第4話 目覚め

日曜日。今日は少しゆっくり休もうということで久しぶりに智也のお家に遊びにきた。

 玄関を入るとすぐにリビングがあり、家具は全て白で統一され、明るく清潔な感じだ。


「いらっしゃい、甘いものでも飲む?」

彼がそう笑って聞くのは、私がこの歳になっても

コーヒーが飲めないからだろう。


 「ミルクコーヒーが良いかな」

私なりの精一杯の虚勢を彼はまたクスクス笑い、

台所に向かって、しばらく経ったら戻ってきたかと思うと、私の前にカカオの匂いが広がる温かいココアを置いた。

 

 「無理はするものじゃないよ。」

むっとした顔の私にはお構いなく、彼は黒い小さな袋からDVDを取り出した。


 「一緒に見ようと思って昨日の夜、借りてきたんだ。亜美は、怖いもの平気だっけ??新作のホラーなんだけどさ」


欲しいものを手に入れた子供のように無邪気な彼をみて、嫌ですなんていえなかった。


 「大丈夫だよ。でも、智也がホラーもの見るの、珍しいね。どうしたの??」


 「たまには、良いかなって。友達もオススメって言ってたけど、恥ずかしい話、一人で見る勇気もなくてさ。」


頭の後ろをさすりながら、そう申し訳なさそうにいう彼をみて、なんだか微笑ましく感じた。


「良いよ。一緒に見よう。」


 そのホラーの内容は、幽霊でじわじわと怖いというよりも思い込みに支配された主人公による狂気で恐ろしさを感じるものだった。仲の良かった友達を自分を襲う熊だと勘違いしてナタを振り回して殺害したり、母親が悪魔に乗っ取られたと騒ぎ、ナイフで喉を何度も切りつけたり、それを止めに入った父親も同じように痛めつけたり...

この作品はその他に残獄な描写が多かった。


 

 見終わった後、私は下を向くことしか出来なくなった。横にいた智也に「亜美...?大丈夫?気分、悪い...?」と聞かれ、顔を覗き込もうとされたので、慌てて私は彼に抱きついた...。


 「ごめんな、ここまでグロい話だとは思わなかったんだ。」


優しく背中をさすり、心配をしてくれる智也。

 

 でもね、違うの...。



 凄い顔してるの...。





 だって今、私笑ってるから...。




 

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