70 ライブの巻き


 半荘とジヨンは基地から出ると、生放送の準備する。


 半荘の額当てに付けられていたカメラは、パルス爆弾で壊れてしまったので予備に付け替え、基地の屋根に落ちたドローンとパルス爆弾の残骸を集めると、島の頂上付近に待機していたジヨンと合流する。

 ここで、ジヨンにカメラを持たせ、カメラアングルの確認。

 半荘は適当にセリフを言いながら打ち合わせを終わらせ、最後に、ジヨンの質問に答える。


「最初は、韓国艦隊の引きの映像よね?」


「そうだ」


「ところでだけど……」


 ジヨンは質問しながら、不自然に盛り上がったブルーシートを見る。


「武器は全て廃棄したとか言ってたけど、そこのナイフの山は、なんなの?」


「見たんだ……」


「こんなのあったら気になるでしょ」


「そっか……。銃が使えたら銃を置いておいたんだけど、もしものために取っておいたんだ」


「大砲にナイフで抵抗するんだ……」


「まぁな」


 ジヨンはとても敵わないと思うが、半荘は鼻を掻くだけ。

 その態度を見て、半荘も同じ意見だと受け取ったようだ。


「さてと……そろそろやるか!」


 半荘は頬をパンパンと叩いて気合いを入れ、ジヨンは頷いてカメラを構える。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 その日、Vチューブの忍チャンネルに海原の映像と、ライブの文字が浮かんだ。

 その映像を見た視聴者は次々に拡散し、あっと言う間に視聴者が膨れ上がる。


 その視聴者が億を超えた頃、映像は韓国艦隊のアップになり、二億を超えた辺りで煙が立ち込め、引きの映像に変わった。


「忍チューバー服部半荘、ただいま参上! ニンニン」


 煙が薄れる中、半荘が登場すると、視聴者は沸き上がる。


「見た? すんごい艦隊だっただろ? アレ、全部韓国の戦艦なんだぜ」


 指を差す半荘の背中越しに、大艦隊の映像が流れる。


「拙者一人に、集める数じゃないだろ~。門大統領~! 戦争するでも気ですか~~~??」


 大声で質問し、手を耳に持って行ってわざとらしく返答を待つ半荘。


「まぁ返事は来ないよな。それよりも、これを見てくれ」


 半荘は、韓国艦隊の逆サイドに移動すると、両手を広げて説明する。


「これが何かわかるか? ドローン! 正解。でも、隣の物はどう?」


 映像は、破裂した銀色の物体のアップになった。


「壊れているからわっかんないよな~。これはパルス爆弾。実物を見たのは俺も初めてだ。本当にあったんだな~」


 おちゃらけて説明した半荘は基地を指差し、映像も基地の絵に変わる。


「そのせいでさ~。基地の機能は死んでしまった。もうお風呂にも入れないんだぜ。かわいそうだろ~?」


 半荘のセリフで、ネットの民に火がつく。

 民間人に使う兵器では無いと、門大統領を非難する声が次々とあがり、忍チューバーを心配する声も聞こえて来る。

 スマホでその書き込みを見た半荘は、感謝を述べながら日本艦隊を見る。


「日本人が、ここまでされて、日本政府は何もしないんですか~~~??」


 半荘はまた耳に手を当てて、返事を待つ仕草をする。


「て、上の人の決定待ちで、海上自衛隊は動けないんだよね~。だから、海自の人が悪いんじゃないからな?」


 このセリフで、阿保総理や防衛大臣に非難の声が集まる。


「て言うか、日本政府がしてくれたのって、Wi-Fiとスマホをくれただけだ。拙者はさ、日本政府なら、すぐに助けてくれると思っていたぞ? いったい、いつになったら助けてくれるんだ~~~!」


 さらに愚痴を重ねると、総理官邸まで届き、閣議を開く趣旨の連絡が飛び交う。

 半荘はその事に気付くわけもなく、韓国艦隊に向き直る。


「まぁ日本が弱腰なのはわかっているよ。でもさ~。国連はどうなの? こう言う事態のためにいるんじゃないの? 仲介しろよ! 船出せよ! 民間人が二人も戦場になりそうな所に居るんだぜ? 何が両国の艦隊が下がらないと船は出せないだ」


 半荘のぶっちゃけ話に、国連にも非難の声が集まる。


「危険地帯だからこそ、国連が助けに来いよ! お前達まで弱腰で、何をしているんだ! どうせ先勝国の何処かが、反対したんだろ? そんな一票で決定ができないなら、国連なんて解体してしまえ!!」


 半荘の愚痴に同意する声で、国連は炎上した。


「それに韓国! どうしても俺を殺したいようだな。銃に大砲にパルス爆弾……その前に、謝れ! 謝ってから銃を撃つな! お前達は何がしたいんだ!!」


 愚痴は韓国に移り、半荘が歩くので、映像は韓国艦隊の絵に変わる。 


「竹島を取り返したいんだろうけど、それなら国際司法裁判所に言ってくれない? そうすれば、解決するだろ? 戦後のどさくさに紛れて奪い取ったから裁判をしたくないの、見え見えだぞ~?」


 新事実……世界はそんな歴史を知らないので、竹島の実情を聞いて、韓国が無理矢理日本から奪ったと記憶されてしまった。


「さてと、溜まっていた鬱憤うっぷんも言えたし、ここからは重大発表があります」


 半荘の言葉を、全世界の視聴者は聞き逃さないように、画面を凝視する。


「日本も国連も、韓国から助けてくれないなら、自分でやるしかない!」


 一呼吸ためた半荘は、大声で宣言する。


「この時間を持ちまして竹島は、拙者、服部半荘がいただき、忍の国として独立します!! ニンニン」



 突然の発表に、日本政府も、韓国政府も、国連も、世界中の人々も、口をあんぐり開けたままの姿勢で、時間が止まってしまうのであった。

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