第5話 過去①
過去①
怒鳴り声が聞こえる。
母と父がまた喧嘩しているようだ。
些細なことから始まる喧嘩は、
1、2時間続くことが多い。
母は、リコモン、クッション、ボールペン
家のありとあらゆるものを父に投げつけ、
父は、簡単に手をあげる。顔を殴りつけ、
倒れた母を何度も蹴る。
そんなにお互いのことが嫌いなのなら別れればいい。
でも、その度に2人は私が居るから離婚はしないと言う。普段は見向きもしないくせにこういう時だけ私を使う。でも、子供がいるから別れないのは世間体を気にしているにすぎない。
バツがつくことを恐れているだけだ。
母は、父との喧嘩の後、いつも私の部屋の扉をあけ、その時間がたとえ何時でも私が何をしててもその怒りの矛先を向けてくる。
時刻は23時半。明日は高校の期末テスト。だからいつもより早めの22時にはベット入りうとうとと眠りに入ろうとしていたのに、両親の大きな声で強制的に目覚めさせられ、そして今私は母に首を絞められている。
「ゔっ...く、くるしぃ...」
涙目でそう言っても、その手は少しも力が緩まない。
母の目は私を見つめながらでも、どこか虚げで
焦点が合っていない。
「あんたなんて、死んでしまえばいいのに」
物心ついたころから言われ続けたこの言葉ももう慣れた。今更、傷付いたりなんてしない。
酸素が足りなくて、苦してもがいて、さらに苦しくなる。意識が朦朧としてくる。
しばらくして、母は、はっと我に返り寝ている我が子から両手を離す。
ゲホッゲホッとむせる私に何も言葉をかけずに
母は私の部屋を後にした。
お母さん...殺したい相手が目の前にいるのなら
苦しめたいのならもっと確実に力を込めないと。
じゃないと...
今度はお母さんが殺されちゃうよ?
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