第137話

 


私はマルガリータさんの案内で、皇帝陛下の側近の方々の元に案内してもらった。


「初めまして。レイチェルと申します。以後お見知りおきを。」


普通であれば側近の方々に私から直接挨拶することはおかしいのだが、あえて挨拶をする。


ナーオット殿下の目を少しでも誤魔化すためだ。


用もないのに近寄って何もせずに踵を返したのでは怪しいことこの上ない。


側近の方々は私を希望を捨て去った世捨て人のような目で見つめてきた。


私は側近の方々に近寄ると、そっと周りに気づかれないように部屋にいる側近の3名に対して治癒の魔法をかける。


すると、虚ろな目をしていた皇帝陛下の側近たちの目に力が宿ったような気がした。


「皇帝陛下の為によく務めてください。」


にっこりと笑顔を向けると、3人の側近は目を見開いた。


そうして互いを見つめ合い深く頷いた。


「「「・・・ありがとうございます。」」」


聡い側近たちは何に対してのお礼かということは言わなかった。


ナーオット殿下に感づかれてしまうと厄介だということがわかっているからだろう。


ただ、その目が希望に満ちたものに変わったので、ナーオット殿下の血の影響からは逃れることができたようだ。


どうやら思った通り、私の治癒の力がナーオット殿下の血の影響を無くす効果があるらしい。


私はそれを確認すると、マルガリータさんと目と目で頷き合った。


私たちはそのまま、マルガリータさんの案内で城のあちらことちらを案内してもらうことになった。


城の一部だけマルガリータさんに案内してもらうのだと怪しすぎるからだ。


その先々で会う人々に挨拶をする。


そうして、ナーオット殿下の血に操られていそうな人で信用できそうな人をマルガリータさんに確認しながら治癒の魔法をかけた。


ただ、国王陛下が動くまではナーオット殿下に操られているふりをしておくようにと釘を刺すことだけは忘れないようにして。


「あとは、ヤークッモ王太子殿下のみですね。」


「はい。信用できる方でナーオット殿下の影響を受けているのはヤークッモ王太子殿下のみになります。」


「なんとか会うことができないかしら。」


「今はまだなんとも・・・。マルゲリータにお願いして国王陛下に相談してみます。」


「お願いね。」


私に与えられた部屋に戻って一息ついてからマルガリータさんと話し始める。


問題はヤークッモ王太子殿下にどうやって接触するかだ。


今のところ機会がない。


ナーオット殿下の婚約者として挨拶するには私だけで挨拶に行くのはあきらかにおかしい。


国王陛下経由で挨拶をするか、もしくはナーオット殿下経由で挨拶をするかの二択になるだろう。


でも、ナーオット殿下の前でヤークッモ王太子殿下に治癒の魔法をかけるのは得策ではない。


最悪どうしてもということであれば、そうなるかもしれないけれども、できればそれだけは避けたい。


となると、国王陛下の協力が必要不可欠となってくる。


 


 


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