第67話

 


エドワード様の戸惑いをユキ様も悟ったのか、眉間にぎゅっと皺を寄せた。


「なら、この人は私のところで預かります。絶対にエドワードのところには行かせないんだから!」


と、面倒ごとを引き受けようとしている。


「ダメだ。レイチェルが危ないだろう!」


「ならどうしろと言うんですか!!これ以上、この人がエドワードの側にいるのは断固反対なんだからっ!」


だんだんエスカレートしていくエドワード様とユキ様の喧嘩。


二人が争っているのは私に関することなのに、なぜか私は蚊帳の外だ。


私が二人を宥めようにも、私のことで喧嘩をしているので仲裁も難しい。


どうしようかと二人を見つめていると突然ピカーーーッと部屋の中に眩しい光が生まれた。


「「「!!?」」」


その眩しい光に、思わずエドワード様とユキ様もびっくりして動きを止めたようだ。


さっきまで煩く喧嘩していた声が綺麗になくなった。


そうして、光が収まるとそこにはマコト様がシロ様とクロ様と一緒に立っていた。


「レイを迎えにきました。迂闊でした、彼女が転移の魔法を使えることを失念しておりました。エドワード様、申し訳ございません。今後、レイは魔法を使用できないようにいたします。」


マコト様はエドワード様に礼をしてそう告げた。


私の魔法を使えなくするだなんて、そんなことができるのだろうか。


「ああ、以後気をつけてくれればいい。」


「ちょっとマコト!この人きっとシーズン2のヒロインよ!!エドワードの側に近寄らせたらダメよ!!」


エドワード様はマコト様の謝罪を受け入れた。


エドワード様は懐に入れた人間には甘い一面を持っているのだ。


マコト様はエドワード様の子を産むほどにエドワード様と親しい人であり、エドワード様が心を許している相手。


少し嫉妬してしまう。


それに、マコト様はレイチェルとは違ってエドワード様のために動ける能力がある人。


レイチェルはただ流されるまま、なにも考えずただただエドワード様に甘えて過ごしてきただけで、薄っぺらい人間だ。


そんなレイチェルからすると、マコト様はとても眩しい人に思える。


どんなに努力しても届かない人。


「シーズン2のヒロイン?彼女が?でも、あれはまだ開発中でキャラデザもまだ公開されてないのに、なんでわかるの?ユキ。」


シーズン2のヒロインという言葉にマコト様が反応を示した。


が、私もエドワード様もなんのことだかわからない。


かろうじてわかるのはヒロインという言葉だけ。


物語を読んでいると必ずヒロインという主人公が存在する。


その物語はヒロインのために用意されたお話であり、ヒロインは困難に立ち向かいながらも最後はハッピーエンドになるというものばかりだ。


そんなヒロインが私?


俄かに信じられないものがある。


だいたいここは物語の中ではなく現実なのだ。


誰もヒロインになんてなれっこないのに。


 


 


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