第147話
「ナーオット殿下。周りをよくご覧ください。そうして、人々の声をお聞きください。」
「なんだ?どうして私が他人の声などきかなければならないのだ。」
ナーオット殿下はまだ状況が理解できていないようである。
まさか、数多の人々に飲ませたナーオット殿下の血の効果がなくなっているだなんて思ってもみないのだろう。
何がなんだかわからずに、首を傾げているナーオット殿下の元に国王陛下が近寄ってくる。
確かな存在感を持って一歩一歩近づいてくる国王陛下は威厳に溢れていた。
「ナーオット殿下。今日を持っておまえを嫡廃する。」
「なっ!国王陛下っ!私が王太子だと言っていたではないですかっ!それがどうして、嫡廃だなんてことになるんですかっ!?」
国王陛下から告げられた内容に納得のいかないナーオット殿下。それもそうだろう。
国王陛下もナーオット殿下の言うなりだったのだから。
それが急に覆されれば驚かないはずもない。
「血迷ったのかっ!ヤークッモ殿下は私の命令になんでも従うんだ。死ねと言えばヤークッモ殿下は死ぬ。それでもいいのかっ!!」
混乱でここがどこだか、周りに誰がいるかもわからなくなっているのだろう。
ナーオット殿下はそう叫び、国王陛下の首元を掴みあげた。
「ぐっ。放さぬかっ!無礼者めっ!」
国王陛下が言うが早いかそれとも、国王の近衛兵がナーオット殿下を拘束したのが早いか。
ナーオット殿下は血の力で操っていた近衛兵が自分を捕らえたことに驚きを隠せないでいる。
「くそっ!なぜだっ!おまえらは私の血を飲んだはず!なぜ、私の命令に背くのだっ!!」
拘束から抜け出そうと必死にもがくナーオット殿下。
だが、鍛えられた近衛兵の力には敵わないようだ。
きっと今まで鍛練などはおこなわず、血の力だけを信じて生きてきたのだろう。
「レイっ!お前が仕組んだのかっ!!」
ナーオット殿下の怒りの矛先は私に向いた。
私は優雅にナーオット殿下に向かって微笑む。
優位に立つように微笑みを浮かべる。
それだけでいい。
それだけで、ナーオット殿下は表情を崩した。
信じられないというような表情で私を見つめるナーオット殿下。
長年ナーオット殿下もとい、ナオトさんの言いなりだった私が逆らって、さらには自分を追い落とすだなんて思ってもみなかったのだろう。
「レイ!許さないからな!!」
「許さないとはどうするのですか?」
余裕の笑みを浮かべてナーオット殿下に問いかける。
ナーオット殿下の血の力のことが知れわたり、ナーオット殿下の血を飲んでしまった人たちには回復魔法をかけた。
もう、ナーオット殿下を守るものはなにもないのだ。
「もう一度お前に血を・・・!」
「まだわかりませんか?私にあなたの血は効果がありません。」
「なぜだっ!そんなはずはないっ!!」
「治癒の魔法を使える人間には効果がないのですよ。」
私はナーオット殿下に真実を教える。
「ばかなっ!そんなはずはないっ!!ヤークッモ殿下も治癒の魔法は使えたが私が操ることができたのだ!そんな嘘をつくな!」
「嘘ではありませんよ。ナーオット殿下。」
「なっ!ヤークッモ殿下!!」
城に集まった人々に治癒の魔法をかけ終わったのだろうヤークッモ殿下が静かにナーオット殿下に近寄る。
そうして、いつもの笑みを浮かべた。
「操られたふりをしていた、とは思わないのですか?」
「なっ!!」
「あなたの血の力は万能ではないんですよ。」
にっこりと笑うヤークッモ殿下の笑みが黒く見えるのは気のせいだろうか。
「さて、国王陛下。ナーオット殿下、いえ、ナーオットは逆賊でございます。どうか彼に相応しい罰をお与えください。」
演技かかった口調でヤークッモ殿下が告げると、国王陛下が重々しく頷いた。
「うむ。ナーオットについては罪状を全て調べあげた上でおって沙汰を伝える。今日は王太子の婚約披露の場でもある。ナーオットを地下牢に拘束しておけっ!」
「「「はっ!!」」」
近衛兵がサッと立ち上がると、ナーオット殿下を引きずるように立ち上がらせ広間から出ていく。
ナーオット殿下は私とヤークッモ殿下の言葉にショックを受けたのか声もでないようだった。
というか、婚約式は本当のことだったのか。初めて知った。
まさか、私とヤークッモ殿下ということはないよね。
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