71 時は動き出すの巻き
「この時間を持ちまして竹島は、拙者、服部半荘がいただき、忍の国として独立します!! ニンニン」
半荘の突然の発表に世界は固まり、時間は止まった。
そんな中、一番初めに時間が動き出したのは、竹島に滞在するもう一人の民間人。
半荘の発表は事前に説明に無かったので、ジヨンは声を荒らげて割り込んだ。
「ちょ、ちょっと! そんな話、聞いてないわよ!!」
半荘は頭を掻きながら返事をする。
「言ったら反対してただろ?」
「当たり前でしょ! そんな事を言ったら、私まで共犯者にされるじゃない!!」
「あ……」
どうやら半荘は、独立に際して、あまり深く考えずに発表してしまったようだ。
「えっと……忍の国の国民にならない?」
「なるわけないでしょ!!」
「で、でも、もう独立しちゃったし……国王の権限で、君を国民にしよう!」
「絶対に嫌! 私は関係ないんだからね! 死にたいなら、あなただけで死んで!!」
「て言うか、生放送なんだけど、そんなに喋っていていいのか?」
「あ~~~!!」
半荘に指摘されて、ようやく口を閉ざすジヨンであっ……
「もういいわよ! あなたね……」
口を閉ざさず、くどくどと半荘を説教するジヨンであった。
* * * * * * * * *
ジヨンの次に時間が動き出したのは、ネットの民。
様々な意見が飛び交う。
「おもしれ~!」
「俺も忍の国の国民になる!」
「面白いけど、現実的ではない」
「そんなに簡単に独立できるわけないでしょ」
「これ、いまクノイチが言った通り、韓国に攻撃してくれって言ってるようなもんじゃね?」
「たしかに……韓国なら、いますぐ撃ちかねない」
「ヤ……ヤバくない??」
「「「「「どうするんだ、忍チューバー!!」」」」」
日本の庇護下から外れた半荘と竹島を、心底心配するネットの民であった。
* * * * * * * * *
ネットの民の次に時間が動き出したのは韓国大統領府。
側近と共に映像を見ていた門大統領は笑っていた。
『わははは。独島を忍の国にするって事は、日本政府は動きようがないな。これでいつ攻撃してもいいってものだ』
楽観的な発言をする門大統領とは違い、側近は難しい顔で応える。
『まだ日本が許可したわけでは無いので、日本の対応を待ったほうが……』
『日本の許可? 独島は我が国の領土だ。武力で奪われたのだから、武力で奪い返すまでだ』
『そうですけど、世界にあのように我が国のやった事を暴露されたあとに、殺したのであれば、韓国の立場が……』
側近の言葉に、門大統領は苛立ちの表情を見せる。
『どうせこのあと、私は国民から裁かれるのだ。全て私の独断だと言っておけ。そうすれば、独島だけは、必ず我が国に戻ってくるのだからな』
『大統領……』
門大統領の覚悟に、側近は粛々と戦闘準備の指示を出すのであった。
* * * * * * * * *
次に時間が動き出したのは日本政府。
と言っても、何が起きているかいまいち理解できていない。
「これって、どゆこと? 独立って……法務大臣。我が国でそんな事ができるのですか?」
阿保総理に尋ねられた法務大臣は、後ろに居た官僚から書類を受け取り、ペラペラとめくりながら汗を拭う。
「えっと、その……前例がありませんのでなんとも……いえ、朝鮮では一度ありましたけど、それとは別問題でして……」
法務大臣の答えと言えない答えに、阿保総理は質問を変える。
「では、現在、独立するとなったら、どうしたらいいのですか?」
「そうですね。例えば、島の住人投票で是非を問うってところですか」
「そんな簡単にできるのですか!?」
「いえ、そう簡単ではありません。まずは国連の非自治地域のリストに加わらないといけませんし、島根県議会が採決を取りますから間違いなく否決になります。それでもどうしてもとなると、竹島の所有権の争いになりますので、裁判で決着……
どうやっても、数十年は掛かるでしょう」
「と、言う事は、独立できたとしても、今日、明日には無理と……」
法務大臣の答えに、阿保総理の方針は決まったようだ。
「とりあえず静観して、韓国が竹島を攻撃する事があれば、我が国に攻撃したと非難しましょう」
かなり消極的な方針に、下から突き上げのキツイ防衛大臣がそろりと手を上げる。
「本当にいいのでしょうか……。現場からも、国民からも、消極的な態度に非難の声があがっているのですが……」
「ですから、攻撃された場合は閣議で話し合って決めるのです。その決定で自衛隊を動かす事になるので、現場にはそのように伝えてください」
「はい……」
防衛大臣は渋々返事をし、官僚を走らせる。
どうやら、現場や国民から防衛大臣の行動が遅いと言われている事が、次の選挙に響くのではないかと心配しているようだ。
そうして話し合っていると、竹島の状況が変わった。
阿保総理を含め、閣僚達がモニターに視線を集める中、忍チューバーは大声で宣言する。
「さて、この島が拙者の国になったのだから、韓国に反撃しま~す!!」
この発言に、阿保総理だけでなく、全世界の視聴者の声が揃うのであった。
「「「「「マジで!?」」」」」
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