闇に鎮座するもの

 落下してすぐ暗闇の中で尻を打ちつけたラナクは、体勢を立て直すこともできぬまま、急な勾配の斜面をまるで吸い込まれるかのような勢いで滑り落ちていた。


 衣服が擦れる音と風切り音が複雑に反響し、漆黒の闇で満たされた空間に不穏な怪音を轟かせている。


 一体どこまで落ちるのか、落ちた先で死の危険と直面しないだろうかなどと、取り留めもないことを考える余裕が出てきた頃、背中に接していた面が唐突に消えたのを感じたラナクは、一瞬の浮遊感を覚えた直後、したたかに背中を打ちつけて声もなく身悶えた。


 どこからか風が吹き込んでいるらしく、びょうびょうという大きな音が一定の間隔で響いている。上階のような明かりはなく、夜よりも濃密な闇が空間を満たしており、何者かの姿どころか自身の手足の確認すらもままならない。


 ラナクが落下した音を聞きつけ、ガルの「ラナクか?」という囁き声が近くの暗闇から上がり、「大声を出すな。あと、動くな」という押し殺した声が続いた。


「ガルか? ここは」


「シッ! 声がデカイ」


「なんだよ? 別に普つ」


「ヤバイのがいる」


 ガルの緊迫した声の調子から、ラナクは成人の儀でイデルの遺体を発見した時と似た、目に見えぬ何者かが自分の様子を窺っているような、ぬめりと纏わりつく視線を感じた気がして身を強張らせた。


「一体なにがいるんだ?」


 ラナクの問いに近くにいるらしいイブツが「不明です」と小声で答え、「ここからただちに立ち去ることを強く勧めます」と平板な口調で言った。


「立ち去るったって」とラナクが言い掛けたのを、ガルが「静かに話せ」と早口で遮り、「気づかれたら、おそらく命はない」と今までにない真剣さを帯びた声で言った。


 唾を飲み込んだラナクが「なにを見たんだ?」と訊ねると、イブツが「わかりません。登録された情報に合致、および類似した生物はいません」と答えた。


「本当に見たのか? こんな真っ暗な中で、どうやって?」


「お見せしましょう」というイブツの声がするなり、唐突に掌大しょうだいの白い球形の光が暗闇に浮かび上がるや、たちまち三人の姿を照らし出すほどの大きさへと膨張した。


 まばゆい光がイブツの両目から放たれているのを目にし、ラナクが「えッ⁉︎」と驚きの声を上げて「イブツ、目が、目からッ!」と狼狽うろたえるのを、ガルが「黙れ」と彼の黒髪を引っ掴んで乱暴に止め「見ろ」と己の右へ向けて顎をしゃくった。


 ラナクは髪を引っ張られて「がッ!」と短い悲鳴を上げた後、ガルの手を思い切り振り払って頭を動かし、光の円に照らし出された艶のある黒い壁面を見やった。


 見ていると光は上部へゆっくりと移動していき、天井との境目が現れた辺りで下へと折り返し、続いて左右にも壁が広がっていることを示すように動いた後、最初の位置へと戻ってきて停止した。


 もしやキニャカヤッカの雌のような小さな生物がいるのかと、光の照らし出している部分へ目を細めて顔を近づけていったラナクは、滑らかな壁面が大きく波打ったように見えてピタリと動きを止めた。


 すると光が消えて「あれがそうです。このように両目から光を照射して確認しました」と、最前のラナクの質問にイブツが律儀に答えた。


「あれがそうですって、なにもいなかったじゃないか。ただ……なんだか壁がうねったようには見えたけど」


「壁ではありません。生物の体表の一部です」


 誰からも見えていないとわかっていながらも、ラナクはイブツの言葉が信じられず、驚きのあまり暗闇の中で大きく目を見開いていた。


「生物の一部ッ⁉︎ って、え? 外にあった銀色の壁と変わらないじゃないか」


 突然「聴こえるだろ」とガルが言い、「ごうごう鳴ってるデカイ音。自動人形が言うには、こいつの寝息らしい」と小声で続けた。ラナクは再び音を立てて唾を飲み込むと、「まさか? この、風が吹いてるような音を、生き物が出してるっていうのか」と訝るように言った。


