第114話
「いけないっ!誰か来たわ!!」
「ユキ様っ!早くこちらへ!」
私はユキ様の手を握り、物陰に引きずり込む。なんとか、男が去るまで見つからなければいいのだけれども。
誰もいないはずの地下の部屋で声がしたことに気づいたのだろう。
男の人がこちらに近づいてくるようだ。
コツコツコツという足音が徐々に近づいてくる。
そして、男の人の足音が止まった。
この部屋の前にたどり着いたようだ。
カチャリ
ドアノブを回す音が大きく響き渡る。
私はユキ様と手を繋ぎ、ゴクリッと唾を飲みこんだ。
痛いくらいに心臓が脈打つ。
『レイチェル!隠れてないで早く転移して!!』
頭の中でライラが叫ぶ。
そうだった。
ライラの力で転移ができるんだった。
でも、今ライラの身体を動かしているのは私だから私じゃないと転移の魔法が使えない。
「ユキ様。転移します。私に掴まっていてください。」
「わかったわ。」
外に聞こえないように小声でユキ様に耳打ちする。
ハッとしたようにユキ様が目を瞬かせてから、しっかりと頷いた。
ユキ様が頷いたのを確認してから転移の魔法を発動させる。
次に目を開いたときに見えたのはユキ様の部屋だった。
もちろん、ユキ様とはしっかり手をつないでいたのでユキ様も一緒である。
「ふふふっ。危なかったわね。」
「もうっ!ユキ様ったら笑わないでくださるっ!」
「ごめんごめん。安心したら笑いがこみ上がってきちゃった。あんなに焦らなくても転移の魔法があったもんね。でも、なんだかスリルがいっぱいでワクワクしたわね。」
「ユキ様・・・。」
危機を脱したことで身体から力が抜ける。
ユキ様は面白かったとケラケラ笑っているが、私はそれどころではなかった。
あのまま見つかっていればどうなっていたかということを考えると恐ろしい。
「化粧水もちゃんとに手に入ったし!言うことなしね!」
「はい。無事に見つかってよかったですわ。でも、思いの他すんなりと見つかったので少し拍子抜けしています。」
「本当ね!もっとスリルを楽しみたかったわ。でも転移の魔法ってほんとチートよね。」
「そうですね。」
本当に転移の魔法はチートだ。
行ったところがあるところだったらどこにでも転移できてしまうのだ。
危なくなったらすぐ転移すればいい。
転移の魔法が発動するまでのロスがないのだ。
「あら。レイチェルったらチートって言葉知っているのね。うふふっ。」
「あ、あれ?私なんで知っているのかしら?」
そう言えばチートなんていう言葉どこで知ったのだろうか。
「ねえ、私の世界にはねRPGって言われているゲームがあってね。そのゲームの中にルーリャっていう移動呪文があるの。」
「あ、知ってます!あの移動呪文は欠点多いですよね。室内で使うと天井に頭を打ち付けるんですよね。でも、行ったことのある場所にしか行けないのは転移の魔法と一緒ですね。」
「そうそう。ダンジョンでHPが足りなくなってルーリャを唱えたら天井にぶつかるんだもん。驚いちゃった。」
「ふふふっ。しかもMPはちゃんとに消費するんですよね。」
「そうそう。って、レイチェルなんで知っているの?あれって私の居た世界のゲームのはずなんだけれど・・・?」
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