第9話 駆け足横浜観光ツアー
あたしは… 朝から緊張していた。
ーーーーーーー 豊田さん横浜来たばかりでしょ?僕が案内するよ。ーーーーーーー
これって、これって、いわゆるデート的な……いや いや、浮かれるな芹香!田舎もんに観光案内してやろうっていうだけだ!へんな期待もつとあとで悲しくなるのはあたしだ!
もしかして(デート)を期待する気持ちと、前世年齢+今世18年の染み付いた喪女根性が心の中で軽くバトルしていた。
うーん、うーん… いや、もう考えるのめんどくさいわ。どうにでもなれ! こまけーことはいいんだよ。楽しんだもん勝ちダ!
開き直ったあたしは、待ち合わせに間に合うように家を出たのだった。
*****
時刻は午前9時48分。あたしはJR関内駅に到着すると改札口に向かう。待ち合わせは10時だからね。10分前行動は社会人のタシナミっすよ。
電車が着くたびに出てくるたくさんの乗客を眺めていると、その中に優也君の姿をみつけた。なんだか嬉しくて無意識に口の端が上がってしまう。
彼も気がついてくれたらしく、小さく手を振りながらこっちに近づいてきた。
「ごめん、待たせちゃったね」
困ったように眉をへにょりと下げて謝る優也君、プライスレス。 今日もあたし得なご尊顔、あざーっす。
「いえいえ、あたしも5分前に来たばかりですから!」
「あははっ、それじゃ行こうか?まずは横浜スタジアムからね」
横浜スタジアムから始まり、中華街の関帝廟で大きな線香に驚いたり、謎のやたらとデカイすっぽりと頭に被るタイプのお面を被ってふざけたり、店頭で売っている顔ほどの大きさの肉まんを半分こしたり(なんか恋人っぽくない?! 付き合ってもないけど!)、山下公園に行って鳩追いかけたり、アイス売りのおばちゃんからアイス買って食べたり。
(人形の家とマリンタワーは....今回は無し。ちょっと残念)
坂を登って、疲れたねーって事で山手の十番館でお茶をしたら、もう外は暗くなり始めていた。
「最後に港の見える丘公園に行こう」
暗くなるとちょっと怖い外人墓地の横を通り、あたし達は公園に入った。
「うわぁああ!凄い!本当に港が一望できるんですね!あ、あれベイブリッジですか?蒼く光って綺麗…!」
「ふふっ、夏に山下公園の花火が上がるんだけど、ここから凄く綺麗に見えるんだ」
「花火が上がっていなくても、今でも十分綺麗な夜景が見れて嬉しいです!....あの、連れてきてくれてありがとうございます」
満面の笑みでお礼を言うと、優也君は片手で口を覆い、小声で何かを呟いた。声が小さ過ぎて聞き取れなかったけど。
「(どうしよう、ほんとにこの子可愛すぎる)」
「あの....?」
「いや、楽しんでくれたならよかった。....次はもう少し違う所も案内するよ」
おおう..... 次があるみたいだ!ふおおおぉお!
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