第3話 ひ、額に汗して働くって…(リベンジ)

まさかの事態にボーゼンとなりながら歩く。 慣れない場所なのにぼんやりしてたおかげで完全に迷いました。 一体ここは何処やねん。 ふと見た道路の案内表示には『地蔵坂』の文字が。 そして気がついたら石川町駅についていた。 無意識に大通りを選んで歩いてたら2駅分歩いちゃったらしいっす。 いや… マジなんでやねん、ジブン!


歩きすぎて足の裏が痛いし、そろそろ小腹....っていうか、早めの夕飯でもいい時間だなぁ。何処か店に入ってみよう。


そう思って、駅前の中通り商店街を元町方面に歩いて行くと、美味しそうな匂いが近くの洋風居酒屋からしてきた。 


うん、ここでいいかなぁ。 ああ、お腹すいたし疲れた…(精神的にも)


店に入ってナタデココ入りの海藻サラダとブルスケッタ、そして何故か牛すじ大根を注文する。 本当はお酒も頼みたかったけど、残念ながら今のあたしは未成年だ。 チッ、早く成人したいなぁ。 


いい感じにお腹も満たされ、足の疲れもだいぶ癒されてきたので、そろそろ帰るかと会計しにレジに行くと、背が高くすごくいい声のお兄さんが居た。 ほう… これはなかなかのイケメンですな… って、心の中でニヨニヨしてたら… あれ? ん? んんんっ? あれ、なんだか見たことあるような…? お兄さんの胸元のネームプレートを見ると「KIRISHIMA」って書いてあるぞ。 キリシマ…きりしま…霧島…


あ、思い出した… 霧島優也きりしまゆうや


攻略対象の1人だ… ! しゅっとしたフェイスラインに長い睫毛、柔らかな印象の少し垂れ気味の瞳、少し長めな髪をゴムで束ねているのもゲームと同じ。 はぁ… 三次元優也、素敵すぎじゃない? 破壊力パネぇわ…


…って待って、この人さっき面接すらさせてもらえなかったレストランの先輩じゃなかった?! あ… もしかして、それで私バイトできなかった? なんてことだ…そんなトラップがあったとは…


などと考え事しながら霧島優也を見つめていたら、なんかちょっと照れたように小首を傾げられた。やばい、ガン見しすぎた?! でもそんな仕草も可愛すぎて刺さるぅ


「あの… 何か?」

「あ、ああいえ! な、なんでも…」


慌てたあたしは彼の後ろに貼ってあった求人募集の張り紙を指さした。


「あ、あの! バイト募集してるんですか?! 私今アルバイト探してて… 出来たら面接受けさせてもらえないでしょうか?!」


よしっ!これで『貴方を見てたんじゃないですよー。後ろの張り紙読んでたんですよー』って誤魔化せたはず!! バイト探してるのも本当だしねっ


「アルバイトは確かに募集してるけど、いきなり決めちゃっていいの?」

「はいっ! ここのお店のご飯美味しかったし、雰囲気もいいし(貴方もいるし)サイコーです!」

「あははっ。分かった、今店長を呼んでくるね。.....と、その前に」


そう言うと、優也は自分の口元を指でちょんちょんと差すと、ふわりと笑ってこう言った。




「パンクズが付いてるよ」






あああああ! 恥ずかし過ぎて埋まりたいぃぃいい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る