第2話 姉ちゃんと同級生

 最近姉ちゃんと私の高校の同級生、雅美の様子がおかしい。おかしいというか変というか・・・。とりあえず、二人の関係が以前と違って近いような?なんとも言えない雰囲気とでも言ったらいいのかとにかく変な感じだ。

 私の姉ちゃんと友達の関係というのは会社の先輩と後輩という間柄というのは知ってはいた。けど、この二人関係に関してはそれに当てはまらない様なそれ以上のような気がしてならない。


 姉ちゃんは最近会社を辞めたのだけれど、二人は今でも仲良くしている。姉ちゃんの話からしょっちゅう雅美は姉ちゃんの家に来ているみたいだし、姉ちゃんも雅美の家に行ったりしているみたいだった。三人で買い物したり、遊んだりすることはあったのだけど、それは、私と雅美が友達だからかと最初は思っていた。姉ちゃんと雅美は10歳も歳が違うのだし、会社の同僚とは言え、そこまで親しくは普通はならないのではないかと思う。私だったら、後輩とはいえ、10歳年上の同僚とそんなに仲良くなれるだろうか?私だったらたぶん距離が遠くなりそうな気がする。たぶん話も合うかわからないし。会社を辞めたのなら疎遠になりそうな気がする。


 二人の仲良くなるきっかけが、私が間にいることで成り立っている関係であるならば、当然私と三人でということになるだろうと思う。けど、以前、私を差し置いて二人で日帰り温泉なんかにも行ったらしいし、それってなんだか不思議な感じ。まぁ確かになんで私を差し置いて行ったのかと姉ちゃんには文句を言っておいたのだけどね。私も行きたかったな日帰り温泉。


 いくら仲が良くても姉ちゃんが会社を辞めてからは、当然姉ちゃんは雅美とは私の友達として付き合うというのが今からの接し方なのかと思っていた。どうやら二人の関係は思っていたより深そうな気がする。二人の関係というのが会社の先輩後輩だけではなく、友達と言うわけでもなく、もっとそれ以上のようなそんな雰囲気が二人の間から醸し出されているような。まるで、恋人同士のような雰囲気とでも言うような?甘い空気のようなそんな感じ。私は姉ちゃんと雅美の会話を聞きながら、そんなことを思っていた。


「みっちゃん、そんな顔してどうしたの?」


 不意に私の顔を見て言った姉ちゃんに私はさっきの違和感を悟られないように、いつものようにごまかした。


「なんもー?たださ、ひまだなぁと思って。」

「なんで?今雅美ちゃんも来てるんだし暇なことないじゃない?」

「まぁそれはそうだけどさ」


「なぁに?」という姉ちゃんに苦笑いをする。私そっち抜けで会話していたことをどうやら気付いてないらしい。まぁ姉ちゃんはそんなとこあるから驚きはしないんだけど。


「雅美さ、最近好きな人とかいんの?」

「は!?何突然?」

「いや、なんとなく?」


 姉ちゃんに言ってもねと思い、雅美に振ってみることにした。雅美はと言うと、すっごく焦ってるし。それに、姉ちゃんとアイコンタクトなんかしちゃってるし。姉ちゃんは姉ちゃんで何か変な反応しちゃってるし。何?なんかあるの?って思ってしまうじゃん?何これ?私の知らない間に二人に何かあったんじゃないの?って思ってもおかしくないと思うんだ。


「あ、あのね、みっちゃん」

「ん?」

「驚かないでくれる?」


 そう言った姉ちゃん。驚かないでというと、衝撃的な事実を突きつけられる時に言われると思うんだけど、そんな改まって言われるとさらに身構えてしまいそうになるよね。


「あのさ・・・」

「うん。で?」


 先の言葉が出てこない姉ちゃんに急かすけれど、めっちゃ悩んでるみたいで、そして横にいる雅美にアイコンタクトしてるしで、なんとなくわかってしまった。あーそういうことねと。


「二人の関係の話でしょ?」


 そう言った私に二人は顔を見合わせていた。やっぱりそういうことかと納得した。

 この二人付き合ってるのかもしれないと。


「わかったの?」

「いや、なんか雰囲気が甘いなぁと思ってたから、何かあったんだなと思っただけなんだけど。あーそういうことね。」


 一人で納得していた私に姉ちゃんは焦っていて、そんな焦る必要ないのにと逆に冷静になる私。友達と姉ちゃんが付き合っているというとなんとなく嫌な感じはしそうだけど、私はそんな感情は特になかった。雅美が相手だったら別にいいかなと思っていた。何故かはわからないけど、雅美だったら姉ちゃんを任せられそうだと思ったから。同級生の男子が相手とかだったらとんでもないと言いそうな気がする。でも、なんと言うか雅美は別格というか。てか女子なんだけど。でもそれでも雅美だったらという信頼感が私にはあった。何故かというのは姉ちゃんの上司的存在で頼りになると言うのを姉ちゃんが言っていたこともあるし、雅美の性格は高校時代から知ってるし、信頼に値する人物だったからだと思う。


「付き合ってるんだったらいいんじゃない?雅美だったらいいと思う」

 

 いいの?と私にといかけた雅美に私は、何がいいのかわからないけれど不安だったんだと思い、とりあえず、祝福することにした。


「まぁ雅美だったらいんじゃ?姉ちゃん色々あったけど、今幸せそうだし」

「みっちゃん」


 姉ちゃんも色々あったんだよね。あのクソ男に騙された時とかさ、本当に見てられなかったもん。姉ちゃんは表に出さないように強がっていつも通りにって思ってたみたいだけど、やっぱ家族だし辛いのはわかってた。新恋人が流石に女ってのはちょっとびっくりだけどさ、相手が雅美ならいいかなって思う。姉ちゃん幸せそうだしさ。雅美前から思ってたけど姉ちゃんのことめっちゃ好きっぽいし。


「やっぱ雅美から好きになったんでしょ?」

「は?」

「いや、姉ちゃんに胃袋つかまれてたじゃん?あのあたりから?」

「ちょ、そ、そうだけど!」


 照れて赤くなる雅美に、やっぱりねと思いながら、姉ちゃんの顔を見るとほほ笑んで、少し照れくさそうにする姉ちゃんの顔を見て安心した。うん。ちゃんと幸せそうだと。姉ちゃんは、強がって何でもない顔をしたりしてたけど、こうやって幸せそうな顔を見ると妹としては嬉しい。これで一安心かな?


「あ、いっけね。今日はもう帰るわ。」

「え、みっちゃん今日は泊まるんじゃなかったの?」

「んーその予定だったけど、今日中にやらないといけない事あったから帰るわ」

「ほんとに?」

「まぁウソだけどね」

「なにそれー?」


 姉ちゃんに笑ってみせると姉ちゃんはもうみっちゃん!って私の頭を人差し指でここづいた。


「まぁでも今日は帰るね。ちゃんと幸せにしてもらいなよ?姉ちゃん?」

「えっと、うん。ありがとうみっちゃん。」

「あと、雅美」

「うん」

「姉ちゃんよろしくね」

「わかった」


 照れくさそうに頷いてくれた雅美にまたねと手を振って姉ちゃんの家を出たのだった。

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