69 キレるの巻き


 半荘がドローンを追い、上空から落とされた四角い物体が基地の屋根に触れた瞬間、爆発音と甲高い音が鳴り響いた。


「くっ……基地は!?」


 咄嗟とっさに目を逸らして耳を塞いだ半荘は、音が無くなった瞬間に基地に目をやる。

 するとドローンが、ちょうど基地の屋根に墜落したところだった。


「無事……いや、違う!!」


 基地は壊れた形跡は見受けられなかったが、半荘は焦って走り出し、基地に飛び込んで叫ぶ。


「ジヨン! 大丈夫か!?」


 真っ先に心配したのはジヨン。

 ジヨンは耳を触りながら、返事をする。


「さっきの音、なんだったの?」


 ジヨンの声を聞いた半荘は、ホッとしながら答える。


「たぶん、パルス爆弾ってやつだ」


「あの音が……」


「喋っている場合じゃない。基地の機能がどれだけ生きているか確認だ。ジヨンも手伝ってくれ!」


「え、ええ。じゃあ……」


 これより半荘とジヨンは基地の中を駆け回り、全ての電子機器のスイッチを押して回る。

 そして食堂で集合すると、各々の報告を告げる。


「ダメだ……発電機も照明もやられてる」


「こっちもダメ。水はまだ出るけど、温水は出ない」


 パルス爆弾によって、全てのコンデンサーが破壊され、電子機器は壊滅してしまったようだ。


「くっそ……やられた……」


 自分のミスに、半荘は悔しがりながら椅子に座る。


 実際には、韓国の策略。

 ドローンを使って手紙の配達をし、無害なお届け物として半荘の油断を誘った。

 そして今回は、ドローンが変な操縦をしながら、その音に紛れてもう一機が攻撃する。

 半荘のミスとは言い難いが、ドローンぐらいなら、いつでもクナイで落とせると考えていた慢心がミスを誘ったのだ。


 項垂うなだれる半荘を見たジヨンは、慰めるように声を掛ける。


「あなたは、一人でよくやったわよ」


 ジヨンの言葉を聞いても、半荘は顔を上げない。


「こうなったら仕方がないでしょ? もう、島を出ましょう。たぶん次は、非殺傷兵器ではなく、殺しに来るわよ」


 ジヨンの予想は大当たり。

 韓国は、基地の機能を潰して、半荘達を立ち去らせる。

 立ち去らなくても、一時間後には総攻撃を予定している。



 項垂れてジヨンの言葉に反応しなかった半荘は、拳を強く握り、立ち上がる。


「くっそ~……もう、あったま来た!」


 半荘の意外な言葉を聞いて、ジヨンは呆気に取られてしまう。


「話は聞かないわ、銃は撃つわ、大砲を撃つわ、テロリストとか言うわ……」


 半荘の愚痴は止まらず、喋り続けてようやく愚痴を言い終えると、大きな声で宣言する。


「やってやろうじゃないか! 拙者は忍チューバー服部半荘だ! 拙者を怒らせた事を後悔させてやる! ニンニン」


 カメラも回っていないのに、決め台詞。

 半荘も恥ずかしい事を口走ったと、照れて頭を掻いていた。



「後悔させるって……何をするつもり?」


 半荘の決め台詞をポカンとしながら聞いていたジヨンは質問する。


「まぁ俺の武器はひとつだけだ」


 半荘はそれだけ言うと金属製の箱をガチャガチャと開け、スマホを取り出して笑みを浮かべる。


「これで戦う!」


 スマホを見せられても、ジヨンはピンと来ない。


「そんなので戦えないわよ」


「ペンは剣よりも強し! て、言うだろ?」


「つまり、韓国が不利になるような動画をアップするってこと?」


「そうだ!」


 力強く返事する半荘に、ジヨンは諭すように質問する。


「えっと……総攻撃の前に、島を出たほうがよくないかな~?」


「ジヨンに迷惑掛けないから、ちょっとだけ手伝ってくれ!」


「……内容によるわね」


「韓国に嫌がらせをするだけだ。こんな事をしようと思ってるんだ」



 半荘から作戦を聞いたジヨンは、それぐらいならいいかと安請け合いして、撮影に協力するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る