「俺が知るか。もういいだろ」とラナクとの会話を切り上げたガルは、「おい、自動人形。出口まで案内しろ」とイブツに居丈高いたけだかに命令した。


「わかりました。では、わたくしの後についてきてください」


「待て。なぜ明かりを点けない」というガルのイブツへ向けた質問に対し、ラナクが「気づかれるからに決まってるだろ」と答えた。


「いえ、おそらくこの生物が光に反応することはないでしょう。目があるかどうかもわかりませんが、いずれにせよ暗闇での生活で機能はしなくなっているはずです」


「じゃあ、なんで点けないんだ? もし、また穴に落ちたりしたら」


「わたくしの消耗がいちじるしくなるため、照明の点灯は緊急時および必要が生じた場合のみに限らせてもらいます。穴に関しては赤外線で三次元計測を行いながら進むので問題ありません」


 ラナクはイブツの言っている意味の半分も理解できなかったが、それでも「わかった。いや、わからないけど……とにかくイブツに任せるよ」と言った。


「任せてください。では、はぐれないようわたくしの衣服を掴むか、わたくしに直接触れたままで後についてきてください」


 ラナクがすぐにイブツのいる辺りへ見当をつけて手を伸ばしたのに対し、ガルは舌打ちを一つして「仕方ねぇ」と呟いてから渋々腕を伸ばした。




 暗闇の中をそろそろと前進しながら、ラナクが「なぁ、イブツ。ここも居住区なのか?」と訊ねると、先頭を歩くイブツが「そうです。居住区の下層部分に位置するゴミの集積所です」と答えた。


「その割には嫌な臭いがしないけど?」


「都市が滅んで使われなくなってから長い年月が経過しているせいでしょう」


「それなら、このデカイ奴はなにを食べ……いや、そうか。さっき言ってた迷い込んだ動物や俺たちみたいな人間が餌なのか」と自問自答で納得しかけたラナクは、「でも、そんな頻繁に動物や人間がここまで落ちてくるものか?」と己の考えを訝るように言った。


「わたくしも疑問に思っていたところです。先ほどこの空間を走査して調べてみたところ、上階とほぼ同等の広さと高さがあることがわかりました。この生物の体長もこの空間の幅と同等の長さ、もしくはそれ以上だと予測されます」


「そんなにデカイのかよ……でもそうなると、どうやってこんな巨体を維持できているのかますます不思議だよな」


「ええ。たとえ自身の代謝を自在に操り、熱量の消費を極限まで抑えられるような能力があると仮定しても」


「おい、ごちゃごちゃうるせぇぞ」とガルが声を上げ、「こいつの餌がなんなのか議論するより、俺たちがこいつの餌にならねぇよう静かにしろ」と凄んだ。


「ハハ。上手いことを言いますね、ガル」


「黙れッ」


「そうもいきません」


 イブツがそう言った直後、ラナクとガルは何かに衝突し、それぞれに己の顔を押さえながら数歩後ろへと蹌踉よろけた。


「言うのが遅れましたが、止まります」


「遅ぇんだよッ!」とガルが怒鳴り、イブツが「だから遅れたと言いました」とやりはじめたのを聴いていたラナクは、「二人ともやめろ」と暗闇に向かって仲裁の声を上げてから「なにがあったんだ、イブツ?」と訊ねた。


「出口のある場所に着いたのですが、巨大生物によって塞がれています」


 そう言ってイブツは目から光を放ち、巨大生物の艶のある黒い体表を照らし出した。濡れたような質感を見せる外皮が、寝息に合わせてぬるぬるとうごめいている。すぐさま明かりが消えて世界が深い闇に沈んだ。


