第134話
マルガリータさんはゆっくりと私の方を振り向いた。
マルガリータさんの生気のない瞳が私を見つめる。
思わずブルッと身体が震えた。
「・・・マルガリータさん?」
「・・・こちらが地下牢に繋がる部屋になります。」
マルガリータさんは淡々と告げて、地下牢に繋がる部屋のドアを開けた。
いったい何が起きているのだろうか。
地下牢なんてどうしてマルガリータさんが案内してくれるのだろうか。
思わず身構えてしまう。
「見つからないうちにお早くお入りください。」
マルガリータさんが小声で急かす。
「わかったわ。」
マルガリータさんは私の味方なのだろうか・・・?
不振に思いながらも、エドワード様やユキ様、マコト様に会いたくて、みんなの無事を確認したくて、マルガリータさんの言う通りに部屋の中に入った。
私が部屋の中に入ると、マルガリータさんが部屋のドアをそっと閉じた。
ドアを閉めると部屋の中は薄暗くなった。
この部屋が地下牢への入口だというが、入り口らしきところはどこにもない。
というか、部屋の中に家具らしき家具もない。
「今の時間帯なら国王陛下の手の者が地下牢の見張りをしております。お早くすませましょう。」
マルガリータさんはそう言うと部屋の壁にかかっている燭台に手をかけた。
マルガリータさんが燭台をグッと手前に引くと、壁の一部がスライドし、階下への階段が現れた。
この階段も随分と薄暗い。
本当にこんなところに地下牢があるのだろうか。
「参りましょう。」
先導をきって歩くマルガリータさんの後ろに並び階段を一段一段降りていく。
薄暗いながらも次第に目が慣れてきたのか周りの様子がうかがえるようになった。
辺りは石のような材質の壁だった。
そうすると、この階段も石なのだろうか。
コツコツという歩く音が響く。
ただ、やはりマルガリータさんの足音は聞こえなかった。
しばらく階段を降り続けていくと、急に辺りが開けた場所についた。
どうやらここが地下牢のようだ。
階段を降り切ると衛兵が2名立っていた。
マルガリータさんはその衛兵に軽く会釈をすると先に進んでいく。
私も同じように軽く会釈をしてマルガリータさんの後を追った。
しばらく行くと、マルガリータさんが立ち止まってこちらを振り返った。
「・・・こちらです。」
マルガリータさんが指し示した方に視線をやるとそこにはエドワード様とユキ様とマコト様が牢の中で座っていた。
「エドワード様っ!ユキ様っ!マコト様っ!!」
思わず小走りで三人に近づく私。
しかしながら私たちの間には鉄の格子で遮られている。
名前を呼んだことで3人が私に気づき目を丸くする。
「よく、ここまでこれたね。」
エドワード様がそう言ってほほ笑んだ。
「一人でも行動できるようになったわね。進歩したじゃない。」
ユキ様もそう言って勝気気味に笑った。
「いらっしゃい。」
そう言ってほほ笑みながらマコト様が迎え入れてくれた。
そうして疑問符が頭に浮かぶ。
どうして、みんなこんなに落ち着いているのだろうか。
「不自由はない?どうにかして、ここから出してあげたいのだけど・・・。」
「安心して。レイチェル。国王陛下の計らいでとても快適に過ごせているよ。」
エドワード様はそう言ってほほ笑んだ。
「そうね。不自由なのはここから自由にレイチェルに会いにいけないってことかしら?」
「私としては魔道具の研究ができないのが不満ですねぇ。」
ユキ様もマコト様もそんなに困っていないようだ。
いったいこれはどういったことなのだろうか。
ふと、後ろにいるマルガリータさんを振り返る。
するといつもの生気のない瞳とはことなり、その瞳は自愛に満ちていた。
「今の時間帯はナーオット殿下の手の者はここに来ません。安心してお過ごしください。」
「え、ええ・・・。」
安心しろと言われてもそれ以上に困惑してしまっている私がいる。
しばらくして私の中に一つの仮説が浮かびあがった。
もしかして・・・。
「国王陛下は私たちをナーオット殿下から助けようとしてくれているの?」
確認するように呟けば牢の中のエドワード様がゆっくりと頷いた。
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