第66話
「エドワードったらレイチェルがいるというのに、この女を囲う気なの!!」
「違うっ!そういう訳ではないっ!!」
どうやらユキ様はエドワード様が私を愛人として囲うと勘違いをしているようだ。
私は正体不明の怪しい人物として皇太子宮に滞在という軟禁される状態だというのに。
「さては、貴女シーズン2のヒロインね!エドワード様を誘惑しようとしているんでしょう!!」
「「えっ?」」
ユキ様の以外な言葉に、エドワード様と私の驚く声が重なる。
ちなみに、ジュリエッタさんは私たちの間に流れる神妙な空気を察して、「また来るわね」という言葉を残してアレクサンドル様と一緒に出て行ってしまった。
「マコトに聞いたんだからっ!レイチェルが出産して意識不明の状態でいる時に慰めてくれた女性とエドワードが恋に落ちるって!!あまりに酷すぎるわっ!!」
悲鳴にも等しい声でユキ様ががなりたてる。
どうやら余程立腹しているようだ。
私としては嬉しいやら困ったやらでなんと言っていいのかわからなくて固まってしまう。
きっとただ単にレイチェルとしての私だったならば、きっとユキ様の思いに胸が打たれたと思う。ただ、ライラとしての私はユキ様にとっては邪魔者なわけで、正直複雑すぎる。
「ユキ、君が何を言っているかわからない。わからないが、彼女とはそんな関係ではない。」
エドワード様はため息混じりにユキ様にそう告げる。
しかし、ユキ様の怒りは収まらいようだ。
「そんなのわからないわ!口ではなんとでも言えるわ!それに、側にいたら情が移るかもしれないじゃない!とにかくこの女はダメよ!」
早口で捲くし立てるユキ様。
「ユキ様のおっしゃりたいことはわかりました。私は皇太子宮には参りません。このまま、私はエドワード様の前から消えることにいたします。」
どうせ、皇太子宮に私をとどめたいのは監視する為だとわかっているので、あえて皇太子宮に留まる必要もない。
ただ、皇太子宮にいれば衣食住は当面の間は保証されるだろう。ただそれだけの話だ。
「それはならぬっ!」
エドワード様は私が皇太子宮を出ることには反対のようですぐさま反論される。
得体の知れない女をただ泳がす訳にはいかないと考えているのだろう。
「・・・では、私に誰か監視のものをつければよろしいのではないでしょうか?私は隣国の出身です。私の出自が気になるのでしょう?エドワード様を陥れるのではないかと。この国に厄災をもたらすのではないかと心配なのでしょう?」
「・・・それは。」
エドワード様は私が監視されているということに気付いていたということに驚いたようだ。
何も言えなくなってしまった。
皇太子としてその態度は敵に付け入る隙を与えてしまう。
そう諭してあげたいが今の私が言うべきではないかもしれない。
エドワード様は皇太子として完璧なお方。
必要であれば大事なものだって切り捨てる、そんなお方。
なのに、なぜ得体の知れない私を切り捨てられないで、監視させるにとどめているのだろうか。
今だって、そう。
私に付け入る隙を与えてはならないのに。
嫌な予感がする。
とても嫌な予感が。
まるで、エドワード様がライラを気に入ってしまって手元においておきたいから様々な理由をつけているのではないかという嫌な予感がした。
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