第4話
第四回
もうすぐ墨田川で花火大会が開かれる。矢口まみりはその花火大会を楽しみにしている。今度の花火大会はゴジラ松井くんが一緒に行こうと誘っている。どんな浴衣を着て行けばいいのだろう。ゴジラ松井くん強力な印象を与える浴衣を着て行かなければならない。ゴジラ松井くんが、うーん、可愛いと言って思わず抱きしめたくなるような浴衣をである。矢口まみりは銀座に浴衣を買いに行くことにした。いろいろな浴衣を着てみるのは楽しみである。自分がどんなふうに変身するのだろうかと思う。自分が浴衣のデザインによってどんなふうに変わるかということをである。それが期待である。玄関にチャーミー石川の呼ぶ声が聞こえる。
「矢口さん、来たわよ」
「チャーミー石川、ちょっと待って」
お気に入りの服を着た矢口まみりが玄関から出ようとすると後ろから仮面の少女がついて来た。言うまでもなく、スーパーロボ、ヤグチマミリ二号である。
「矢口さん、スーパーロボもつれて行かなければ」
つんくパパが言った。ロボもうなずく。そしてつんくパパもでかける準備をしている。
「つんくパパも行くの」
「もちろんだよ。矢口さん」
「つんくパパもスーパーロボも出かけたら、家の留守番は誰がするの」
「ダンデスピーク矢口がいるじゃないか」
矢口まみりが振り返ると老猿のそれでいて見ようによっては赤ちゃん猿にも見える、ダンデスピーク矢口が中世の異端審問官のような顔つきで乾燥バナナをボリボリとかじりながらちらりと矢口さんの方を一瞥した。
「その仮面を被っている女の子は誰なの」
チャーミー石川が手を差しのばすとスーパーロボは手を握り返した。
「誰かに似ている」
チャーミー石川が言った。
「その仮面をとれないの」
「だめです。矢口さんが許しません」
「でもどこかで見たことがあるような気がする」
「親戚の女の子ですよ」
矢口まみり、チャーミー石川、つんくパパ、スーパーロボの四人は地下鉄に乗った。ふたりの女の子の華やぎが地下鉄の車内の中を満たした。
「どんな浴衣を買おうかしら」
矢口まみりはピンク系統の浴衣を着ようかと思っている。ゴジラ松井くんはどんな浴衣を着てくるのだろうか。
「チャーミー石川。どんな浴衣を買うの」
つり革にぶら下がりながら、横にいるチャーミー石川に聞く。矢口まみりは石川の耳たぶについているイヤリングが小刻みに揺れているのが可愛いと思う。仮面を被ったスーパーロボはトンネルの壁面にかかれた行きすぎる広告を瞬間的に全部、自分のコンピューターの中に記憶している。つんくパパはつり革にぶら下がっているふたりの前で一人だけ腰かけてふたりの乙女の顔を顎のあたりから見上げている。つんくパパは発明家らしくもなく、サングラスをかけていた。
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