだよ。」
松村邦洋と滝沢秀明は学校が終わってから吉澤ひとみの買い物について行くことになった。いつものように学校の正門のところで三人は落ち合った。吉澤ひとみはもう正門のところで二人がやって来るのを待っていた。木陰の中で人待ちをしている吉澤ひとみはまるで恋人を待っている乙女のようだった。しかしこの二人が本当に恋人と言えるだろうか。
「まあ、随分待たせたわね。」
吉澤ひとみは少し不機嫌な表情で二人を睨むまねをした。
「ごめん、ごめん、ちょっと大林に捕まっていたんや」
「そう・じゃあ、行きましょうか。」
「行こう、行こう。」
松村邦洋と滝沢秀明は吉澤ひとみに引っ張られるようにして歩き出した。陽光が緑の葉にきらきらと照り返し木漏れ日がいくつもの輪となってアスファルトの道の上でゆらゆらと揺れていた。二人が吉澤ひとみに連れられて行った場所はデパートの中にあるブティクだった。吉澤ひとみはここで顔なじみのように振る舞った。店員は吉澤ひとみの連れている二人の男を何と思ったのだろうか。松村邦洋にも滝沢秀明にも同じように会釈した。
「何だ。お付き合いって洋服を買いに行くのにつき合うことやったのか。」
「ええ、そうよ、何か不満。」
吉澤ひとみはいたずら小僧が自分のしたいたずらがばれて照れ隠しで笑うように微笑んだ。
「不満ちゅう事やないけど。」
松村邦洋はへどもどしながら答えた。
「不満というわけやないけど女の子が洋服買うのにつき合わされるとは思わなかったわ。」
松村邦洋はやはり少し不満げに吉澤ひとみに言った。
「なぁ、そうやろ。」
松村邦洋は同意を得ようとして滝沢秀明の方へ目配せをした。滝沢秀明の表情にはあまり変化がないようだった。
「まあ、それより。」
吉澤ひとみは店内にある服をとってみて身体にあててみた。
「これ似合うかしら。」
松村邦洋も滝沢秀明も目を見張った。だいたいが吉澤ひとみは何を着ても似合うのだが服装によってさらに引き立つ顔立ちをしていた。松村邦洋も滝沢秀明も何と言ってよいか分からずどきまぎした。
「うん、似合うよ。」
「そう。」
そう言って吉澤ひとみは自分の姿を鏡に映してみた。彼女はまだ少し不満なのかもしれなかった。吉澤ひとみがワンピースを体にあてながら鏡に自分の姿をいろいろな角度から映しているのを松村邦洋と滝沢秀明はまぶしそうに見ていた。松村邦洋と滝沢秀明の見ている鏡の中に映った吉澤ひとみの目は二人に会うと微笑んだ。吉澤ひとみはいろいろな服を手に取ってみて試着室に行き、着たり、脱いだりしていた。。吉澤ひとみは着替えるたびにその服の寸評を二人に求めた。松村に入ると、淑郎に求めた。そのたびに二人は似合っているとか何とか言っていたが実際すべての洋服が吉澤ひとみに似合っているように思えた。吉澤ひとみは結局五、六着試着してみて二番目に試着した服を買うことにした。吉澤ひとみが勘定をすましているあいだ松村邦洋と滝沢秀明の二人は店の出口のところで彼女を待っていた。三人はまた並んで歩いた。吉澤ひとみは今買った服を胸に抱いている。
「結局二番目に試着した服を買ったんだね。」
滝沢秀明が吉澤ひとみの横顔を見ながら言った。
「そう、あの白地の生地の上にいろいろな幾何模様がいろいろな色でプリントされている服ょ。」
「それにしても随分いろいろな服を試着してみたやないの。」
「それはそうよ。お小遣いだってそんなに持っていないんだから有効に使わなくちゃ。」
「うーん、そりゃそうや。」
「明日着て来るの。」
「あなたたちがそう望むなら着て来るわ。」
吉澤ひとみは二人の方を振り返りながら言った。
「へぇ、じゃあ吉澤さんがその服を着ているとこ見たいな。」
「うん、見せてあげる。」
「きっとやで。」
「もちろんよ。」
「それにしても今日はうれしかったな。」
「何が。」
