第1回戦 ハニーちゃん! 後編

「フルマジック!!」


 ハニーちゃんが、火、水、風、土の四属魔法を放ってきた。

 序盤から、四属性魔法は珍しい。魔法使い同士の戦いになると、基本は魔法を使用するための魔力の消耗戦になることが多い。

 そのため、多種属性の同時攻撃は魔力の消耗が激しいため、プレイヤーにとって決め手にならない限り、普通は使わない。


 しかし、ハニーちゃんがそれを使ってきたいうことは。


「魔力型の魔法使いか……厄介だ」


 ハニーちゃんから、遮蔽物になるようなものに隠れて私は移動する。


「ふふ、逃げて無駄よ? 私がすべて吹き飛ばしてあげる!」


 なんか、ハニーちゃんが怖いこと言ってる。


 だが、彼女にはそれが出来る自信があるのだろう。彼女が魔力型の魔法使いなら。


「フルマジック!!」


 ハニーちゃんの二回目の四属性魔法だ。これは、魔力型で間違いはなさそうだ。

 魔力型とは、言葉通り魔法攻撃力と魔力総量に極フリしたキャラクター育成になる。簡単に言うと、ハニーちゃんの魔法に一発でも私が当たるとゲームオーバー。それぐらいの威力を持ってる、魔法使いだ。


 ただし、当たり前に彼女には弱点がある。言うまでもないが、彼女のタイプの魔法使いは防御力と素早さが壊滅的にない。そのため、さっきからあの場所から、彼女は動いていない。


 「当たれば、いいのよ! 当たれば!」


 また、彼女が怖いことを言っている。まぁ中身が男だから仕方ないのかも知れないだけど……いかんいかん、ゲームの中ではリアルの話は禁句だ。

 お互い全力で、ゲームを楽しんでいるだ。私が、守らなきゃマナー違反になる……気を付けよう。


「ははは!!」


 ハニーちゃんは、未だに四属性魔法を多数撃ち放っていた。

 あと、魔力型の魔法使いには、致命的な弱点が存在する。それは、持久戦になったら魔力が枯渇して、敗北が確定してしまうこと。


 なのになぜ、彼女のような魔力型の魔法使いがいる理由はと言うと。


「もうそろそろ、逃げる場所がないじゃないの! ねぇ!」


 自分の魔法が、相手プレイヤーに当たれば即死。しかも、強力な魔法になるためフィールドに用意されたものをほぼ破壊可能な威力を持っている。そのため、魔力型の魔法使いは、かたっぱしにプレイヤーの隠れていそうな場所を攻撃してプレイヤーをあぶり出す戦闘方法をしている。なんとも、厄介。


「だけど」


 私も、魔法使いである。魔法も使えるが、それより私は特殊な魔法が使える。習得するのに、半年もかかったがこの大会で活躍してくれることを、私は期待している。


「ウィングカッター!」


 風系統の初級魔法を、ハニーちゃんの場所に放つ。ハニーちゃんは、私の放った魔法を空に飛んで逃げた。


 やはり、ハニーちゃんは飛翔魔法を持っていた。空から、プレイヤーに狙いを定めつつ

攻撃するのが、本来の彼女のプレイスタイルだろう。


「危ないわね! でも、見つけたわよ! もうちょっとあとから、飛翔魔法は使おうと思っていたけど……私が空を飛んだら敵なしよ! 残念だったわね!」


 私も、あとから使おうと思っていた特殊魔法を発動させる。私は、ハニーちゃんが魔法で空飛ぶのを待っていた。


「ん? なんであなた、目が光っている?」


 ハニーちゃんは、私の目が光っていることに疑問を思いつつ、高く高く上へ私の魔法が届かない範囲まで飛んだ。


「……なぜ、私がジャッチメントアイか知ってる?」


 私とハニーちゃんの位置では、魔法も声も届かない。なので、秘密を一つ言ってしまおうと思う。


「私は、魔眼使いだからよ」


 私の魔眼の魔法を発動させる。威力は、私の見える範囲のすべて。


「地に落ちなさい、ハニーちゃん」


「あれ……魔法が!」


 ハニーちゃんが、続きの言葉を言う前に空から落下し始める。


 そう、私の魔眼魔法の能力は私の魔眼魔法以外の魔法を無効化させる魔法。チートに見えるが、もちろんこの魔眼魔法の発動中は、私も他の魔法が使えない。なので、魔法使いなのに、接近戦の物理攻撃をしなくていけなくなる。不便と言えば、不便な魔法だ。


 まぁ、この状況だったら逆に有利だ。


 ハニーちゃんは、私の言った通り地に落ちた。その瞬間に、1回戦の私の勝利が確定した。

 本当は、もっと後の戦いで魔眼魔法を使う気でいたのだが、今回は仕方ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る