第4話「結構元気だ」
そこに視線が有るだけで少しだけ安心するんです。
病棟の朝は検温と脈拍数の計測から始まる。
「マサトまだ計れないのか?」
2人部屋で一緒のアツシがマサトに声をかける、ネットゲームで三白眼と呼ばれている少年だ。
「……」
三白眼は看護師さんに脈拍を取ってもらいながら黙り混む。
「アツシ君、人それぞれだぞ」
2つ団子を下に作った看護師さんがアツシを軽くいなす。
「団子甘やかすなよ、マサトもう5年生なんだぞ自分で出来るよ」
団子は三白眼が付けたあだ名だ、本当の名前は
「……」
三白眼は実の所自分で脈を取れる、だけどあえて取れない振りをして居た、彼は1人の行動が好きだったし干渉をとても嫌って居たがそれでも看護師さんの視線が有るだけで、声を掛けて貰えるだけで安心した、脈を取っても貰うのもただ触れているだけで病気の不安が薄まるからだった。
見捨てられていない、気にかけて貰っているは病気の人をとても安心させるのだ。
「アツシ、やっぱお前もゲームしない?」
三白眼は団子に脈を取って貰いながらも話をそらす。
「んー、でもVR一揃って結構するしなー」
アツシは脈拍を既に自分で取っていて体温計を脇に挟んでそう言った。
「はい、おわりー♪」
団子は一仕事終えると「じゃね!」と手を振り次の部屋へと向かう。
「オレの貸してやるから交代でやろーぜ!」
三白眼は少し食い下がる。
「んー、やっぱいいや」
アツシはそう言うとがっかりする三白眼をしりめにこう続けた。
「オレも自分の買って貰う!いっぱい治療がんばってるから買ってくれるかもだし…」
三白眼はアツシとパーティーが組めるかもって心がパアッとなった。
***
「アツシは?」
三白眼がVRゲームに勝って部屋に戻って来るとアツシが居なくなっていた。
「アツシ君言ってたよ、手術終わったらゲーム買って貰えるからマサト君のパーティー入るんだって」
団子はそう言った、三白眼はいつもゲームに熱中すると回りの事を気にしなくなるから、その時を狙って個室に移りそのまま手術したらしかった。
いつもの様に起きて、いつもの様に体温と脈拍を取り、アツシはこの部屋を出ていった。
アツシは今、本館の集中治療室に居る…まだ生きている。
「三白眼、待ってろよな」
アツシはゲームしてるオレの耳元でそう言ったらしい。
「なー団子、アツシのあだ名な何が良いかな、アツシのヤツ何か特長なくて思いつかんかったんだ」
朝の体温と脈拍を取りに来た団子に三白眼がふっと聞く。
「それはマサト君が考えなきゃ、だってその方がアツシ君も嬉しい筈だぞ♪」
そう言った団子はオレに体温計を渡し脈を取ろうとする。
「自分でやるからいい…」
オレは「はいっ♪」と差し出された左手の内側に有る団子の時計の秒針が、てっぺんに来た瞬間脈拍を数え始める。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9…」
オレ達は生きている、結構元気だ。
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