第115話
ふと我に返る。
なぜ、私はユキ様の言うユキ様の世界のゲームの魔法のことなんて知っているのだろうか。
「・・・わからないの。」
「そう。もしかして、レイチェルも私と同じ異世界からの迷い人だったりするのかしら?でも、記憶が曖昧なのよねぇ。」
ユキ様がそう言って私をジッと見つめる。
私が、ユキ様と同じ異世界からの迷い人・・・?
でも、私には幼少期からこの世界で生きてきた記憶がある。
流石に産まれた時の記憶は覚えていないけれども、ゲームを知っているということはそれなりの年齢になってから異世界からこの世界に来たのだと思われる。
でも、それはあり得ない。
私は首を横に振る。
「いいえ。私は異世界からの迷い人ではありません。幼い頃の記憶は鮮明にありますから。」
特に、エドワード様との思い出は色あせることなどない。
「そう。もしそうなのだとしたら、異世界転生の方かしら?そう思えば辻褄が合うわね。」
「・・・転生?」
転生と言われてなんだかしっくりと来た。
そうなのかもしれない。
そうだとするのならば、今まで時折脳裏に浮かんできたものの説明もできる。
私はユキ様と同じ世界で生活していて、死んでこちらに転生したのだろうか。
「まあ、どちらでもいいわね。今のレイチェルがレイチェルなんだから。」
「まあ!ふふっ。ユキ様ありがとうございます。」
過去の自分がなんであれ、今の自分がいる。
それで、いいのだと事も無げに言うユキ様がとても眩しかった。
「………化粧水飲んでみますね。」
ドキドキした面持ちで化粧水を手に取る。
化粧水は3本ある。
髪の毛の色を変える化粧水は真っ黒な色をしている。
瞳の色を変える化粧水は赤い色をしていた。
そして、肌の色を変える化粧水は雪のように真っ白だった。
どれも飲むには勇気のいる色をしている。
どんな味をしているのだろうか。
できれば、美味しく飲めるといいのだけれども。
それに、家宝として伝わっているこの化粧水はもう何百年も前のものだ。
飲んだらお腹を壊さないかと心配になってくる。
「レイチェル。大丈夫よ。なにかあったら私の治癒の力で治してあげるから。安心して飲んでちょうだい。」
胸を張って告げるユキ様が頼もしい。
ユキ様に向かって頷くと、白色の化粧水を手に取る。
白色と言えばミルクが思い出される。一番飲みやすいのではないかと思ったのだ。
化粧水の蓋を開け、恐る恐る匂いを嗅いでみる。
その匂いはミルクとは違った匂いがした。
でも、不思議と嫌な感じの匂いではない。
少し甘酸っぱいような匂いは、どこかで嗅いだことのある懐かしい匂いだった。
意を決してゴクッと化粧水を飲みこむ。
「………美味しい。」
意外にも化粧水は美味しかった。
「あら、どんな味なの?」
「甘酸っぱかったわ。どこか懐かしい味がしたの。でも、この世界にはない味のはずなのにね。」
「あら、じゃあ私がいた日本にある飲み物の味なのかしら。面白いわね。こちらの世界にも日本と同じものがあるだなんて。もしかして、この飲める化粧水を作ったのは日本人だったりして。」
「ふふふ。もしかしたら、そうかもね。」
私は微笑みながら自分の手のひらを見た。
不思議なことに化粧水を飲んだ私の手のひらは真っ白になっていた。
それどころか、鏡で見ると肌が全体的に白くなっている。
「ほんとに肌の色が変わるのね。すごいわね。この化粧水。じゃあ、この黒い化粧水は髪が黒くなるのかしら?」
ユキ様が感心したように頷いている。そうして、黒い化粧水を手渡してきた。
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