第1話(3)
恋部メンバーは早速作戦を練ることにした。必ずしも恋愛にスピードは必要ではないが、金曜までにいくつかの情報を用意しておけないようでは、小高からの信頼は得られまい。逆に言えば、そこで力を見せれば、小高も安心して恋部に相談できるというわけだ。
「とりあえず、杉浦さんとやらの素性を探るのが一番だな。今のところ部活が写真部ってことしかわからねえし」
「せめてクラスだけでも聞いとけばよかったですかね」
ちぃが腕を組んで言った言葉に、そらが反応する。クラスも分からない相手についての情報を集めるのは、そう簡単なことではない。せめてもう少しだけでも情報を得ておくべきだった、と考えるのは当然だろう。
「まあ、クラスくらいなら名簿確認すればすぐ分かるから大丈夫だろ」
「部内恋愛ならクラスの方よりも、部活での立ち位置とか関係性について調べる方が大事になるかもだしねぇ」
落ち着いた感じの二年生たちの言葉に、そらは納得したように頷いた。恋部の創設からまだ半年足らずだが、既に多少の心得はある。それに従って進めていけば、情報収集は無難に済ませられるだろう。といっても、問題がないわけではない。最も大きな問題は、いかに他の人達に悟られずに情報を集めるかである。恋部を訪ねてくる人は、その多くが相談していることを周りにバレたくないと思っているからだ。小高は口止めなどしてはいないが、おそらく彼の性格上周りにはバレない方がいいだろう、というのが恋部メンバーの見立てである。
「とりあえず、情報集めの役割分担をしたい。俺は、杉浦さんのクラスの担任にさりげなく話聞いてみる。あとは、所属委員会とかも調べておくか」
「私は友達に写真部の子いるので、探り入れてみます」
「そんじゃ俺は、二年生のお姉様方に聞いてみましょーかね。誰か一人くらいは同じクラスの人いると思うんで」
「私は本人に声掛けてみようかなー。同学年だし、きっかけさえ作れれば何とかいける気がする」
各々が自分の行うべきことを口にした。多方面からの情報を集めるためにも、一人一人の行動が必要となることに加え、全員で動くと小高の相談のことがバレかねない。そのため、情報収集は基本的に個々でのプレーとなることが多い。自分のやるべきことを理解している部員たちは、早々に役割分担を決め、この場は解散となった。
恋部 松下柚子 @yuzu_matsu
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