第135話
「ああ。そうだ。昨夜、国王陛下がこっそりここに来て現状を教えてくれた。第一王子であるヤークッモ殿下はナーオット殿下の手によってナーオット殿下の操り人形になっているらしいんだ。国王陛下もナーオット殿下の血を飲んだふりをしているそうなんだ。」
エドワード様はそう言ってこのヤックモーン王国の現状を教えてくれた。
一国の王ともあろうものが、帝国の皇太子に自国の内情を漏らすということは、それだけ困っているということだろうか。
「王宮内で働いている者にもナーオット殿下の血を飲まされている者が何人かおります。」
黙って後ろに立っていたマルガリータさんが会話に入ってきた。
なるほど。
王宮内で働いている人もナーオット殿下の手の内にあるということか。
「マルガリータさんも・・・?」
ユキ様がマルガリータさんに確認をする。
「いいえ。私は飲んだふりをしております。マルゲリータも同様です。」
「そうなんですね。」
ナーオット殿下は王宮内で様々な人を血で操っているようだ。
その中でも一部の人だけは血を飲んだふりをしているとか。
やっかい極まりないことこの上ない。
「国王陛下はナーオット殿下の廃嫡をしようとしております。ナーオット殿下は国民も操ろうとしております。それに、なにやら怪しい動きもあります。」
「・・・廃嫡だけですむのか?」
エドワード様はそう言って眉を潜めた。
血を一滴でも飲ませることができれば、ナーオット殿下の操り人形が完成する。
と、言っても直接ナーオット殿下から指示を受けなければ問題はないのだが。それでも、ナーオット殿下から指示を受けてしまえばそれを全うするように身体と思考が勝手に動いてしまうのだ。
廃嫡して、どこかに幽閉したとしても隙をついて見張り番に血を一滴でも飲ませることができたのならば、すぐに抜け出してくることは可能だろう。
「国王陛下は慈悲深いお方ですから。一度は自分の養子へと迎えたお方です。命までは取ることができないのです。」
マルガリータさんはそう言って寂しそうに微笑んだ。
「そんな訳で私たちは捕まったふりをしている。今はまだ王宮内にどれだけナーオット殿下の血を飲んだ人物がいるかわからないから慎重を期しているんだ。」
「そういうことだったんですね。」
国王陛下は敵と味方を見分けるのに時間がかかっているようだ。
「ナーオット殿下の血を飲んだ方でも正気に戻った方はいるんでしょうか。」
ふと気になって確認してみる。
ナーオット殿下の血の力は永久的に続くのか、それとも限られた時間しか効かないのだろうか。
「今のところ一度でもナーオット殿下の血を飲んだものは、ナーオット殿下の言いなりになっております。」
マルガリータさんはそう言って俯いた。
きっと、自分の親しかった同僚もその中にカウントされているのだろう。
そこで、ふと何かが頭を掠めた。
そう言えば、私にはナーオット殿下の血の力が効かなかったということに気づいた。
そうして、ライラはナーオット殿下の血の力が効いていた。
この二つの違いはなんなのだろうか。
ライラにあって、私にはないもの。
私にあって、ライラにないもの。
もしかして国籍が違うから・・・?
いや、そんなことはないはずだ。
だって、ナーオット殿下は異世界からの迷い人である。
国籍なんて関係はないだろう。
私の前世が関係している?
でも、それもないだろう。
今の私はこの世界の人間なのだから。
いくら前世の記憶があったとしても、記憶によりナーオット殿下の血が効かないなんていうバカげたことはないはずだ。
・・・ん?記憶?
「マコト様。マコト様が開発にかかわっていたという乙女ゲームのシーズン2のシナリオを覚えていますか?」
「うん。開発段階のならね。」
もしかすると、乙女ゲームのシナリオの中に答えがあるかもしれない。
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