「何がって吉澤さん一緒に廊下に立ってくれたやないか。でもあんなのは安ぽいヒロイズム言うんやで。」
「そうね。安っぽいヒロイズム。」
そう言って吉澤ひとみはほおにえくぼを作った。
「でも何故僕らを友達に選んだんだい。僕も松村もクラスの中ではほとんど目立たないし、全然女の子にももてないし、勉強もだめ。全く何の取り柄もないのに吉澤さんの気が知れないよ。」
事実それはS高校の七不思議の一つに違いなかった。吉澤ひとみは何故この二人に接近しているのだろうか。
「そうや。吉澤さん、君は学校のマドンナやしね。男子全部の憧れの的やないか。何で僕らなんかを友達に選んでくれたんや。それが不思議で仕方ないんや。」
吉澤ひとみは二人をちょっと睨むような目をして「何、言ってるの。私なんてそんなたいそうな者じゃないわよ。あなたたち、私の友達でしょう。これからもずっと私の友達でいて頂戴よ。」
「そりゃあ吉澤さんの友達だということだけででこれ程名誉な事はないけど。」
松村邦洋は少し戸惑っているようだった。それから三人は大阪の難波のあたりで遊んだ。道頓堀へ行くと人混みがすごかった。道頓堀の橋の上ではどこかのラジオ局がお笑いタレントを使って街頭インタビューをしていた。そこにもひとだかりができていた。三人はそばのたこ焼き屋で買ったたこ焼きを食べながらその様子を見ていた。それから名物と言われているカレー屋へ行きカレーライスを食べた。
外にはまだ太陽がだいぶ高いところに出ていて降り注ぐ太陽の光が雨に濡れた蜘蛛の糸のようにきらきらと輝いていた。三人が歩いて行くとそこには公園があった。長いベンチが所々に散らばっていて木陰になっていて涼をとるのに最適だった。あたりにはまだ誰も人がいなかった。公園の中はなだらかな小山のようになって木が所々に植えられその木の根元にはベンチが置かれていた。木陰には涼風が流れていた。三人はその公園のベンチで休むことにした。
「ねえあのベンチで休みましょうよ。」
吉澤ひとみが松村邦洋と滝沢秀明に言った。
「このまま家に帰ってもやることもないでしょ。ねっ、だからあのベンチで少し休んでから家に帰ることにしましょうよ。」
「うん、そうしようか。このまま家に帰っても何もすることもないし。なっ、松村、いいだろう。」
「ああ、いいよ。」
滝沢秀明にそう言われて松村邦洋は答えた。三人は木陰に置かれたベンチのところまで行った。松村邦洋は気を利かして吉澤ひとみが座ろうとするとベンチの上のほこりを息で吹き飛ばした。三人は木陰に置いてあるベンチの上に腰かけた。
「もうすぐ夏ね。」
吉澤ひとみが二人に言った。
「うん、もうすぐ夏だね、やっぱり少し暑くなってきたよ。」
「ちょっと待っててや。」
松村邦洋がそう言って席を立った。
「今ちょっと冷たい物を冷たいものを買って来てやるわ。なっ、いいから、いいから、二人は座って待っててな。今、アイスクリームでも買って来るわ。そうやっているところを見ているといいカップルや。ほら、お似合いや。今、来る道の途中に売店があったから、ちょっと行って来るわ。」
そう言って松村邦洋はベンチから立ち上がると座っている二人を制して近所の売店まで行った。その様子を見ていた吉澤ひとみは楽しそうだった。何かたくらんでいることがあるようだった。吉澤ひとみは含み笑いをしていた。彼女の頭の中には何かの考えが浮かんでそれを実行しようとしているらしかった。吉澤ひとみは滝沢秀明の方を向いて言った。
「ねぇ、滝沢くん、ちょっと待っていてよ。松村くんを脅かしてやろうと思うの。」
「驚かすって何をやるんだい。」
滝沢秀明は驚いて吉澤ひとみの方を見た。
「まあ、待っていて。」