「他に上への出入り口は?」


「わたくしたちが落下してきたゴミ用の導管の排出口を除き、上階へと続く出入り口は通用口であるここだけです」


 ラナクは軽く溜め息を吐き出して「どうする?」とどちらへともなく訊ねた。


「このデカブツと壁のあいだに隙間を作って通るのはどうだ?」とガルが提案し、痺れを切らしたのか「こんなにデケェんだ、ちょっとやそっと触ったくらいじゃ起きやしねぇだろ」と、先ほどまでの過剰に警戒した様子とは裏腹なことを言った。


「生物は一つの感覚器官が機能しなくなった場合、そのぶん他の感覚が鋭敏になると言われています。この説が正しいとするならば、この巨大生物の感覚は視覚以外が鋭敏になっている可能性が高く、たとえほんの少しであっても触れるのは得策ではないと思われます」


「なら、どうするよ。落ちてきたところをじ登るのか?」


「ゴミの排出口は壁面ではなく天井の適当な箇所に開いているようなので、たとえ壁を攀じ登れたとしても、あなたたちの握力では天井を伝って横移動するのに十分ではないでしょう。加えて、その後に導管の中を這い上っていくとなれば、あなたたちの体力を考慮しても脱出が成功する可能性ははなはだ低いです」


「じゃあ、なにか? ここで死ねってのかッ⁉︎ あれも駄目これも駄目じゃ、出られねぇだろうがッ!」


 声を張り上げたガルを「落ち着けッ!」と制したラナクは、「イブツを責めたって仕方ないだろ。少し冷静になってここから出る方法を考えよう」と提案した。


「ここから出る方法ならあります」


「あぁ⁉︎ 聴いてなかったのか? ないって話を今して……そもそもテメェがねぇって言ったんだろうがッ!」


「言ってません。わたくしは上階へと続く出入り口は通用口であるここだけだと言ったのです」


「テメェ、こんな時にまでまた」


 ガルが怒り出したのを察知したラナクが「待てよ、ガル。俺が話を聞くから」となだめ、「説明してくれないか、イブツ?」と先を促し「簡潔に、要約して頼む」と付け加えた。


「わかりました。この空間から外へと通じる出入り口は全部で四ヶ所あります。うち二ヶ所は上階へ通じるもので、先ほど説明した上階の住人がゴミを投棄する導管の排出口と、巨大生物が塞いでいるここの通用口がそうです」


「それで、残り二つはどこへ通じているんだ?」


「一つは可燃ゴミの焼却施設、もう一つは不燃ゴミの破砕施設へと続いています」


「じゃあ、上へ行くことも外へ出ることもできないのか」


「どちらの施設も構造上、間違いなく外へと繋がる設備があります。ですが、わたくしの知る情報はタイメルケルが都市として機能していた頃のもの。遺跡となってからの情報は不確定な要素を多分に含むため、記録と合致していない可能性があります。この巨大生物もその不確定要素の一つです」


「ったく、本当に回りくでぇ野郎だな」と口を開いたガルは、「要するに、現状がどうなっているかは、行ってみなけりゃわからねぇってことだろうが」と吐き捨てるように言い、「おら、自動人形! とっとと案内しろ」とイブツをき立てた。


「ですが」


「うるせぇッ! 考えるより動いたほうが早ぇ時だってあるんだよ。おら、早く連れていけ!」とガルがイブツの衣服を強く引っ張った。


 しばらく沈黙していたイブツだったが、「わかりました。では、行ってみましょう」と答えると、再び先頭に立って暗闇の中を進みはじめた。




 巨大生物の地を揺るがすような寝息が響き渡るなか、明かりのない空間を無言で歩いていたラナクとガルは、イブツの「止まります」という声で足を止めた。


「着いたのか?」とガルが問うと、イブツは「はい。破砕施設への搬出口の前に着きました」と答え、「ですが、見てください」と言って両目から光を放出して進行方向を照らし出した。


