第7話 美人は無表情でも美人(でも怖い)

高橋亮太に案内された先は、豪華な調度品の置いてある煌びやかな部屋だった。 所謂VIPルームというヤツだと思う。 なんかこう… ホストクラブみたいで落ち着かない小市民なあたし。


でもここ見てはっきり思い出した。このディスコは攻略対象2人の行きつけの店だ。どおりで入った時からなんか近視感あると思ったんだよねぇ。


そして、部屋の中には…… やっぱりいたぁーー!ゲームのメインヒーロー! 切れ長の瞳にすっと通った鼻筋。薄い唇と形の良い眉毛。 少し長めの、ゆるくウェーブのかかった前髪が頬にかかる姿も大変麗しい…。 彼は仕立ての良い、きっとうん十万するんだろうなぁ、と思わせるダブルのスーツ(やっぱり肩パット入ってるぅ)を着て、豪華なソファーにもたれて、長い足を組んでいた。 


彼の名前は西園寺司さいおんじつかさ。西園寺財閥の御曹司で高橋亮太の親友… だったはず。 ゲーム公式には通称『王子』と書かれていたけど、まさしく王子様だわ。


「ーーーーー ん、早いな亮太。 どうした?踊ってくるんじゃなかったのか?」

「ああ、踊ってはいたんだが… 少しいいか? お前に会わせたい人がいるんだ」


高橋亮太が私の方を振り返って前に出るように目線で合図した。 うーん、あんまり細かいところまで覚えてないけど、こんなシーンゲームにあったかなぁ? この2人との出会いイベントってこんなんだっけ…?


「ああ、名のってなかったね。僕は高橋。こっちが西園寺だ」

「ああっ、えっと… 豊田です、初めまして…」


急に振られたから慌ててぺこりとお辞儀した。 顔を上げると西園寺司にじーっと見られてるんだけど....無表情過ぎてこわっ、マジこわっ。


「この人は?」

「さっきフロアで踊っているところに居合わせたんだけど、彼女のダンスが凄いんだ」

「ほう...」


西園寺司はスッと立ち上がり、あたしを見ていたその切れ長で美しい目が細められた。


「…なら、確認しに行こう」

「えっ……? ふおっ!?」


西園寺司に右腕を取られ、そのままフロアまで連行された… うん、連行だわこれ。断じてエスコートではない。


フロアに着くと、心配してくれてたのか、美奈子と雅美がこっちにすぐ気がついて… 次の瞬間2人の目がカッと見開いた。 まあそうよねぇ~。噂のイケメン高橋亮太に連れて行かれたと思ったら、すぐ戻ってきたんだから。しかも西園寺司もう1人のイケメンに連れられてだもんねぇ~。


確か公式には西園寺司の身長は182㎝と書いてあった。あたしの身長は162㎝。その差20㎝上からあたしの顔を見下ろした彼がふっと笑った。


「さあ、踊ろうか」

「はっ… はいぃ」


最初こそイケメンに正面で見つめられて、ガチガチに緊張してたけど、やっぱそこはアレよ。 踊りだすと夢中になっちゃって、気がつけばめっちゃアクロバティックなステップまで踏んでいた。 うん、無意識ってコワイ。それとで今までダンスなんてやったこと無いのに、難なくどころか思った以上にパフォーマンス出来るのがコワイ。あれか、コレが転生チートってヤツか?


「......すまない、亮太の話は正直誇張していると思ってた。本当に凄いな」

「あ、アハハ.....」





........自重しろし、ジブン!

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