吉澤ひとみはそう言って今、買って来た洋服の包みを持つと向こうの方へ歩いて行った。そしてしばらくすると吉澤ひとみは見違える姿になって滝沢秀明の前に戻って来た。彼女は今買った洋服を着て戻って来たのだった。吉澤ひとみに着ている服はワンピースで背中の方にファスナーがあった。そのファスナーが背中の途中で何かにひっかかってって動かなくなっているようだった。吉澤ひとみは滝沢秀明の方に恥ずかしそうに背中を向けた。
「ごめんなさい。滝沢くん、ファスナーが途中から動かなくなっちゃったの。全く困っちゃうわ。 きっと糸くずか何かがつまっちゃったからだと思うわ。滝沢くん、糸くずを取ってファスナーを上に上げてくれない。」
滝沢秀明はどきまぎしてしまった。吉澤ひとみの向けた背中には彼女の白い背中が見える。ファスナーは背中の途中で止まっていた。ファスナーの動く部分は首のところから二0センチくらいのところで止まっている。滝沢秀明は壊れ物にでも触るように吉澤ひとみの背中のファスナーに手を伸ばした。確かに白い糸くずのようなものがファスナーに引っ掛かっていた。滝沢秀明はファスナーを下げてその白い糸くずを取ろうとした。吉澤ひとみのにおいが鼻をつく。滝沢秀明は胸の高鳴りを感じた。吉澤ひとみは不自然に息を止めていた。滝沢秀明がファスナーをうまく上げることができず、とまどっていると背後に人影を感じた。
「おいねえちゃんとあんちゃん、うまいことやっとるやないけ。ねえちゃんのファスナーが下りないなら俺がおろしてやろうか。」
後ろを振り返るとサングラスをかけ見るからにチンピラらしい人物がにやにやして顔を近付けて来た。
「おい、ねえちゃん、俺が可愛がってやる。こっちへ来いや。」
そう言ってチンピラは手を伸ばした。吉澤ひとみはその手に噛みついた。チンピラは悲鳴を上げた。
「なんだ。このあま、可愛がってやろうとすれば噛み付きやがって。」
チンピラは吉澤ひとみの手を掴んで連れて行こうとした。滝沢秀明はチンピラの手を掴んだ。滝沢秀明は自分でも何でそのような勇気が出てくるのか分からなかった。
「おい、やめろ、このチンピラ。」
滝沢秀明はそう言ってチンピラの片腕のところにぶら下がると周りの人を呼び寄せようと思って大声を上げた。するとチンピラは滝沢秀明を殴ってから地面の上に投げ飛ばした。滝沢秀明は地面の上に投げ飛ばされて顔で地面をこすった。それでも滝沢秀明は大声でわめきながら両腕をぶんぶん振り回しながらチンピラに向かって行った。そのうち滝沢秀明の七面鳥が首を締め上げられているような叫び声を聞きつけて松村邦洋も駆けつけて来た。松村邦洋は今買って来たアイスクリームの袋を投げつけると滝沢秀明と同じように両腕をぐるぐると振り回しながらチンピラに向かって行った。松村邦洋も滝沢秀明と同じようにチンピラに投げ飛ばされて地面をはった。それでも二人は同じように再度チンピラに向かって行きチンピラの両足にしがみついた。すると吉澤ひとみがチンピラの急所を蹴り上げた。チンピラは急所を抑えてその場を転げ回った。三人はベンチのところへ行くと自分たちのかばんを持ってその公園を走り出した。
「さあ、今だ、逃げだそう。」
三人は夢中で駆けだした。しばらく走って川のほとりの木陰のところにやって来た。三人はそこで立ち止まって大きな石に腰をかけた。松村邦洋と滝沢秀明の顔には地面に投げ付けられたときの擦り傷ができていた。吉澤ひとみは背中のファスナーが完全に上がっていない状態で駆けて来た。三人は三人とも顔を見合わせて笑った。
「まあ、松村君も滝沢君も鼻の頭にこんなに大きな傷をつけちゃって。」
「そういう吉澤さんだってファスナーを完全に上げない状態でここまで来たのかい。」
三人は三人とも何かとても愉快な気分になっていた。吉澤ひとみはハンカチを出して三人の顔の傷の上に付いた砂を払ってあげた。
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