 円状の光の中に、先ほどの通用口前にあったのと同様の、巨大生物のぬらりとした黒い表皮が浮かび上がる。


「おい、ちょっと待て。かなり歩いたはずだぞ。このデカブツは二匹いやがるのか?」


「いいえ、一匹です。先ほども言いましたが、この生物の体長はこの空間と同等の長さがあるようです」


 そう言ってイブツが光の放出をやめると視界が再び闇に閉ざされた。


「冗談きついぜ……もし怪物ってのがいるんだとしたら、まさにこのデカブツみたいな奴のことだろうよ」


「怪物ですか」


 いつもの断定的な言い方ではなく、どこか物思いにふけるようなイブツの声音が気になったのか、ラナクが「どうしたんだ、イブツ?」と訊ねた。


「いえ、先ほど記録された生物の情報を検索した時、怪物という種族を考慮に入れなかったもので、たった今再検索をしてみたのですが」


「種族って……こういう奴はなんていうか、特別っていうか変種っていうか。たいてい一匹しかいないもんだろ? 種族ってことはないんじゃ」


「ありました。塔の怪物です」


「塔の怪物?」とラナクが鸚鵡返しに問うと、イブツが「六つの塔にそれぞれ一匹ずつ存在する不死身の怪物のことです」と答えた。


「それって、昔話に出てくる塔の怪物のことか⁉︎」


「そうです」


「嘘だろ? あれはてっきり作り話だとばかり……」


 驚嘆の声を上げるラナクのかたわらから、ガルが「おい。今、不死身と言ったのか?」と口を挟み、「かせ! そんなの確認しようがねぇだろうが! ふざけるなッ!」と大声を上げた。


「ちょ、ガルッ! 静かにしろよ」とラナクが囁き声でたしなめる。


「知るかッ! さっきから周りでこれだけ騒いだり彷徨うろついたりしてるってのによぉ、このデカブツは起きるどころか身動き一つしねぇじゃねぇかッ! なにが『視覚以外の感覚が鋭敏になっている』だ。適当なこと言ってんじゃねぇッ!」


「そのように断定はしていません。あくまで仮定の話であり、可能性が高いと言っただけです。なので、必ずしも」


「あぁッ! うるせぇッ! 黙れッ!」


 そうガルが叫び、わずかな沈黙が流れた後に「ガル。なにを」というイブツの声が上がるや、水面を板で叩いたような湿り気を帯びた音が鳴った。続いてガルのものと思われる舌打ちと「クソッ! かすっただけか」という声がして、イブツが「ガル、やめてください。ガル」と懇願する声が聴こえてきた。


「ガル、一体なにやってんだよ?」とラナクが訊ね、返答を待たずに「イブツ! 明かりを点けてくれ」と頼んだ。


 再び丸い光が巨大生物の体表に照射されると同時に、そこに刀剣を大きく振りかぶっているガルの姿が照らし出された。


「なッ⁉︎ ガルッ! おま、ふざけんなッ!」


「鈍感なんだよぉッ! デカイ図体しやがってよぉッ! だからよぉ、ちょっとやそっと斬ったくらいじゃ効かねぇんだよぉッ!」


 巨大生物に斬り掛かろうとするガルを、駆け寄ったラナクが背後から羽交い締めにし、「やめろッ! なんなんだよ急にッ! さっきまであんなに警戒してただろッ! 死ぬ気か⁉︎」と言って思い止まらせようと試みた。


「本当に不死身かどうか、俺が確かめてやるよぉッ!」


 暴れるガルを押さえながら、ラナクは背後を振り返り、「イブツッ! 押さえるのを手伝ってくれッ! 凄い力なんだ!」と助けを求めた。


「わかり」


 イブツが言い掛けた言葉の残りは、突如として鳴り響いた耳をろうさんばかりの咆哮に掻き消された。


 イブツから放たれている球状の光の中に、己の頭を抱えるようにして両耳を押さえるラナクとガルの姿と、その背後で激しく波打つ巨大生物の濡れた黒い体表が浮かび上がる。


 巨大生物のものと思われる咆哮が続くなか、顔を上げて背後を振り返ったラナクは、蠕動ぜんどうする巨大な壁を見上げるや否や、目を見開いて蹌踉よろけるように後退あとずさると、急激に身体を反転させて光を放つイブツの元へと駆け寄った。


