第6話 shall we dance?
黒服のお兄さんのいる扉を抜けると、さっきまで漏れ聞こえてきた音楽が、大きな奔流となってあたしの耳に流れ込んできた。 ここが噂のディスコかぁ、とキョロキョロと店内を見渡す。
あれ?なんだか見覚えのあるような? 初めて来たのに、何だろうこの近視感。
案内された席で飲み物を頼み、くつろいでいると雅美が何やら見つけたようだ。
「ねね、あそこ。あの人アレじゃない? 噂の
そう言って目線で示した先には、白いスタンドカラーのシャツに黒のジャケットとパンツ、銀縁眼鏡をかけて、前髪を後ろに流すように撫でつけたインテリ系イケメン眼鏡が居た。 この姿にこの名前… この人も攻略対象だ。 優也君といい三次元になった
「カッコいいわねぇ~『眼鏡の君』って言うんでしょう~?」
うんうん、ゲームでも『眼鏡の君』って書いてあったな。大きな病院の院長の息子で、将来はその後を継ぐことが決まっているらしい。趣味は車で、愛車はRX....じゃなく、GT-Rってスポーツカーだったはず。 たしか口癖は『美しい…まるでエキゾーストノートのようだ』だった。うん、意味?わかんない。
「確かにかっこいけど、(十中八九絡まれるだろうけど)美形は外から鑑賞してるのが一番だよ。 ねね、そんな事よりそろそろ踊ってみたいなぁ」
「はいはい。それじゃフロア行こっか」
中央に開けたダンスフロアは、薄暗くも色とりどりの光がキラキラと点滅し、数人の客が楽しげに踊っていた。
あたしは最初よく分かんなかったので、周りの人がどんな風に踊ってるか、体を左右に揺らすだけで様子を見ていた。 うーん、なるほど? 本当に体を揺らすだけの人も多いけど、何人かはキレのある動きしてるなぁ。 これなら多少動けてもあんまり目立たないかな? ならば…と少しだけステップを入れたり、くるりと回転してみたり踊りに変化をつけてみた。(前世は中学でhip-hopの授業受けた世代なのだよ)
んふふ。なんか楽しくなってきた!
ノッてきたあたしはさらにキレのあるステップを踏む。 音楽に身を委ねて踊るって最高に気持ちイイ!
ノリノリで踊っていると、なんだか周りの動きが無いのに気がついた。顔を上げて周りをよく見ると、みんなの視線があたしに集まってない? あれ?なんかやっちゃった?!
「セリカってぇ~、どこかでダンスやってたの~?」
「うん、なんかこう… ビシバシっと決まってるよね… マジ驚いた」
「う、ぇ? あ、あはは… 少し?」
美奈子と雅美の問いかけに、しどろもどろで答えていたあたしの背後から、なんとも聞き覚えがあるイイ声が聞こえてきた。
「ーーーーーーー 失礼、君、少しいいかい?」
その声の主はもちろん、高橋亮太だ。 うっは、やっぱりキタワーー!
「君の素晴らしいダンス、見させてもらったよ。 まるでエキゾーストノートのように美しかった」
「あ、えっと… ありがとうございます?」
だからエキゾーストノートってなんやねん。
「容姿も踊っている姿も美しい貴女に紹介したい人がいるのだが.... 着いてきてもらえるだろうか?」
※エキゾーストノート= 車やバイクのマフラーから出る排気音をなんかこういい感じに表現したもの。
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