第7話 朝ごはんの準備
アラームが鳴る前に目が覚めてしまった。
部屋が明るくなっており、朝が来たことを告げる。
昨日はなかなか眠れなかった。
布団に入って大分時間がたってから寝付いたしな。
布団からまだ出たくない。
朝ごはんの準備まで、まだもう少し時間がある。
よし、もう一度寝よう。
俺は布団をかぶり直し、二度寝をする。
――トントントン
何の音だ?
部屋をノックされているわけではない。
耳に入って来る音が気になり、布団から出て音の鳴る方に行ってみる。
葵か? 朝から何をしているんだ?
音のする台所にやってくると、そこには見慣れない人が立っている。
誰だ?
「あ、おはようございます。起こしてしまいましたか?」
昨日とは違い、ジャージにエプロン。
何とも不思議な格好をした女の子。
「おはよう。朝早いんだな」
コンロを見てみるとお湯が沸き始め、まな板の上には切られた人参。
きっと味噌汁だな。
「いつも起きている時間に目が覚めてしまって。先に朝ご飯の準備をと、ご迷惑でしたか?」
問題無。逆に遅く起きてしまい、申し訳ない気持ちになる。
「いや、そんな事無い。悪かったな、俺も何か手伝うよ」
寝ぼけ顔のまま、陽菜の隣に立つ。
俺よりも少し背の低い陽菜はメガネをかけていない。
あれ? メガネなしでも見えているのか?
「お手伝いですか? そうですね、では初めに顔を洗ってきては?」
「顔?」
「それと、髪も一度鏡で見た方がいいと思いますよ」
「あー、わかった。終わったら戻って来るよ」
陽菜に言われ、洗面所に向かう。
鏡を見ると、なんともボサッとした男が映っている。
少しよだれの痕にそれなりの寝癖。
んー、だらしないな。
顔を洗い、髪を整え、少しだけ身だしなみを整える。
ついでにうがいもしておこう。
「お待たせ」
「お帰りなさい。今朝はお魚とお味噌汁でいいですか?」
「おー、いいね。なんか悪いな、昨日の今日なのに」
昨日引っ越してきた翌日の朝からご飯の準備とか。
陽菜には悪いが、俺と葵の料理スキルは決して高くはない。
「いえ、私に出来る範囲の事であれば……」
「そっか、助かるよ。何手伝えばいい?」
陽菜は俺にジャガイモを手渡してきた。
「皮むき、お願いできますか?」
おっし、これなら俺にもできるぜ。
「おっけー」
二人で並んで料理とか。
葵と並んだ時は不安がいっぱいだったけど、陽菜だったら安心だ。
同じ年なのに、出来る事って違うんだなと実感。
台所に焼き魚と味噌汁のいい匂いが漂ってくる。
おぉ、何だか普通の朝ごはんが出てくる気がする。
「そろそろかな? 葵ちゃん、どうしましょうか? 起こしますか?」
いつもだったら起きてくる時間。
あいつも昨日は遅かったのか?
「どれ、俺が起こしてくるよ。せっかくだし、みんなで食べようか」
「そうですね。配膳は初めても?」
「いいよ、葵は起きてすぐに食べられるから」
「そうなんですね」
「毎朝ギリギリまで寝ているから、必然と朝ごはんは寝起きになるんだよ」
葵は毎朝ギリギリ。学校の準備も朝しているようなので毎朝が戦場だ。
よって、ご飯の時間もギリギリなので、起きたらご飯。
そして、着替えてダッシュで玄関を出ていく。
休みに入ってからその光景は見ていない。
俺は葵の部屋まで移動し、ノックする。
しかし、出てこないし返事もない。もしかして爆睡中なのか?
面倒だがスマホでコールするか。
しばらくコールしても出ない。おかしいな……。
「おーい、入るぞー! いいのか―? ちゃんと言ったからなっ」
俺は葵の部屋の扉を開け、中に入る。
おおぅ、しばらく入っていなかった葵の部屋は女の子っぽくなってた。
いつの間にこんな部屋になったんだ?
ピンクのカーテンに白いラグ。
カントリー調の低いタンスが目に入り、その上には可愛らしい熊が並んでいる。
あ、あの熊昔俺があげたやつだ。まだ持っていたのか。
熊を手に取り、見てみると、何カ所も直された跡がある。
すっかりボロボロになったな、お前。
俺が買ったときとは大違いだ。
きっと、この縫い目も葵と何度も戦った痕だろう。
よく今日まで耐えているな。
そんな熊を元の場所に戻し、葵の寝ているベッド横まで移動する。
どれ、ドバっと起こしますか!
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