 ラナクが口を開いて何事かを発したものの、それらの言葉は咆哮によって完全に掻き消され、続いて地面が大きく揺れて轟音とともに震動しはじめた。


 思わず耳から両手を離してイブツにしがみついたラナクは、いつの間にやら咆哮がやんで地響きだけとなっていることに気がつくと同時に、揺れる光の円の中で再び刀剣を構えるガルを認めるや、「ガァルッ! 逃げろぉッ!」とあらん限りの声を張り上げた。


 聴こえなかったのかガルからの反応はなく、ラナクは「イブツッ! ガルがッ!」と緊迫した声を上げ、助けを求めるかのようにイブツの横顔を見上げた。


「現在、わたくしたちは生命の危機に晒されています!」


「そんなのわかってるッ!」


「ここからただちに立ち去ることを強く勧めます!」


「それもわかってるって! でもまだガルがッ!」


 ラナクが言い終わるが早いか、地面を揺るがしている重低音の中に、粘り気のあるもの同士が擦れ合うねちゃねちゃとした音と、巨大なものを引き摺っているような擦過音が混じりはじめた。


「ラナク、少しのあいだ両耳を塞いでいてください!」


 ラナクが言われるままに両手で耳を覆うなり、イブツは「ガルッ! 危険ですッ! その場から離れてくださいッ!」と、先ほどまで話していた時の倍以上もの声量で絶叫した。


 ガルは地面の激しい震動を物ともせず、イブツの呼び掛けにも反応することなく、大量の塵芥じんかいが舞う中でぬるぬるとうごめく巨大生物に向かい、腰を低く落とした姿勢で刀剣を構えつづけていた。


「これ以上この場に留まるのは非常に危険です!」


「ガァルッ!」


 無駄だとわかっていながらもラナクが再び怒鳴り声を上げた。


「ラナク! 限界です! あなたを強制的に避難させます!」


 そう言うとイブツはラナクの腰の辺りへと左腕を伸ばし、彼を片手で軽々と持ち上げて左の脇へ抱えると、「目をつぶってください!」と言って前傾姿勢を取った。


「イブツッ! ガルを見捨てるのかッ⁉︎」


「わたくしには自己の甚大な損壊を伴わないと予想される範囲において、最優先で人命を救助するようにと指示が書き込まれています! 残念ながら、ガルの救助はその範囲を逸脱しており」


 イブツが弁明するような長口上をっているところへ、急に上方から強烈な風が吹き下ろしてきたのを感じたラナクは、なびく己の前髪で視界を遮られつつも、様子を探ろうと片目を薄く開いてガルのいる辺りへと視線を彷徨さまよわせた。


 ラナクがガルを目にするや、突如として巨大な黒い物体が視界を遮り、彼の後ろ姿が轟音とともに一瞬にして見えなくなると、わずかな間を置いて最前と同様の強風が正面から吹きつけてきた。


「離脱します! 目を瞑ってください!」とイブツが怒鳴る。


 その声に首を傾けて上方へと視線を動かしたラナクは、イブツの目が放つ白い光線の向こうに、鮮やかな青の巨大な火の玉が飛来したのを目撃し、彼の言葉とは反対に大きく目を見開いてその行方ゆくえを追った。


 青い火の玉が接触するなり巨大生物の部位が瞬時にして蒸発し、いで耳をつんざく悲鳴のような咆哮が轟いた。そこへ立て続けに二つ目、三つ目の炎が飛来し、猛り狂う怪物に次々と命中しては肉体の一部を大幅に灰燼かいじんへと変えていった。


 何が起きているのか理解できないまま、光に照らされている怪物の塵と化した部分を眺めていたラナクは、失われたはずの組織が瞬く間に再生していくのを見て驚愕の表情を浮かべた。

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